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2025/3/12
【枚葉インキ】アインズ、女神インキ工業と環境対応型「eLinks」を共同開発
アインズは、女神インキ工業との共同開発により、インキに含まれるプラスチックを使用しない環境対応型インキ『eLinks』を開発し、販売を開始した。パッケージやパンフレット、マニュアルなどの印刷物に使用することで、環境対応の取り組みへの貢献を目指している。

■ 開発背景

現在、印刷に使用されるインキの多くは、顔料を分散させる成分として、化石燃料由来のプラスチックである合成樹脂が含まれている。これらの樹脂は印刷の品質を保つために不可欠な役割を果たしているが、世界的なプラスチック問題は深刻化している。「樹脂を一切含まないインキで、究極の環境配慮型製品を作りたい!」という強い思いから、eLinksの開発が始まり、枯渇する資源である樹脂と鉱物油を一切使用しないインキの開発に着手した。
■環境負荷を低減する印刷インキの開発に成功
アインズは環境に配慮した革新的な印刷インキの開発に成功した。従来の石油系原料に代わり、天然由来の油脂を主成分とし、樹脂と石油系有機溶剤を一切使用しない、環境に優しい印刷インキである。eLinksの使用により、印刷物のリサイクル適正が12%向上※1することを確認した。環境負荷の低減に大きく貢献するとともに、印刷業界全体の環境意識向上と、よりエコフレンドリーな製品の普及を促進すると確信している。
今回の開発は、アインズが環境責任を果たすための重要な一歩であり、今後も持続可能な社会の実現に向け、環境に配慮した製品開発を継続していく。
※1:印刷物をリサイクルするとき、どれだけスムーズにリサイクルできるかを示すのがリサイクル適正。この『eLinks』インキを使うと、リサイクル工程で出るゴミ(フロス)が、他の一般的なインキと比べて最大12.25%減ることが自社調べで分かった。ゴミが減ることで、リサイクルできる紙の量が増え、環境に優しくなる
■開発ビジョン
油性枚葉インキには、植物油を一定量使用した植物油インキ、石油系溶剤を使用しないノンVOCインキ、バイオマス成分を組み込んだバイオマスインキ等の再生可能資源を使用したインキがある。しかしどのタイプでも一定量の枯渇資源由来の成分が使われている。最大限、枯渇資源由来の成分の使用を抑えるにはどういった設計が求められるかを検討した結果、一般的なインキで使われる樹脂や鉱物油、添加剤部分を全面的に天然由来に置き換えることで、より環境負荷を低減したインキの開発に着手するに至った。
■開発秘話
試行錯誤の連続から始まった。環境負荷を低減しながら、従来のインキの機能性と印刷品質を両立させるという目標は、想像以上に困難な道のりであった。
幾度となく繰り返された実験、検証、配合の微調整と原料の選定。その過程は、まさに暗中模索。しかし、プロジェクトメンバーの情熱と技術力は、決して諦めることなく、ついに理想的なインキ成分配合にたどり着いた。この革新的なインキは、再生可能な原材料を77%も使用し、環境負荷の大幅な低減を実現している。さらに、耐光性の向上と従来製品と同等の色再現性も兼ね備えていることを社内検証で確認した。この成果は、メンバー全員の粘り強い努力と、持続可能な未来への強い想いが結実したものである。
■ 『eLinks』の新技術と環境側面メリット
環境性能と印刷適性を両立した新世代インキ
1. 環境負荷低減
・石油由来のプラスチック成分を天然由来の油脂に代替し、石油系溶剤を排除することで、環境負荷を大幅に低減した。
・石油系溶剤の不使用でのVOC(揮発性有機化合物)排出量ゼロ、およびフランス鉱物油規制への対応を実現した。
2. 印刷適性の維持
・インキの転移性や塗膜形成を担うプラスチックを全廃しつつ、従来のインキと同等の印刷適性を確保した。
・環境性能と印刷品質を両立し、幅広い用途に利用できる。
<環境側面メリット>環境負荷低減に貢献するインキ
1.油性インキ
従来の油性インキに使用されていた石油由来の合成樹脂を、天然由来の油脂に置き換えることで、枯渇資源の使用量を大幅に削減した。また、石油系有機溶剤を一切使用しない、業界最高水準の環境負荷低減インキを実現し、VOC(揮発性有機化合物)の排出抑制と鉱物油規制への対応に貢献する。
2.水性インキ
枯渇資源由来の成分を従来比で58%削減し、溶媒にはすべて水を使用している。アルコールや石油系溶剤を排除し、天然由来の材料を主成分とすることで、大気汚染のリスクを低減するとともに、再生可能資源の使用率を大幅に向上した。
■ 環境貢献評価

インキ成分の使用有無を簡易的に示す。eLinksは、枯渇資源由来成分の使用を最小限にすることに徹底して開発した。
■ 環境評価(材料構成)

グラフの通り、eLinksは樹脂や石油系溶剤(鉱物油)を一切使用しないことで、枯渇資源由来の成分を最大50%(一般対比)低減させている。この数値からも、eLinksが最高位の環境配慮型インキであることが分かる。
■ 数値的効果予測
日本の油性枚葉インキの製造量は年間約1万トン。その中で、インキの性能を左右する樹脂は約3500トン使われている。またプラスチック製の約1800トンは、石油などの枯渇資源を原料としており、環境負荷低減が求められる。
そこで、アインズは持続可能な社会の実現に向けて、これらの樹脂を天然由来の成分に置き換える取り組みを推進する。具体的には、植物由来のバイオマス原料を活用することで、環境負荷を大幅に削減し、資源の有効活用に貢献します。『eLinks』は、従来のインキと同等の印刷品質を維持しながら、環境への影響を最小限に抑えることが可能。これにより、印刷業界全体の環境意識の向上に貢献するとともに、お客様には環境に配慮した製品を提供することができる。
■ 法規制関係

■ 今後の展望
アインズは、創業以来、人と環境に配慮した印刷技術の開発に注力し、持続可能な社会の実現に貢献するため、様々なSDGs活動に取り組んできた。
その一環として、環境負荷低減に貢献する『eLinks』インキを開発し、このインキをパッケージに使用した『おやさいクレヨン』を製作した。
今後は、『eLinks』インキの普及を通じて、環境配慮型の商品や資材を広く提供するとともに、さらなる技術革新により、持続可能な製品の開発を推進していく。
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