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2025/5/16

【リフォーミング技術】長瀬産業、千代田ホールディングス、富士加飾、UCHIDA、フォーミュラE車体破損部品から炭素繊維を抽出、部品としてリフォームする再生技術の開発に成功

 長瀬産業千代田ホールディングス富士加飾UCHIDAは、4社の協業により、航空機や車などに広く使用される炭素繊維強化プラスチックス(CFRP=Carbon Fiber Reinforced Plastics)で成形されたレーシングカーの部品から樹脂部分を取り除き、炭素繊維の長さや形を保ったまま抽出して樹脂を含浸しなおすことで部品の破損部分やキズを再生(リフォーミング)する技術を開発した。

 CFRPは、炭素繊維を熱硬化性樹脂で固めた複合材料。軽くて強度が高いのが特徴であるが、部品が破損すると修復が難しく、廃棄の際も焼却に大量のエネルギーが必要となることなどから、多くが埋め立て処分されている。このため、車体部分を中心にCFRP部品が使用されているモーターレース業界においても、レース中に損傷した部品の持続可能な廃棄が課題となっている。

 4社は、電気自動車のF1と呼ばれるFormula Eに参画する米国のレーシングチームで、長瀬産業が協賛する「Andretti Formula E(アンドレッティ・フォーミュラ・イー)」の協力を得て、破損頻度が高いフロントウィングを入手。富士加飾が有する、CFRP部品の樹脂部分を炭化させて除去し炭素繊維の形状を保って抽出する特許技術(※1)と、モーターレース部品製造の実績があるUCHIDAが有する、炭素繊維への樹脂の再含浸技術の組み合わせにより、CFRP部品の形状に再生することに初めて成功した(※技術的な可能性を実証したもので、再生後の部品はレース用としての強度は実現しておらず、実用化に向けては樹脂部分を含めた更なる研究開発が必要)。

Andrettiから提供された破損した部品
抽出した炭素繊維を使い再生した部品

 使用済みCFRPを再利用する場合、細かく砕いてスレッド(糸)状やシート状にリサイクルする技術が一般的であるが、部品として再生できる形状のまま炭素繊維を抽出し、部品の再生を実現する試みは、新しいサステナブルなソリューションとして期待される。

 本協業は、2024年3月に日本で初めて開催されたFormula E 東京大会をきっかけに、千代田ホールディングスから各社への提案で、Formula E車体に使用されたCFRP部品の活用可能性を探ることを目的にスタート。Andretti Formula Eは、同チームが掲げる環境目標と、Formula Eのミッションである「Net Zero Since Day Zero(※2)」推進に沿った取り組みとしてプロジェクトを支援している。同チームは「モータースポーツのみならず、軽くて耐久性の高い素材が不可欠な業界にとって新しい可能性を切り開く一歩になる。持続可能性への広いコミットメントの一環として、技術革新の実証の場となることを目指したい」としている。

(※1)独自の温度調整により、炭素繊維を固定しているマトリックス樹脂部分のみを炭化させることで、炭素繊維のみをその形状のまま取り出す乾留技術(物質を加熱して分解し一部を回収する技術)。同社ではヨーロッパを中心とした自動車業界への技術紹介も開始している

(※2)フォーミュラEは、2014年の大会創設当初から温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指し、レース活動に伴うすべての排出量を測定・削減し、残る排出量をカーボンオフセットすることでネットゼロカーボンを達成している

フォーミュラEの車体


各社の役割
長瀬産業:Andretti Formula Eとの協業
千代田ホールディングス:Formula Eへの提案提議、4社連携の提案
富士加飾:CFRP部品からの炭素繊維の抽出等
(乾留処理 ※部品の形を壊さず、樹脂部分のみを炭化して除去する)
UCHIDA: 抽出した炭素繊維への樹脂含浸および成形等
(乾留処理後の炭素繊維収束体を、形状を保ったまま成形型へセットし樹脂含浸および成形する)

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