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2025/10/30

【水系ポリウレタンフィルム】大阪工業大学と旭化成、形成の仕組みを解明。環境にやさしい塗料や接着剤への応用に期待

 大阪工業大学応用化学科の藤井秀司教授の研究グループは、旭化成と共同で環境負荷の少ない新しい素材「水系ポリウレタンフィルム」の形成メカニズムを解明した。この成果は、耐久性と環境性能を兼ね備えた塗料や接着剤の開発に大きく貢献することが期待されている。

 ポリウレタンは、アクリルやポリエステルなどの合成樹脂と、分子同士を結びつけて強度を高めるウレタン系架橋剤(ポリイソシアネート)から作られる樹脂。優れた耐久性を持つことから、自動車などの塗料やフィルムに幅広く利用されている。
 従来は有機溶剤を使用するものが主流で、揮発性有機化合物(VOCs)や温室効果ガスの排出による環境負荷が課題であった。そこで近年は、アクリル樹脂等の微細な粒子を水に分散させたものを原料にした水系ポリウレタンの開発が進められてきた。しかし、架橋剤のポリイソシアネートは水と反応しやすく、安定性に欠ける問題があった。
 旭化成では独自のアクリル系微粒子とブロックポリイソシアネート粒子という2種類の非常に小さな粒子(nmサイズ)を水に分散させたコーティング剤を用いて、水系ポリウレタンフィルムを開発した(特許公開番号:特開2024-74639)。加熱により2種類の粒子が反応し、強固に結合した構造(架橋構造)を形成することができた。
 今回の共同研究では、粒子間で起きる作用や構造変化など詳細な形成メカニズムの解明を進めた。その結果、水中では互いに独立して存在しているものの、乾燥過程で水分が蒸発すると粒子同士が接触することが分かった。更に、加熱すると混ざり合って反応し、最終的に架橋構造が形成されることを明らかにした。この研究の成果は複数の微粒子を用いて作られる水系のコーティング剤や塗料、フィルムなどの製品を開発する上で、使用する粒子やフィルムを作る条件、方法などのモデルとなり、高い耐久性と環境負荷低減を両立させた次世代の塗料や接着剤の開発への応用が期待される。
 この成果は、学術雑誌『Progress in Organic Coatings』に掲載された(2025年7月23日付)。
 URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0300944025004837
 (DOI: 10.1016/j.porgcoat.2025.109534)

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