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2024/11/14
【半導体】東レ、下廃水再生水からの超純水製造を可能とする逆浸透膜の販売開始
東レは、このたび、半導体分野等での超純水製造に向けて、下廃水再生水※1を原水とした場合に求められる尿素の除去性を2倍に高めた中性分子高除去・低圧逆浸透(RO)膜※2エレメント「TBW-XHRシリーズ」を2024年11月から国内水処理エンジニアリング会社向けに先行販売開始する。
世界各地で水不足が深刻化する中、半導体メーカー各社は、大量の超純水を使用する半導体製造工程において、工場内廃水の再利用率を高める取り組みに加え、半導体製造に用いる超純水の水源として、現状の水道水に代わる下廃水再生水の活用や海水の利用拡大を検討している。
これら多様な原水から超純水を製造するには、水中に含まれる塩分だけでなく、シリカやホウ素、尿素、アルコールなどを除去する技術が必要。特に尿素は、飲料用途で問題となるだけでなく、超純水中に含まれる場合、半導体製造の露光工程でトラブルを起こすため、尿素を高効率で除去することが重要な課題であった。
従来の下廃水再生水は、水道水に対して尿素濃度が3倍の1L当たり約30マイクログラムと高く、超純水製造プロセスでは、尿素を極限まで除去することが求められる。しかし尿素はサイズが小さく、電気的に中性の分子であるため、海水に含まれるホウ素と同様に除去の難度が高く、高い造水量を維持しながら尿素やホウ素の除去率を向上させることがRO膜開発の課題であった。
東レは、RO膜の製造プロセスの革新により、水を選択的に透過させ、尿素やホウ素を始め、アルコールなどの除去性を高める、新たな膜構造の制御技術を開発し、従来は除去が難しかった尿素の除去性を従来比2倍に向上し、低い圧力での優れた透水性と両立させた、RO膜エレメント「TBW-XHRシリーズ」を創出した。
この開発においては、東レリサーチセンターが保有する、高度分析技術を活用。同製品は、東レ社内評価にて90%に近い除去性を示しており、これにより、下廃水再生水からの超純水製造において、尿素を従来比半減する等、最先端の半導体製造工場で求められる高水質な超純水の安定供給に貢献する。
同製品は、現行超純水製造システムでの水質向上のニーズに応え、更に下廃水再生水利用などの新システム構築を担う製品として、半導体・電子部品製造工場や超純水製造装置を取り扱う国内水処理エンジニアリングへの先行販売を進める。今後は、海外を始め、海水淡水化や河川水等のかん水淡水化、各種工場廃水処理用途への製品展開を進める。
同製品に関わる技術について、2024年12月8日~12日にかけてアラブ首長国連邦のアブダビで開催される世界最大級の水処理学会「IDRA(International Desalination and Reuse Association)」の年次大会にて発表を行う。
RO膜エレメントは、海水淡水化や、各種産業用水製造、廃水再利用、飲料水製造などの幅広い分野で使用されている水処理膜製品。東レは、RO膜エレメント“Toray RO”の他、除濁用UF膜モジュール “Toray UF”、排水処理用MBR膜モジュール“Toray MBR”など、幅広い水処理膜と技術サービスを有し、多種多様な水に対して最適な製品を提供している。
※1 下廃水再生水
近年、水不足が深刻な米国カリフォルニア州やシンガポールなどで、下廃水を生物処理した二次処理水を水源に、限外ろ過膜(UF : ultra-filtration membrane)と逆浸透膜※2でろ過した処理水を「再生水」として飲料水等への水源に使用することが行われている。
※2 逆浸透膜(RO : reverse osmosis membrane)
濃厚水溶液と希薄水溶液とを半透膜で隔てて接触させると、濃度差で生じる浸透圧によって希薄水溶液側から濃厚水溶液側に水が移動する。ここで浸透圧より大きな圧力を濃厚水溶液側にかけると、水が半透膜を透過して希薄水溶液側に移動する。この現象を利用した膜分離法を逆浸透法と呼び、逆浸透法に用いる膜を逆浸透(RO)膜という。RO膜は、ナトリウムやカルシウムなどの金属イオン、塩素イオンや硫酸イオンなどの陰イオン、あるいは農薬などの低分子の有機化合物を除去対象としている。
<中性分子高除去・低圧逆浸透(RO)膜エレメントの仕様>
型式:TBW-440XHR
塩除去率:99.8%
透過水量:32.0m3/日
ホウ素除去率(参考):92%
シリカ(SiO₂)除去率(参考):99.9%
公称膜面積:41m2
※測定条件
給水圧力:2.0MPa, 給水温度25℃
給水濃度:1500mg/L as NaCl, 回収率15%, 給水pH7
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