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2026/5/21

【Printing】今野印刷、ナノテラスを活用した照射実験で水なし印刷の品質安定性を実証

 今野印刷は、放射光施設「ナノテラス」を活用し、水なしオフセット印刷方式の品質安定性について、水ありオフセット印刷方式との比較検証を目的とした照射実験を実施した。
 同一の絵柄を用いて印刷したサンプルをナノレベルで解析した結果、両方式の印刷物に明確な差異が認められ、その違いが科学的なデータとしても確認された。


水なし印刷導入の背景と目的

 水なし印刷は、一般的なオフセット印刷で使用されるIPA(イソプロピルアルコール)等を含む「湿し水」を使用せず、刷版工程でも強アルカリ現像薬品を使わない環境配慮型の印刷方式。同社では環境負荷の低減に加え、湿し水の状態変化に影響されにくい点から、品質の安定性とオペレーションの効率化に着目し、早期よりこの水なし印刷方式を導入してきた。
 実験の目的は、これまで現場の品質管理や運転データから経験的に把握してきた「水なし印刷の品質安定性」を、最新の先端計測技術によって科学的に検証・可視化することにある(図1参照)。

図1:印刷面(マゼンタ版)拡大写真(50%網点)
左:水あり印刷(にじみが見られる)右:水なし印刷(網点の輪郭が鮮明に再現されている)


実験の概要と結果

 東経連ビジネスセンターが運営する「ものづくりフレンドリーバンク(MFB)」を通じ、放射光施設「ナノテラス(NanoTerasu)」を利用した照射実験を実施。水あり・水なしの両方式で印刷した同一絵柄のサンプルを、X線小角散乱法(SAXS)を用いてナノレベルで比較解析した。
 解析の結果、図2のピーク(②)において、水あり印刷では「湿し水の量」が多い場合(青線)と少ない場合(黄線)でデータの挙動に明確な強度の乖離が認められた。この差異は、湿し水の介在に伴う構造変化に由来するものと考えられる。さらに、こうした構造の変化が測定場所によって大きく異なる(不均一である)という、水あり印刷の不安定さを裏付ける結果が得られた。
 一方で、水なし印刷(赤線)ではこのピークが一定であり、測定場所による差異も確認されなかった。
 この結果は、湿し水の状態が印刷物の構造に微細な影響を及ぼし、それが印刷品質の「ムラ」や不安定要素につながっていることを示唆するものとなる。この成果は、印刷工程における湿し水制御の難しさと、それに対し水なし印刷がいかに高い次元で均質な品質を維持できるかを科学的な視点から再認識させるものとなった。

ナノテラスでの実験の様子
図 2:X線散乱強度による印刷プロセスの比較分析

 今野印刷は、水なし印刷の環境性と品質安定性を活かした印刷物の提供に加え、紙とデジタルを組み合わせたクロスメディア提案や、生産・品質データの活用による標準化・省力化など、ものづくり現場からの価値創出をさらに進めていく。
 また、ナノテラスをはじめとする地域の先端設備を積極的に活用し、地元企業として東北のものづくり産業の発展にも貢献していく。


協力企業

 照射実験は、以下の各社の協力のもと実施された。(敬称略・順不同)
小森コーポレーション
東京インキ
東レ

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