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2025/6/23

【生成AI】日本精工、品質トラブル参照アプリケーションを自社開発し運用開始

 日本精工(NSK)は、 生成AIを活用した品質トラブル参照アプリケーションを開発し、2025年6月から運用を開始した。生成AIを本格的に活用した社内向けアプリケーションを開発したのはNSKとして初めて。
 このアプリは、NSK製品に関する蓄積された過去の品質トラブルデータの可視化と生成AIによる要約機能を備え、製品に関わる様々な分野の社員が迅速に情報を収集・把握して活用できる環境を整備するもの。これにより、顧客に対してより迅速に、かつ高品質な製品提供を目指す。

運用開始したアプリケーションの概要図

アプリ概要
 今回自社開発し、運用を開始したのは、蓄積された品質トラブルデータのグラフによる可視化と生成AIを用いた要約機能を備えた、社員向けアプリケーション。
 従来の品質トラブルデータは、専用のデータベースやレポート形式で管理されていた。データ自体も定まった形式を持たず専門性が高く、因果関係を読み解くことが難しい状況にあった。NSKでは、2022年度からスタートした現中期経営計画において、デジタル技術の活用を通じた経営資源の強化を掲げており、競争力の源泉である品質・技術の一層の強化を進めている。その一環として、製品開発時や工程設計時、その検証の際に生じた品質トラブルやノウハウに関するデータをテーブル構造で蓄積する取り組みを推進してきした。今回のアプリでは、例えば製品開発時のリスク要因を社員が調べる際、グラフによる可視化と生成AIによる要約文が提示される。これにより、個々の社員の製品や業界に関する専門用語の知識レベルに依存することなく、誰もが調べたいデータに容易に到達し、かつ情報要約の生成まで約30秒で完了できるよう設計している。
 運用のスタートにあたり、2025年6月より、約4000件の品質トラブルデータが詰め込まれたアプリを設計・製造・品証メンバーを中心とした国内5000名以上の社員に提供した。今後、営業・物流メンバーなどNSK製品のライフサイクルに関わる様々な分野の社員にも提供・利用者を拡大し、NSKの品質マネジメントの強化推進とともに、顧客第一の品質実現に寄与できるよう活用していく。
 なお、このアプリケーションは、NSK専用の環境に構築された生成AIを活用しており、セキュリティリスクに対する安全性も確保している。また、生成AI特有のハルシネーション*1 などリスクを踏まえたAI品質コントロールや業務運営ルールを策定し運用している。
*1 ハルシネーション:まるでAIが幻覚を見ているかのように、もっともらしい事実とは異なる情報を作り出してしまうこと

アプリ開発について
 NSKでは、2023年には文章の生成や情報検索といった用途を主とした生成AIの社内利用を開始している。今回自社開発したアプリは、同社にとって生成AIを初めて自社の専門的な業務・領域に活用した事例。
 2024年10月から、テーブル構造の品質トラブルデータに関して生成AIの技術検証を開始した。アジャイル開発の手法を導入し、機能設計から正式導入までは約半年という短期間で実現した。直感的なUIを設計するとともに、データ構造を維持できる形で生成AIの使い方を工夫することによって、利用する社員の経験や知識レベルに左右されず調べたいデータにたどり着けるようになっている。社内の業務プロセスにマッチした生成AIを実用化した。

今後について
 このアプリケーションは、今後国内のみならず、海外拠点も含めた活用を予定している。社員のニーズに応じた形で、顧客にこれまで以上に迅速で高品質な製品が提供できるよう、回答精度の向上や調べたいデータの検索性向上などの機能拡充も予定している。

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