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2025/5/15
【LiB用水系複合接着剤】第一工業製薬、滋賀工場で生産能力増強
第一工業製薬は、戦略的資源として位置付けられるリチウムイオン二次電池(LiB)の需要増に対応するため、負極用水系複合接着剤(バインダー)「エレクセルCRシリーズ」の生産能力を滋賀工場において増強した。

「エレクセルCRシリーズ」は、LiBの高容量化および長寿命化を可能にする負極用水系複合接着剤。同社の材料は、シリコン系負極材料の充放電時の膨張・収縮に伴う電池性能の低下という課題を克服するもの。シリコン系活物質100%配合系に適用可能という特長を有し、良好な性能の発現が電池メーカーなどのから高く評価され、採用に至っている。
同材料の本格採用により急速な需要拡大が見込まれることから、同社は生産能力を高めるため、設備投資を進めてきた。このたび、滋賀工場において中量生産設備が完成し、2025年5月より稼働を開始する。今後、段階的に約30億円の投資を行い、さらなる事業展開に向け、供給体制の構築を積極的に進めていく予定。これにより、拡大する顧客ニーズに対応するとともに、日々進化するLiBの発展を支えていく考えだ。
【エレクセルCRシリーズとは】
LiBの負極材料は黒鉛が主流だが、近年では高容量を追求するために、黒鉛にシリコン系材料(SiO、SiC、Si)が添加されている。シリコン系材料は、充電時に膨張し放電時に収縮するため、電極構造が破壊され、電池の劣化が生じるという課題がある。
昨今では膨張・収縮を制御し、電池の寿命を延ばす接着剤の要求が高まっている。
「エレクセルCRシリーズ」は、シリコン系材料100%配合系においても電極構造が安定し長寿命化を図ることが可能で、負極容量をさらに向上できる可能性がある。樹脂の弾性率や強度のコントロールを行い、汎用品では難しい負極材の膨張収縮に適応する性質を持ち、高い構造復元性を発揮する。
伸長が期待される小型機器や EV 分野への事業拡大をめざす。
●「エレクセル」は第一工業製薬株式会社の登録商標

【中期経営計画「SMART 2030」における環境・エネルギー分野の位置付け】
同社は、2025年4月より中期経営計画「SMART 2030」をスタートした。電子・情報分野、環境・エネルギー分野、ライフ・ウェルネス分野、コア・マテリアル分野に注力し、2030年には売上高1000億円、営業利益100億円をめざす計画だ。
環境・エネルギー分野の目標は、2030年に売上高300億円、営業利益30億円。LiB負極用水系複合接着剤関連においては、そのうち1/3となる事業成長を狙う。
今回の設備投資および生産体制増強により顧客への安定供給を確保するとともに、サステナブル社会の実現と環境負荷低減に貢献していく。

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