コンバーテック2021年10月号プレサービス
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量出放)gm量(散揮)gm量(散揮5008642000055図3 ゼロ次放出モデル(レイシス)図4 トランスフルトリン(左)およびエンペントリン含浸レイシスの累積揮散量2015101210検体① 有効成分トランスフルトリン(TF)含浸レイシスサンプルサイズ:4×4 cm 薬剤含有量:42 mg放出量501002040効き目終了効き目ライン1501201008060402060検体② 有効成分エンペントリン(EMP)含浸レイシスサンプルサイズ:4×4 cm 薬剤含有量:120 mg204060次関数グラフのような放出(1次放出)の場合、初期における効き目ライン以上の放出量は効果に対して過剰であり、時間経過と共に効き目ライン以下に低下すると、残留分は無駄となってしまう。 対してレイシスの場合は、無数の細かな空隙に液状成分を浸み込ませることで、一定水準の効き目を長持ちさせることができる。フィルム表面から液状成分が揮発・放出し効果を発揮した後も、多孔質の隙間(タンク)に溜まった薬剤が常に一定量供給されるため、効き目が最初から最後まで変わらずに長持ちさせることができる。すなわち、レイシスは零次関数グラフのような放出「ゼロ次放出」を示す(図3)。 その結果、①初期における過剰な薬剤放出対策、②薬効期間の延長、③残留薬剤の削減、最終的には、コストダウンや環境負荷低減などの提案が可能となる。2.3 実験例 モデルではなく、実環境下においてゼロ次放出を証明したデータは図4の通りである。試験環境:液状成分としてピレスロイド系薬剤を含浸したレイシスを製作し、BOX内に吊り下げて、経時変化における揮散推移を計測した。試験方法:BOX内に検体を吊るし、BOX時間試験時間(日)の上部4カ所から空気を送入、下部4カ所から排気した。空気の流量は15 L/minに設定し、このBOXは25℃環境下に設置した。2.4 レイシスの組成 続いて、レイシスの組成について説明を加える。 レイシスの基材は結晶性ポリオレフィンと充填剤を含む樹脂組成物を材料としている。充填剤は小粒径の無機フィラーであり、樹脂組成物中に半分程度配合し、樹脂中に均一に分散させる。レイシスの製法手順では、まず、この樹脂組成物を溶融押出して成膜し、一旦、固化する。固化した後に液状成分と接触させ、これに曝しながら延伸する。こうして形成される空隙は真空に近い状態となり、効率的に液状成分を吸い上げる。これにより液状成分が充填剤周囲に担持される。2.5 レイシスのメカニズム なぜレイシスがゼロ次放出となるのかについては次のように推察される。 一般的な塗布タイプの場合、第1段階:表面からの蒸散(薬剤の蒸気圧に依存)、第2段階:樹脂中に拡散(濃度勾配がな試験時間(日)

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