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2024/4/18
【Packaging】木村石鹸とフジシール、パウチからパウチへの水平リサイクル実証実験について報告
大正13年創業の石鹸メーカー木村石鹸工業は、SDGsに基づく環境活動の一環として、フジシールインターナショナルと協力し、リサイクル可能な単一素材を使用したモノマテリアルパウチを開発。ユーザー協力を得ながら実証実験を行ってきた。この水平リサイクルしたパウチの品質検証の結果から得られた課題と可能性について報告した。
詰替パウチから、もう一歩踏み込んだエコを考える取り組み
木村石鹸では、「未来の住人プロジェクト」として過剰包装の見直しや、バイオマスプラスチックを使用するなどの環境への取り組みを行っている。また、自社ブランド創設以来、環境保護の観点から詰替えが可能な大半の商品に詰替パウチを用意している。詰替え用パウチはボトル本体と比較しプラスチックの使用量を大幅に削減できるが、昨今の気候変動などの環境問題において石油由来のプラスチックのリデュースは急務の課題となっている。
そこで、2019年より木村石鹸はG-Placeの助言のもとフジシールに協力し、パウチを単一素材化することで水平リサイクルを可能にするための共同研究を開始。
化粧品などのパウチは安全性・保存性などを高めるため、異素材を多重に重ねた複合素材となっておりリサイクルが難しいことから、単一素材からなるモノマテリアルパウチを開発。全体重量の30%以上に再生材を利用したプロトタイプの製造を行った。
<取り組み推移>
2019年 単一素材を用いたパウチの開発に着手。
2021年 単一素材版のパウチ製造に成功。
2021年 ヘアケアブランド12/JU-NI『未来の住人プロジェクトパッケージ』として販売。
2022年 ユーザーから実際のリサイクル品を回収し、水平リサイクルの実証実験を行う。
2023年 水平リサイクルされたパウチの評価試験などを行う。
パウチリサイクルから見えた課題
今回ユーザーから回収したパウチを原料に用いた水平リサイクルパウチが、どの程度まで新品に近い物性を出せる可能性があるのかをフジシール、G-Placeと協働で確認、検証を行った。
検証結果
回収したパウチより再生材を作成し、シーラントフィルム(最内面:内容物に触れ、袋を形成する際の接着面となる部分)の一部に使用した。この再生シーラントフィルムを新品の透明フィルムに貼り合わせ、内容物が視認可能なパウチを作成した。本来であれば、再生前と同仕様に再生されることが好ましいが、今回は再生材量に限りがあったため、シーラント層の性能を確認することに特化して検証を行った。
また、スパウト・キャップに関しても別途再生材を作成し、再試作を行ったうえで、内容物を充填、経時でのパウチ強度へ与える影響を確認した。
結果、内容物保管後の強度低下度は新品と同等程度の数値を示し、スパウト・キャップに関しても、寸法安定性や、開栓性(開栓時の開栓力)に新品との大きな有意差は見られなかった。
見えてきた課題と可能性
実施できなかったバリア層への影響確認や衛生面の担保についてなど、実用化に至るためにはまだまだ超えなくてはならない課題はあるが、今回の検証により、シーラント層に使用してもパウチ強度への影響が少ないこと、スパウト・キャップの開栓性に影響が少ないこと、内容物を視認できる透明性が確保されたことなどから、モノマテリアルパウチであればユーザーから回収した使用済みのパウチを原料としたリサイクルによって、再利用が行える可能性を見ることができた。
また、リサイクルで最も大きな課題であるユーザーの参与についても、郵送パッケージの返送率が67%と高い数値が見られ、SDGsにおける企業の「つくる責任」のみならずユーザーの関心や行動といった「つかう責任」が可視化されたことにも大きな意義があった。
『未来の住人プロジェクト』について
木村石鹸では現在できることとして取り組んでいる簡易包装や、配送用資材などのごみの削減などと並行して、SDGs目標の掲げる「つくる責任・つかう責任」の発展的な取り組みとして、ものづくり企業としての製品へのこだわりを更に広げる。
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