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2025/2/22

【UF膜】東レ、微細孔制御により下廃水処理プロセスにおける高い除去性と高透水性を両立する限外ろ過膜開発

 東レは、限外ろ過(UF :Ultra Filtration)膜と逆浸透(RO :Reverse Osmosis)膜を組み合わせて用いる下廃水再利用プロセスにおいて、これまでの高い透水能力を維持したまま、RO膜の負荷を軽減し、長期間安定して良質な水を製造できる、高除去UF膜を開発した。
 世界各地の水需要拡大に対し、持続的な水源を確保するため、UF膜とRO膜を組み合わせて下水や工場廃水を再利用するプロセスが急速に普及しており、再利用水を飲料水や半導体製造に欠かせない超純水製造の水源にする取り組みがグローバルに始まっている。一方、従来のUF膜は、下廃水処理水に多く含まれる生物由来の有機物(バイオポリマー)の除去性が低いため、後段のRO膜の洗浄頻度が多く、薬液使用による造水コストやCO2排出量が多くなる課題があった。
 東レは、10nm以下の微小な細孔の形成過程を定量的に解析することで、高除去UF膜を設計した。この解析には、大型放射光施設「SPring-8」※1を用いた観察とシミュレーションを融合して、膜構造の詳細を分析し、この分析を基に、ポリマー材料および製造プロセスを精密に制御することで、孔径の微細化と微細孔の増量を同時に実現し、従来にない高い除去性と透水性を両立するUF膜を創出した。
 本開発の高除去UF膜の処理水は、下水や工場廃水を始め様々な原水に対し、RO膜の汚染源となるバイオポリマーの透過量が同社従来品比1/3以下となり、高い除去性を確認した。さらに、下水処理プラントにて、RO膜と連結した運転試験を行い、UF膜の透水量を従来通りに維持しつつ、後段RO膜の透水量の低下を1/3に抑制する効果を実証した。
 今回、開発した高除去UF膜は、後段のRO膜の洗浄工程の削減が必要な下水再利用をはじめ、化学・鉄鋼・染色工場等での廃水再利用等において、RO膜の薬液洗浄や運転トラブル対応の低減、さらには、RO膜の寿命の延長が見込まれる。これにより、造水コストを低減するだけでなく、RO膜の交換・廃棄に伴うCO2排出量を30%以上削減することが期待できる。現在、量産準備を進めており2025年中頃に、下水再利用が進む北米での発売を目指し、日本を含むその他の国・地域に向けて製品展開していく計画。
 本製品に関わる技術について、2025年2月24日からアメリカ合衆国で開催される世界最大級の水処理膜学会(Membrane Technology Conference)にて発表する。

下廃水再利用における新規高除去UF膜の効果

※1 大型放射光施設「SPring-8」
 兵庫県にある世界最高レベルの放射光を生み出すことができる大型放射光施設。この放射光を用いてナノサイズ(1nmは10億分の1m)の構造を1秒以下で観察することができ、UF膜の製造工程等の観察が可能となる。

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