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2024/3/6

【QOL】東レ、自動で排尿を検知するおむつ組み込み型センサーを新規開発。フィルム上への半導体回路形成技術活用

 東レは、おむつを直接視認することなく、要介護者の排尿有無を把握できる、おむつ組み込みタイプの排尿検知センサーを開発した。同センサー開発にあたり、高性能半導体カーボンナノチューブ(半導体CNT複合体※1)を用いて、やわらかなフィルム上に半導体回路を塗布形成する技術を応用している。

センサー(写真左)はおむつに組み込まれており、現場での作業は不要

 今回試作した排尿検知センサー付きおむつを、介護施設に入居されている要介護者の方に使用し、自動での排尿検知動作を実証した。今後さらに多くの方での実証を進め、2025年度中の実用化を目指す。
 現代社会では、高齢化とともに要介護者は年々増加している。同時に、労働人口の減少に伴う人手不足によって、介護現場における負担は今後さらに増加すると見込まれており、その負担軽減は社会的な課題となっている。
 東レはこれまで、独自の半導体CNT複合体技術により、汎用フィルム上に水分の検出が可能なセンサーを作製して無線動作することを確認しており、その技術を用いた排尿検知センサーの開発を進めていた。しかしながら、実際におむつにセンサーを組み込むと、人体や尿そのものの水分の影響により無線通信ができない課題があった。
 今回、水分に強い無線通信方式の採用や、水分の影響を受けにくいセンサー構成の検討を行うことで、人体や尿の影響を受けずに無線通信を可能にする技術の開発に成功し、実際に介護施設に入居されている方に協力いただき動作を確認した。なお、本センサーの開発にあたっては、おむつへの組み込み方式を大人用おむつメーカーの光洋と共同で検討し、三幸福祉会 杜の癒しハウス文京関口に動作実証の協力をいただいた。
 やわらかなフィルム上に形成した排尿検知センサーは、おむつの形状変化に追随し、要介護者が違和感なく使用できる。また、フィルム上に回路を直接形成するため、既存のシリコン製半導体回路のようにフィルムから剥がれる恐れもない。そして、同センサーはあらかじめおむつに組み込まれており、介護者は現場で特別な作業もなく、通常のおむつと同様に使用、廃棄することができる。おむつを直接視認することなく、パソコンやスマートフォン、タブレット上で交換タイミングを確認できることから、おむつ交換回数の最適化による負担軽減や、おむつ使用量の低減に繋がる。
 さらに、センサーの組み込み方を工夫することで排尿をリアルタイムに検知し、データの蓄積や活用を行うことで排尿タイミングを予測し、トイレへの誘導を行うなど自立支援へ向けた取り組みにも活用できることが期待できる。
 なお、フィルム上に半導体回路を直接塗布形成する技術は、設計自由度が高く、安価に小ロットのニーズに対応することが可能。東レでは、滋賀事業場に塗布型半導体を生産可能なパイロットラインを導入済みであり、社外パートナーとも連携することで本センサーを用いた排尿検知システムの早期の製品化を目指す。
 また、塗布型半導体の特徴を活かせ、物流現場での効率向上や人手不足の助けになるRFIDや、偽造品による被害を防止し、安全安心な社会に貢献する真贋判定用途などへの展開を図る。
※1 高性能半導体カーボンナノチューブ複合体
 直径がナノメートルサイズのカーボンナノチューブと高性能半導体ポリマーとの複合体。東レは半導体ポリマーを単層CNTの表面に付着させることで、導電性を阻害することなく単層CNTの凝集を抑制できることを、世界に先駆けて見いだした。

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