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2025/7/3

【グリーンメタノール】東洋エンジニアリング、小規模プラント向け反応器「MRF-Z Neo」を開発

 東洋エンジニアリング(TOYO)は、グリーンメタノール(バイオメタノール*¹およびe-メタノール*²)の製造に適した小型メタノール反応器「MRF-Z Neo™」を開発した。
 本技術はTOYOが長年培ってきた大規模プラント向けメタノール合成技術「MRF-Z™」をベースに、小規模プラント向けに最適化された新型反応器だ。バイオマスや再生可能エネルギーといった分散資源の活用に対応し、地域ごとの資源を活かした分散型生産を可能にする。

1.グリーンメタノール市場の成長
 近年、脱炭素社会の実現に向けた世界的な取り組みが加速する中で、グリーンメタノールは、化石燃料由来メタノールの代替として注目を集めている。メタノールは、燃料用途(船舶燃料、ジェット燃料、ガソリン)や化学品用途(樹脂、粘着剤、など)に使用される汎用性の高い化学品であり、バイオマス原料や再生可能エネルギーを利用したサステナブルな製造方法への転換は、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献する。

 2050年にはメタノールの世界需要が2020年の約5倍に拡大し、そのうち約80%がグリーンメタノールになると予測されている。特に欧州を中心に、海運業界や化学産業におけるグリーンメタノールの導入が進んでおり、今後の市場成長が期待されている。

2.グリーンメタノール製造は、小規模プラントが主流
 グリーンメタノールの製造においては、原料となるバイオマスや再生可能エネルギーが地理的に分散、時間的に変動しているため、大規模な集中型プラントでは安定的な製造が困難だ。また、世界の再生可能エネルギー発電所の97%以上が100MW以下の小規模*⁵であることから、分散型エネルギーに対応した小型反応器のニーズが高まっている。

3.独自開発した小型グリーンメタノール反応器 [MRF-Z Neo™]
【特長①:実績のある効率性の高い技術がベース】
 MRF-Z Neoは、TOYOが長年にわたり実績を積み重ねてきた大型メタノール反応器MRF-Z技術をベースに開発された、小規模プラント向けの新型反応器だ。
 MRF-Z Neoは、下記3点をはじめとする、従来の大型反応器MRF-Zの特長を引き継いでいる。

・段階的に冷却する構造により理想的な温度変化を実現し、反応効率を高めるとともに触媒使用量を最小化。
・ガスの流れを最適化するために、外側から中心への半径方向に流れる構造を採用することで、低い圧力損失・高効率な反応を可能に
・冷却管の片方のみを固定するなど機械設計上の工夫により、長期的な安定運転とメンテナンス性の向上を実現。

【特長②:コンパクト・低コストで小規模プラントに最適化】
 MRF-Z Neoは、従来の大型反応器MRF-Zの利点は残しつつも、下部の作業員アクセス用メンテナンス部分や上部ガス分散部の削除により、装置全体のコンパクト化が図られている。コンパクト化により、反応器製作費を削減できるため、反応器の低コスト化も実現した。

 以上の改善により、MRF-Z Neoは従来のMRF-Zをコンパクト化した場合と比較して最大約40%のコスト削減を達成することができる。

MRF-Z TM vs MRF-Z NeoTMのコスト比較(概算)

 MRF-Z Neoは、グリーンメタノール製造において、分散型地域資源やエネルギーを活用する小規模プラントに最適な反応器だ。TOYOが長年培ってきた信頼性の高い技術をベースに、コンパクト・低コストを実現し、脱炭素社会の実現に向けた社会実装を加速する。

今後の展望
 TOYOは、MRF-Z Neo単体に留まらず、独自のe-メタノール製造技術「g-Methanol™」、省エネ型蒸留システム「SUPERHIDIC®」や再生可能エネルギー変動に対応するためのデジタルソリューションとの組み合わせにより、グリーンメタノールのコスト低減だけでなく、より柔軟で迅速な導入を可能にするトータルソリューションを提供する。これにより、グリーンメタノールの早期社会実装を進め、脱炭素社会の実現に貢献していく。

*1 バイオメタノールとは、農業残渣、林業廃棄物、都市ごみ、バイオマスやバイオガスから製造されるメタノールのこと。

*2 e-メタノールとは、再生可能エネルギーを利用した水電解水素と分離回収したCO₂を原料とするメタノールのこと。

*3 Innovation Outlook: Renewable Methanol, IRENA & Methanol Institute, 2021.

*4 “Global Initiatives Shaping the Future of Green Methanol Production,” S&P Global Commodity Insights blog, April 2023.

*5 Global Energy Monitor, Global Solar Power Tracker, 2024.

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