ω3=ω1−ω2図5 広帯域にテラヘルツ波を発生する小型光源(独自開発)三井化学㈱およびマイクロ波化学㈱は、これまでリサイクルが難しかったポリプロピレンを主成分とする混合プラスチックであるASR(自動車シュレッダーダスト)や、バスタブや自動車部品などに使用されるSMC(熱硬化性シートモールディングコンパウンド)などの廃棄プラスチックを、マイクロ波化学の手がけるマイクロ波プラスチック分解技術「PlaWave」を用いて、直接原料モノマーにケミカルリサイクルする技術の実用化を目指した取り組みを開始した。両社は、2017年に次世代化学プロセス技術の共同開発を推進す20cm数分解能での測定を実現している。半導体レーザーには外部共振器型レーザ(ECLD)や分布帰還型レーザ(DFB)の組み合わせがある。発生するテラヘルツ波の強度は励起光のエネルギーに比例して増加するため、必要に応じて偏波面保持型イッテルビウム添加ファイバーアンプ(FA)を用いる。静岡大学の佐々木研究室において、ファイバーレーザを励起光源とする小型でメンテナンスフリーの実用的な光源が開発されている。 テラヘルツ波を広帯域・高出力に発生させるには絶縁性が高いGaPを非線形光学結晶とする。GaPは屈折率が等方的な結晶であるため、2波長を平行からわずかにずらすことにより(コリニア位相整合)、2波長の周波数差に相当するテラヘルツ波を発生させることができ、波長をテラヘルツ波検出器THzCPM2GratingFilterGaPCr:ForsteriteM2FilterGratingCr:ForsteriteM2WP3M1励起光源①ω1(近赤外レーザ)M1励起光源②ω2(近赤外レーザ)測装置は0.2 THzから10 THzを越える高周波数領域の測定に適用できるので、検査対象が広い。図5に示す独自に開発している光混合を発生原理とする小型光源は励起光である2つの近赤外レーザがなす角度と放物面鏡の位置をコンピュータにより制御し、集光されたテラヘルツ波を試料と検出器(焦電型検出器もしくはボロメータ)の方向に伝播できる。テラヘルツ帯には水蒸気の吸収線が多く存在するので試料室は通常乾燥空気によりパージする。周波数をスキャンするような場合は必要だが、吸収線から外した固定周波数での測定には不要である。 吸収ピークのわずかな周波数シフトを検出するには半導体レーザーを励起光源とするQ値の高いテラヘルツ波が有効であり、0.00006 cm−1(2 MHz)の周波掃引することにより発生周波数が連続的に変化する。一方、GaSeを用いると中赤外領域まで幅広くテラヘルツ波を発生でき、複屈折性を活用するコリニア位相整合であるためにテラヘルツ波発生の光学系を簡素化できる。いずれにしても、結晶中における自由キャリアやフォノン吸収によるテラヘルツ波の吸収を抑えることが高出力化に重要である。ストイキオメトリ(化学量論的組成)を制御する低温液相成長により半導体結晶中の格子欠陥や転位を抑えることができる。蒸気圧制御温度差液相成長法(TDM-CVP)によりストイキオメトリ制御のもとに低温で結晶成長したGaSe結晶のテラヘルツ帯域における吸収係数を制御しない場合と比較して半分程度まで減少でき、高出力のテラヘルツ波発生を実現する。るため戦略的提携を締結し、一部出資も含めて、強固な関係を構築しており、様々な化学プロセスへのマイクロ波技術の活用について検討を進めている。PlaWaveにより直接原料モノマーに分解することで、廃プラスチックをオイルに戻してからモノマー化する油化手法よりも、ワンステップ少なくプラスチックに戻せるため効率的であり、かつ将来的に分解プロセス用エネルギーに再生可能エネルギー由来の電気を使用することでCO2排出量削減にも貢献する。現在、初期検討を終え良好な結果を得たことから、21年度内にマイクロ波化学のベンチ設備での検証を行い、今後本格検討を進め、( 小林千咲希)早期に実証試験を開始する予定。 品質管理と検査・計測コンバーテック 2021. 1237Spotlight5.まとめ 電波の透過性と光波の直進性をあわせもつテラヘルツ波はプラスチックの素材や添加剤だけでなく、構造物内部に発生している空隙をはじめとする「内部にある見えない欠陥」を観察できる。テラヘルツの周波数はプラスチックを構成する分子鎖間の振動数に相当するので、テラヘルツ帯の誘電率はプラスチックの素材だけでなくひずみや劣化にも敏感である。テラヘルツ波による非破壊検査の展開が期待される。 マイクロ波技術で廃プラの ダイレクト・モノマー化特集特集
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