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2024/5/13
【スチームクラッカー】BASF/SABIC/Lindeの3社、世界初の大規模電気加熱式の稼働開始
BASF、SABIC、Lindeの3社は、世界初の大規模な電気加熱式スチームクラッカーの実証プラントを稼働させた。3年にわたる開発、エンジニアリング、建設作業を経て、この実証プラントはドイツのルートヴィッヒスハーフェンにあるBASFのフェアブント拠点(統合生産拠点)にて通常運転を開始する準備が整った。3社は2021年3月、電気加熱式スチームクラッカーのソリューションの開発と実証に関する共同契約を締結している。
基礎化学品の製造において中心的な役割を果たすスチームクラッカーは、炭化水素をオレフィンや芳香族に分解するために、多大なエネルギーを必要とする。一般的には、約850℃のリアクターの中で反応が行われ、これまでは化石燃料を燃焼させることでこの温度に達していた。この実証プラントの目的は、電気を熱源としたオレフィンの連続生産が可能であることを示すことである。この新技術では、再生可能資源由来の電力を使用することで、化学産業で最もエネルギー集約的な製造プロセスの1つであるスチームクラッキングから排出されるCO2を、一般的に使用されている技術に比べて、少なくとも90%削減できる可能性がある。
この実証プラントは、飽和炭化水素原料からエチレン、プロピレンなどのオレフィンと、可能であれば高級オレフィンを生産するもので、ルートヴィッヒスハーフェンの既存のスチームクラッカーに完全に統合されている。今後は、この革新的な技術を産業市場に向けて最終開発できるよう、商業運転条件下での材料の挙動やプロセスに関するデータや知見を収集するという目的のもと、運転を行っていく。2つの実証炉において、2つの異なる加熱コンセプトをテストする。一方の炉では、直接加熱によりクラッキングコイルに直接電流を流すが、もう一方の炉では、コイルの周囲に配置した発熱体の輻射熱を利用した間接加熱を行う。2つの電気加熱炉を合わせて、1時間当たり約4トンの炭化水素原料を処理し、6メガワットの再生可能エネルギーを消費する。
新炉技術の開発支援のため、本プロジェクトは、ドイツ連邦経済・気候保護省の「産業界の脱炭素化」資金援助プログラムにより、1,480万ユーロの助成金を受けた。このプログラムは、ドイツ国内のエネルギー集約型産業がカーボンニュートラルを達成するための取り組みを支援するものである。
BASF取締役会会長(2024年4月25日付で退任)であるDr. マーティン・ブルーダーミュラーは、次のように述べている。
「電気式スチームクラッカーの開発により、私たちは化学産業における温室効果ガス排出の大幅削減に貢献する重要な技術を手にすることになります。私たちのパートナーであるSABICおよびLindeとともに、このような成功を収めることができ、誇りと喜びでいっぱいです。ここルートヴィッヒスハーフェンの実証プラントは、この技術の産業応用に向けた最終段階において、貴重な知見を提供してくれるでしょう」
SABICのCEOであるアブドラフマン・アルファジ氏は次のように述べている。
「この電気炉技術は、世界の石油化学産業のサステナビリティに対して非常に大きな可能性を秘めており、再生可能な電力が、より高効率で低排出の化学処理に果たす役割を実証することができます。SABIC、BASF、Lindeの各チームは、緊密な連携、チームワーク、知的財産の開発、最善の技術的ソリューションの総合的な推進を通じて、このプロジェクトを重要な段階へと導きました。今日、循環型経済に向けた私たちの旅路における協業の力を称えるために、共にこの場にいられることを誇りに思います」
Linde EngineeringのCEOであるユルゲン・ノヴィッキ氏は次のように述べている。
「石油化学産業の電化と、持続可能な発電によるスチームクラッカーの運転が可能であることを実証することが、私たちの共通の目標です。このすばらしい共同プロジェクトは、CO2排出量ネットゼロと気候変動に配慮した産業への道のりを前進させる画期的なテクノロジーを、私たちが共同で開発できることを証明するものです。STARBRIDGE™テクノロジーにより、エミッションフリーの石油化学産業というビジョンに一歩近づきました」
新技術の開発に協力する3社の知識と知的財産を結集させ、BASFがルートヴィッヒスハーフェンの実証装置を運営する。Lindeは、プラントのエンジニアリング、調達、および建設を担当した。Lindeは今後、開発した技術をSTARBRIDGE™という新しい商標で商品化し、従来の火力技術に取って代わることで、石油化学産業が脱炭素化できるように取り組んでいく。
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