)%率(過透率折屈図1 テラヘルツ測定によるプラスチック素材の識別1.701.651.601.551.501.45(a)PETABSPVCPEPP1.00.91.21.31.1密度100PP3mm8060PVC1mm40colored PET0.5mm(B,W,C)201.40.51.01.5周波数(THz)0PP3mmPE6mmPVC1mm2.52.03.03.54.0(b)B:黒色W:白色C:透明り、物質における分子間力や水素結合の弱い結合エネルギーに相当する。発生と検出が困難であったために未到電磁波領域と呼ばれてきたテラヘルツ波であるが、最近になって高周波デバイスやレーザ機器の発展により、研究開発が世界中でなされるようになってきた。非破壊検査をはじめとする様々な応用が期待されている。3.1 プラスチック素材の識別 ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABS樹脂の試験片に対して、テラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS)の透過測定により屈折率を測定した結果が図1である。1 THzよりも高周波数領域での透過測定はGaPから近赤外レーザの光混合により発生する単色テラヘルツ光源とする周波数可変システムで測定したものである。 図1(a)はプラスチック各試験片の比重とテラヘルツ周波数帯における屈折率の関係である。素材の違いによってテラヘルツ帯の屈折率が異なることが分かり、比重との直線的な相関がみられる。プラスチックの着色に関わらず、テラヘルツ帯の屈折率や透過率は素材だけに対応する。現在のリサイクル現場で使用されている近赤外光の反射率に基づく選別は、着色されているプラスチックには近赤外光が吸収されるため適用できないが、テラヘルツ光はその問題がない。 テラヘルツ帯の屈折率は、添加量の増加に伴い増加することをABS樹脂に対する臭素添加について確認している。現在のリサイクル現場で使用される近赤外や蛍光X線による測定法では添加剤に関する情報を得ることができず、テラヘルツ波の活用が期待される。3.2 機械変形による内部歪み ポリマーを構成する分子鎖は、そのゆらぎがテラヘルツ波のエネルギーと同程品質管理と検査・計測34コンバーテック 2021. 12Spotlight問い合わせ■tanabet@sic.shibaura-it.ac.jp3.テラヘルツで検出できること芝浦工業大学デザイン工学部 デザイン工学科教授 田邉 匡生1.はじめに 高周波エレクトロニクスの発展とともに、人類未到の電磁波領域であったテラヘルツ波の様々な光源・検出デバイスが現実のものとなってきた。情報通信以外のアプリケーションにテラヘルツ波を活用する社会実装(テラヘルツデザイン)の期待が高まっている。その1つとして、テラヘルツ波による廃棄プラスチックの素材分別や品質診断がある。 電波の透過性と光波の直進性を併せ持つテラヘルツ波は、非極性の構造物内部における「見えないもの」を観察できる。また、テラヘルツの周波数はプラスチックを構成する分子鎖間の振動数に相当するので、テラヘルツ帯の誘電率はプラスチックの素材だけでなく、ひずみや劣化にも敏感である。ここではプラスチックに対してテラヘルツ波で対象にできるものを、必要となるテラヘルツ装置と合わせて解説する。2.テラヘルツ波とは テラヘルツ波は、電波であると同時に光波の性質を併せ持つ、非常に高い周波数(スマートフォンや自動運転などで使う周波数の約1000倍高い周波数)の電磁波である。テラヘルツ波のエネルギーは室温程度(6 THz=300 K=約25 meV=200 cm−1=0.5 Kcal/mol)であ特集特集Spotlight■■■■■波■用■■■■■■■■材料■識別特集特集
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