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2024/7/24

【HCNF】GRACE・横浜国立大学、コーヒー粕からホロセルロースナノファイバーの抽出に成功

 GRACEは横浜国立大学 大学院工学研究院の川村出准教授の研究グループらと進める使用済みコーヒー粕からセルロースナノファイバー(CNF)を抽出する研究のなかで、コーヒー粕の乾燥重量の52%という高収率でホロセルロースナノファイバー(HCNF)を得ることに成功した。
 HCNFは、ヘミセルロースとセルロースのみから構成されるナノ結晶。樹脂やプラスチックの補強材として自動車部材への実装や、増粘・分散安定性として、ボールペンインクや化粧品への応用されているセルロースナノファイバー(CNF)とほぼ同様の性質が確認されており、これまでコーヒー粕から低収率でしか得られなかったCNFの抽出に代わって、より効率的なアップサイクル技術として期待される。

研究内容と結果
 今回、GRACEと川村教授、環境情報研究院 金井助教らの研究グループは、セルロースと同じ多糖類に分類されるものの、構造の異なるヘミセルロースに着目。
 GRACEが運営する「UNI COFFEE ROASTERY」などで排出されたコーヒー粕を原料として、コーヒー粕の乾燥重量の約半分を占めるヘミセルロースとセルロースからなるホロセルロースまで処理した後、高圧下物理的な衝撃によって水中で微細化した結果、52%という高収率でHCNFを得ることに成功。
 HCNFにはコーヒー粕の主要なヘミセルロースであるマンナンが結晶化した状態で含まれており、コーヒー粕由来のHCNFがこれまでに報告のない新しい特徴をもつことが明らかになった。本研究で高度に微細化されたHCNFは、植物由来の環境にやさしい乳製品、肉製品、ケーキ生地等の食品添加剤や化粧品等への利用が期待される。

 さらに、コーヒー粕由来のHCNFを凍結後乾燥させると、発泡スチロールのような形状となり、これに再度水を加え、手で振とう(ハンドシェイク)させると、ナノメートルスケールである30~50 nm幅まで再び分散することも確認された。凍結乾燥させたHCNFには、ハンドリングが容易であること、保存料フリーで長期的な保存が可能であること、輸送時の容量を飛躍的に少なくできることなどの特長が挙げられる。

本研究の今後の展望
 本研究で得られたHCNFは、コーヒー粕に豊富に含まれる細胞壁成分を効率的に利用した新しいアップサイクル技術であり、今後は高度に微細化され、マンナンを含む他に類をみない構造的特長を活かした食品用乳化安定剤としての利用へ向けたさらなる研究を行っていく。

 GRACEは「UNI COFFEE ROASTERY」で発生するコーヒー粕の提供、研究支援を継続すると同時に、横浜国立大学、川村研との連携を深め、食品廃棄物由来のHCNFから、付加価値が高く、アップサイクル型の食品用添加物等の抽出化と、それらの将来に向けての実用化を目指すことで、持続可能な開発目標SDGs(Sustainable Development Goals)のゴール12(つくる責任 つかう責任)の達成に貢献し、地域資源を有効に活用する地域循環型経済(ローカル・サーキュラーエコノミー)の構築に寄与していく。

GRACEと横浜国立大学の共同研究契約について
 GRACEは2022年11月1日付で横浜国立大学と共同研究契約を締結。同大学院工学研究院 川村出准教授の研究グループとコーヒー粕をはじめ食品廃棄物由来のCNFを活用した新製品開発の共同研究を進めることで合意している。

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