66図1 スロットダイを使った塗布明する努力が不足していたと感じます。そこで「『塗れるか?問題』へのシンプルな回答」をまとめました。キャピラリー(Ca)数さえマスターすれば、誰でも暗算で「塗れるか?」に答えられます。②大抵は遅くすれば塗れる、どうしてもダメなら希釈 パイロットコーターは1~10m/分の低速が多く、ほとんどの場合、塗れてしまいます。 図2は最小膜厚に関する有名な実験結果1)を、筆者がCa数で規格化して整理し直したマップです。 ηは粘度、Uは塗布速度、σは表面張力、hminは最小膜厚、Hはスロットリップ~支持体のギャップです。 結論だけ記すと、最小膜厚は、臨界Ca数以上:[hmin/H]=約0.7臨界Ca数以下:[hmin/H]=0.3~0.7ていましたが、1年延期になり、開催前に帰国して、日本でオリンピックを観戦できたのは実に幸せでした。だけのごく簡素なものか、もしくは、数式だらけで難しい数値計算能力が求められる難しいものかの両極端で、「丁度良い解説」が少ないことによるのでは、と推測しています。 そこで、今回は、多くの塗布技術者、あるいはRoll to Roll工程技術者に有用な「簡単な手引書」として「シンプルなイメージを作れる解説」を目指し、関連情報をまとめました。①塗れるか否か?→Ca数で考える 「塗れるのか、塗れないのか」は、韓国企業に在職中、再三、問われました。韓国人の「結論だけ求めたがる気質」も関係していたとは思いますが、実は、日本企業で塗布を担当していた頃も、素材設計の開発担当者から数え切れないほどに問われ、正直、辟易していました。聞かれるたびに「単純ではない」と前置きしつつ、Dry厚みと濃度、粘度を聞いて不愛想に回答していました。 しかし、改めて考えると、素材設計者は開発中の膜が作れるかどうかを知りたいだけなので、当然の質問であり、むしろ「塗れるか否か?」を端的に説引っ越しの荷物はハシゴ車を使って窓から搬入引っ越し作業を任せられるのはラク。 でも、土足はちょっと……スロットダイの汎用性スロットダイの汎用性 ここからは、コンバーティング関連ネタとして、前回(9月号)に引き続き、スロットダイを取り上げます(図1)。 スロットダイは、量産機とパイロット機の両方で標準装備されることが多いと思います。これは、便利な塗布方式だからでしょう。塗布厚みは、ポンプ流量と搬送速度で設定できるし、塗布操作範囲も広いので、極端な条件(超薄層、超高速など)を除けば概ね一般的な塗布条件を網羅できます。 今日、このような汎用装置としての地位を確立するに至ったのは、数十年前から連綿と継続されている、塗布研究の重鎮の方々による取り組みの賜物と思います。しかし、実際の製造現場の塗布技術者にとって、スロットダイに塗布適性を付与することは意外に難しく、経験的であったり、新規導入の際の仕様がメーカー任せであったり、シンプルな装置の割に機能がブラックボックスになっているケースが多い気がします。これは、スロット塗布の解説資料が、装置構造を簡単に説明した
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