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2024/5/27

【医療】岡山大学の松本卓也教授等、臓器への接着/脱着が可能な接着材開発

<研究のポイント>
・臓器への瞬間接着、脱着を制御できる無機セラミックス系固体接着材を開発した。
・開発した接着材は、軽い圧接だけで肝臓などの臓器に瞬時に接着し、外すこともできる。
・術中臓器の圧排や医療デバイスの固定など、外科処置の簡便化が期待できる。

 岡山大学 学術研究院医歯薬学域(歯)生体材料学分野の松本卓也教授、岡田正弘准教授(研究当時、現・東北大学大学院歯学研究科)、神戸大学大学院医学研究科肝胆膵外科学分野の福本巧教授、柳本泰明特命教授、大阪大学、九州大学の研究グループは、骨組織の主要構成成分であるリン酸カルシウムの多孔化(孔がいっぱい開いた構造)制御により、真皮や肝臓などの生体軟組織と接着、脱着できる無機セラミックス系固体接着材を開発した。
 さらに、この材料を用いることにより、外科手術の際の内臓臓器の圧排が簡便に行えることを示した。
 この研究成果は2024年5月1日、ドイツ科学誌「Advanced Healthcare Materials」のオンライン電子版で公開された。
 生体組織の接合や体内埋め込み型医療用デバイスの生体内への固定、といった目的には、現在、高分子製の縫合糸や化学硬化型の高分子接着材が広く使用されている。一方、医療現場においてはこれら用途にあたり簡便かつ迅速に使用できる生体組織用接着材の開発が望まれている。
 本接着材は合成したリン酸カルシウム微小粉末をある程度の温度で焼くことで、小さな空孔を多く残した多孔質材料。本材料は生体組織の水分を吸水し臓器表面の線維性分子を効率よく引き寄せ、結果として生体組織、特に内蔵臓器と強く結合する。また、大量の水分を接着界面に供給することで組織に傷をつけずに容易に外すこともできる。
 本研究成果は、簡便かつ迅速に強い接着力を示す生体親和性に優れた新しい接着材として、手術における臓器、組織の圧排や医療用デバイスの体内固定への応用など、外科処置の簡便化に寄与することが期待される。

開発したリン酸カルシウム製軟組織接着材の外観、材料を焼く温度にともない接着力が変化します(左写真とグラフ)。右写真は、本接着材を用いたブタ肝臓の持ち上げ実験の様子
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