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2026/4/29

【REPORT】国連大学水・環境・保健研究所、『Critical Minerals, Water Insecurity and Injustice(重要鉱物、水不安、そして不正義)』公表。重要鉱物の採掘で水不足が深刻化

 電気自動車(EV)や再生可能エネルギー、デジタル技術の普及に伴い、これらのインフラや機器の生産に必要なリチウムやコバルトなどの重要鉱物(クリティカルミネラル)への需要が高まっている。一方で、重要鉱物の採掘は、採掘地域の水不足や環境汚染、深刻な健康被害を引き起こしていると指摘する新たな報告書を国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH)が公表した。
 報告書『Critical Minerals, Water Insecurity and Injustice(重要鉱物、水不安、そして不正義)』は、エネルギー転換やデジタル化が不可欠であることを前提としながらも、その恩恵が主に先進国に集中し、貧困層や先住民など、鉱物採掘地域の脆弱な人々に不均衡な負担が押し付けられている実態を明らかにしている。
 また、重要鉱物の採掘に伴う健康面への影響も深刻。コンゴ民主共和国では、鉱山周辺住民の72%が皮膚疾患を経験し、女性や少女の半数以上が婦人科系の健康問題を訴えている。新生児の先天異常の発生率も鉱山周辺地域で高い傾向が見られる。さらに、同国の採掘現場のおよそ3割では、十分な安全対策が講じられないまま子どもが労働に従事している。
 パリ協定の目標達成には、2040年までにリチウム需要が約9倍、コバルトとニッケル需要が倍増すると見込まれている。UNU-INWEH所長のカーヴェ・マダーニ教授は、「環境負荷を富裕層から貧困層へ、あるいは一部の人々や地域から別の人々・地域へと移し替えるだけでは、持続可能で公正なエネルギー転換とは言えません」と述べている。
 報告書は、重要鉱物のサプライチェーンを巡る国際的なガバナンスの抜本的な改革が必要だと強調している。法的拘束力を持つ国際的なデューデリジェンス基準の導入、排水ゼロ化を含む厳格な汚染・水管理、電池や電子機器のリサイクルの強化など循環型経済への投資、地域社会への公正な利益配分や先住民の自由意思による事前同意の確保などを提言している。
 報告書の筆頭著者であるアブラハム・ヌンボグ博士は次のように述べている。「ガバナンス不足を正さなければ、クリーンエネルギーの未来が、過去の化石燃料経済と同じ不正義の上に築かれることになります」。
■国連大学について
 国連大学は国連に所属するグローバルなシンクタンクであり大学院の教育機関。本部は東京・渋谷にあり、日本に本部を置く唯一の国連機関。国連大学の使命は、人類の生存、開発、福祉など国連とその加盟国が関心を寄せる緊急性の高い地球規模課題の解決に取り組むため、共同研究や教育を通じて寄与すること。12カ国にわたる13の研究所が国連大学に所属し、研究・教育活動を展開している。
■UNU-INWEHについて
 国連大学水・環境・健康研究所(UNU-INWEH)は、国連の学術部門である国連大学(United Nations University)を構成する13の研究所の一つ。「国連の水問題に関するシンクタンク」として知られ、世界各地で直面している水、環境、健康に関する重要課題に取り組んでいる。カナダのオンタリオ州リッチモンドヒルに拠点を置き、研究、研修、能力開発、知識の普及を通じて、国連および加盟国が直面する喫緊の地球規模の持続可能性と人間の安全保障の課題の解決に貢献している。

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