アーカイブ情報
2025/10/31
【半導体】ADEKA、次世代EUVリソグラフィ向けMOR用金属化合物の新プラント建設
ADEKAは、鹿島化学品工場(茨城県神栖市)に次世代EUVリソグラフィ(高NA EUV)向けMOR用金属化合物のプラント新設を決定した。
高度ICT社会の実現に欠かせない半導体は、情報処理の高速化と消費電力の低減を背景に、高集積化や高積層化が進んでいる。こうしたなか、シリコンウエハ上にフォトレジストを塗布し光を照射して微細な回路パターンを形成するリソグラフィ(露光)工程では、メモリ(HBM)やロジック半導体のさらなる微細化に対応するため、EUV(極端紫外線)露光装置のレンズ開口数を拡大し、露光の解像度を高めることでより微細なパターンを形成できる「高NA EUV露光」が本格導入される見通し。これに伴い、露光工程で使用されるフォトレジストでは材料のゲームチェンジが求められており、現在主流のCAR(化学増幅型レジスト)と併用する形で、新しいコンセプトのフォトレジスト「MOR(金属酸化物レジスト)」の採用が拡大していくと予測されている。
同社が新プラントで製造するMOR用金属化合物は、フォトレジストのEUV吸収率やエッチング耐性を向上させるキーマテリアルであり、先端メモリ向け高誘電材料を創出するうえで欠かせない金属錯体技術を応用して製品化した。既に鹿島化学品工場内のALD材料製造ラインで量産化し、顧客へ供給を開始しており、この度、高NA EUV露光の本格導入を見据えてMOR用金属化合物の専用プラントを新設する運びとなった。建屋内には将来スペースを確保し、本格的な需要増に対応するとともに、高NA EUV露光をはじめとする次世代リソグラフィ工程の技術革新をにらんだ新規材料の製造も検討している。
ADEKAグループは、先端半導体メモリ向け高誘電材料(ALD材料)や、CARで使用されるEUV、ArF露光向け光酸発生剤など、数多くの先端材料で半導体の高性能化に貢献している。2026年1月には、久喜開発研究所(埼玉県久喜市)内に新研究棟が完成し、ALD材料とCARおよびMOR向け材料の開発体制をさらに強化していく考え。
ADEKAは今後も、先端リソグラフィ工程の技術革新を素材でリードし、先端CAR向け材料の世界トップシェアを獲得するとともに、次世代の半導体リソグラフィを支えるMOR用材料を提供していく。
<新プラント概要>
所在地:鹿島化学品工場(茨城県神栖市東和田29番地)
投資金額:32億円
延床面積:1050m2
スケジュール(予定) 着工:2026年4月、営業運転開始:2028年4月
補足1:ADEKAの「半導体リソグラフィ向け材料」について
同社は1998年に、当時先端であったArF(Dry)露光に使われるCAR向け光酸発生剤(PAG)の供給を開始して以降、基盤技術である光制御技術と高い品質管理能力を強みに、先端露光向け光酸発生剤の開発に注力してきた。現在、EUV、ArF露光向けを中心に高い競争力をもち、世界の主力レジストメーカー各社へ製品を提供している。販売は好調に推移しており、2023年8月には、千葉工場(千葉県袖ケ浦市)内で光酸発生剤の生産能力を2倍以上に引き上げた。
同社では、光酸発生剤をはじめ、この度新プラントを建設するMOR用金属化合物、その他リソグラフィ工程で使われる材料等の「半導体リソグラフィ材料」を、半導体材料事業における戦略製品の1つと位置付けている。
補足2:ADEKA半導体材料事業について
1980年代に、当時の日本国内の半導体メーカーへ同社の祖業である電解事業から得られた塩素を高純度化しエッチングガスとして提供したことが、同社の半導体材料ビジネスの始まり。以降、主に半導体の前工程で使用される材料で競争力を有する製品を有しており、先端半導体メモリ向け高誘電材料(High-k, ALD材料)は長年世界シェアNo.1を堅持している。
さらなる微細化の進展や高積層化に貢献するべく、次世代を見据えた研究開発に取り組んでおり、同社の強みである前工程向けのみならず、100年以上にわたり培った基盤技術を活用し、先端半導体のパッケージ技術(後工程)の進化に資する材料の開発にも注力している。2025年4月、研究開発・営業・企画・マーケティング部門を集約し半導体材料に特化した組織「半導体材料本部」を立ち上げ、日本と韓国、台湾、米国の各拠点と連携し、デバイスメーカー、レジストメーカー、装置メーカーとの対話を通じて、顧客ニーズに迅速に応える体制を強化している。
ADEKAグループ中期経営計画『ADX 2026』(2024年度-2026年度)の半導体材料事業における2026年度KPIを、営業利益:125億円(2023年度比38.3%増)としている。2025年度は先端半導体の世代交代の影響や研究人員強化、設備償却により減益の見通しだが、2026年度以降は先端半導体の世代交代が進み、最高益となる見通し。ADEKAは、今後も半導体の技術革新に必要不可欠な素財の提供を推し進めるとともに、世界トップの総合半導体材料メーカーを目指していく。
- カテゴリー
- コンバーティングニュース

