塗布後===支持体71倍以上」と容易に分かります。2)下リップ:いったん、下リップの下端まで液が逆走した後で、支持体に引っ張られて搬送方向に戻ってきます。「下リップ下端にピン(固定)」が最も安定で、減圧により塗布液を下端まで逆走させるのが理想です。前出のCa数マップで、減圧するほど最小塗布領域が広がるのは、塗布液を下リップまで導く効果です。右下図中の「下り液」と「上り液」の流量は等しくなります。これはスロット~下リップ下端までの差圧に基づくポアズイユ(Poiseulle)流と支持体搬送に伴うクエット(Couette)流が等しくなる状態を意味します。③下リップ長とギャップの適正化 少し難しい説明になりますが、理解すると下リップを自分で簡単に設計できるようになりますので、ぜひ、ご一読いただきたく思います。 上リップのCouette-Poiseulle流の収支がゼロになる条件は、ΔPはスロット~塗布液の下端までの差圧(主に減圧度に相当)、ηは粘度、Uは搬送速度、Lは下リップ長、Hはリップ~支持体ギャップ、として式(3)で表されます。ΔP=[6ηUL]/H2……(3) 図5に、式(3)を使い5m/分で試算した結果を示しました。「スロット塗布OK条件は、減圧度、下リップ長、ギャップの組み合わせでいくつも有り得る」ことが分かります。 塗布条件は以下の手順で決められます。1)下リップ設計:ダイ導入の際、想定の粘度と速度に最適な下リップ長でスロットダイ図4 単層スロットダイのリップ近傍流動上リップ収支下リップ収支=上リップ下リップスロット流下り液Poiseulle流Couette流上リップ上り液韓国コンバーティング放浪記同時重層スロット塗布同時重層スロット塗布 例えば『コンバーテック』2021年6月号の「特許から探るコンバーティング技術 第114回 ダイコート2(5)」(古賀裕久氏)2)の後半で紹介されているように、2層以上を同時塗布できれば格段に生産性が向上します。その魅力から、同時重層スロット塗布が検討されることが多いようです。しかし、経験がなければ、どうすれば安定的に重層塗布できるのかコツがつかめず、戸惑うケースが少なくないようです。 そこで「重層で塗れる条件」の作り方も整理してみました。これは筆者の経験に基づくので、十分にカバーできないケースも大いに有り得ることを、あらかじめご了承下さい。①重層で安定=単層と見なせる 一般的な条件下で「単層以上に安定な塗布条件はない」と考えて良いでしょう。つまり「重層で安定化」するのは「いかに単層に近い状態を作るか」と置き換えることになります。まず、「単層スロット塗布」のリップ近傍流動を整理しましょう。②単層スロットダイのリップ近傍流動 上リップと下リップの収支に分けて考えます(図4)。1)上リップ:スロットから吐出した塗布液は支持体に導かれ、上リップ~支持体では凹型な三角の速度分布を形成後、支持体と同速になるまで引き延ばされます。図中の青部分で示したように、スロット流、上リップ、塗布後の流量は同じになります。上リップ~支持体の三角形は凹型が安定です。凸型は塗布液がリップに濡れ上がってスジ故障を発生させやすくしてしまいます。「上リップの凹型三角形」と「塗布後の四角形」の面積が等しくなるギャップから「上リップが安定になるギャップ(H)はWet膜厚(h)の2
元のページ ../index.html#74