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2024/1/3

【ペロブスカイト太陽電池】岡山大学、欠点を補完する画期的な添加材「ベンゾフェノン」発見

岡山大学大学院環境生命自然科学研究科のHytham Elbohy外国人客員研究員(日本学術振興会 外国人特別研究員、Damietta University(エジプト)助教)、学術研究院環境生命自然科学学域(工)の鈴木弘朗助教、西川亘助教、林 靖彦教授らは、Southern University of Science and Technology(中国)のAung Ko Ko Kyaw准教授と共同で、次世代太陽電池として期待されているペロブスカイト太陽電池の性能と安定性を向上する添加剤分子として「ベンゾフェノン」を発見した。
 今回の研究成果は、2023年9月12日に米国化学会(American Chemical Society)発行の学術雑誌「 ACS applied materials & interfaces 」に掲載され、2023年12月26日に岡山大学ホームページで公開された。
 ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン太陽電池に比べて、作製工程が容易で、フィルム状の柔軟な太陽用電池が作製でき、発電効率が同程度であることから、安価で様々な場所に活用できる太陽電池として期待されている。しかし、ペロブスカイト材料の環境安定性が低いことが大きな課題とされている。
 今回の研究では、ベンゾフェノンという分子を添加剤として用いることで、ペロブスカイト太陽電池の性能と安定性を向上することに成功した。高性能・高安定性のペロブスカイト太陽電池は、今後エネルギーハーベスティングやInternet of Everything(IoE)の発展に大きく寄与する。

図1(a)ペロブスカイト太陽電池の模式図、(b,c)添加材(b)ありと(c)なしの場合のペロブスカイト太陽電池の出力特性、(d)電力変換効率(PCE)の劣化特性
図2(a,b)添加材(a)ありと(b)なしの場合のペロブスカイト薄膜表面のSEM像、(c)α相およびδ相のFAPbI3の結晶構造の模式図、(d)添加剤BPがペロブスカイト結晶に及ぼす影響の模式図

研究者らからのひとこと

Elbohy外国人客員研究員と鈴木助教(右)

 この研究は、高い性能と安定性を兼ね備えたペロブスカイト太陽電池の実現につながるもので、クリーンエネルギー技術の発展に寄与します。再生可能エネルギー技術に革新をもたらし、持続可能な社会の実現を目指していきたいです。(Elbohy氏)
 分子の添加という簡易な手法により、ペロブスカイトの高い安定性を実現できることは驚くべき発見です。この研究によりペロブスカイト太陽電池の社会実装が進むことを期待しています。(鈴木氏)

論文情報
 論 文 名:Benzophenone: A Small Molecule Additive for Enhanced Performance and Stability of Inverted Perovskite Solar Cells
 掲 載 紙: ACS Applied Materials and Interfaces
 著  者:Hytham Elbohy, Hiroo Suzuki, Takeshi Nishikawa, Thiri Htun, Kosei Tsutsumi, Chiyu Nakano, Aung Ko Ko Kyaw, and Yasuhiko Hayashi
 D O I:10.1021/acsami.3c09835
 U R L: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsami.3c09835

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