88*代からのアメリカです。22年にはガムテープ協会が設立されています。ガムテープ工業の急速な発展の背景には、段ボール箱の登場(1894年)、その後の急速な普及・発展がありました。段ボール箱とともにガムテープは需要を伸ばしてきたのです。やがて粘着テープの台頭によりガムテープの需要も減少しましたが。 ところで、ヨーロッパのテープ工業会Afera(The European Adhesive Tape Association)が、調査会社が最近行った今後のガムテープ市場調査の結果を紹介しています注3)。それによれば、2017年ガムテープの世界売上額は9億3490万米ドルでしたが、27年には1.7倍の16億280万米ドルになる、<年間成長率は数量で4.9%>と推定されている。ガムテープの中では特に<繊維入りガムテープ>が市場を牽引していくと云う。 現役時代、クラフトテープの研究開発に従事し今でも愛着さえ感じる小生ですが、地球温暖化による災害・被害が急増・拡大する今日、ガムテープを再考・見直すのも必要かと考え本論を記述した次第です。クラフトテープメーカーの方には、耳障りな話になってしまったかもしれませんが、御容赦下さい(決してクラフトテープに恨みがある訳ではありません。御理解下さい)。クラフトテープは、日本の粘着テープの歴史の中で大きな役割を果たしてきたことは間違いありません。欧米の近年の動向を、日本のクラフトテープメーカー、ガムテープメーカーは主体的に捉え、今後いかに取り組むべきか考えるときかもしれません。欧米に負けない、世界によろこばれるEco-friendlyで安価なテープをいかにつくっていくかが大きな課題かもしれません。 前回は長過ぎましたので、今回はこれまでにしたいと思いますが、本の紹介を少々させて下さい。明治時代に来日した外人さんが残してくれた著書には、今でもロングセラーを続けているものが少なくありません。エドワード・S・モース『日本その日その日』(東洋文庫、全3巻)では、今では失われた当時の日本人の生活の美しさが語られ、モースの描いたスケッチ777点も収録されています。同著者『日本のすまい 内と外』(鹿島出版会、収録スケッチ307点)も名著です。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)『怪談』『日本の面影』『日本の心』も勿論はずせません。 ハーバート・G・ポンティング『英国人写真家の見た明治日本』注4)(講談社学術文庫、2005)、著者の素晴らしい写真とともに、スリリングな保津川の急流下り、浅間山登山で噴火に出くわした話、富士山々頂で遭難しそうになった エピソードなどが、写真家ならではの文章で綴られています。英語が達者な方は原著『In Lotus-Land Japan』(1910)を読まれるとよいでしょう。なお彼の写真集『ANOTHER WORLD』(1975)、これが実に素晴らしい、凄いですよ!! まちがいなく名著中の名著です。 今日のお酒は韓国の焼酎<チャミスルRed label>と白酒<マッコリ>、秋田の銘酒<飛ひ良ら泉いずみ>。ツマミはセロリのキムチ、エリンギのニンニク・バター炒め、焼魚はハタハタ、仕上げは<きりたんぽ鍋>。音楽はニュージーランド・マオリ族の歌姫ヒーニーの美声が聴けるCD『オセアニア』、アジア女性ミュージシャンのオムニバス『Asian Muse』、尺八奏者・藤原道どうざん山の素晴らしいアルバム『天』(「アメイジング・グレイス」の尺八演奏もいいですよ!)。注1) アラビアゴムは、アラビアゴムノキから採れるゴムで主成分は多糖類アラビノガラクタン。水で膨潤、溶け粘ねばりけを出すので、アイスクリームやガムシロップ、ワインの増粘剤に使われています。接着剤としては、古代エジプトのミイラの包帯を留めるための糊として、また時代は遥かに下りますが切手の裏面ガム糊として使用されていました。江戸の絵師は絵具の固着剤として使っていたようです。生薬としても使われていました。現在、アラビアゴムは、スーダンが世界の半分以上を産出しています。注2) 膠にかわは動物の皮や骨、腱などの結合組織のコラーゲンを加熱抽出したもの。淡黄褐色ないし暗褐色のにおいのある主成分がアミノ酸の直鎖状ポリマー(タンパク質)。水で膨潤、溶けベタベタし紙・木材・布などに接着・固化する。中国では紀元前4000年頃にすでに接着剤として使われていたと云う。生薬、日本画絵具の固着剤にも使われた。特殊な接着特性が必要とされる日本の弓や、バイオリンなどの弦楽器の接着剤として使われていた。なお、「ゼラチン」は、膠から不純物を取り除いたもので無色無臭。このゼラチン、医薬品・化粧品、そしてゼリーやマシュマロ、焼肉のタレなど食品分野でも今日多く使用されている。注3) Exclusive market data: APEJ to be largest market for gummed tapes during 2017-2027 - Afera注4) 本書は、1988年新人物往来社より単行本として発行されたH・ポンティング著、長岡祥三訳『英国特派員の明治紀行』の文庫版。文庫化に際し書名が変更されています。
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