コンバーテック2021年12月号プレサービス
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×1500AGposs各種81※1  AGpossおよびhamon、hamon bandはミツフジ㈱の登録商標 コロナ禍で導入が進むテレワークでは、コミュニケーション不足による従業員のメンタル不調が問題となっており、対策として個人の健康状態を可視化するウェアラブルセンシングデバイス(以下、WSD)の活用が挙げられている。妊婦や介護者の健康サポートを目的に開発が進むなか、WSDに対する理解が浸透していないことから、国内での普及は進んでいない。ミツフジ㈱(京都府相楽郡精華町光台1-7、info@mitsufuji.co.jp、https://www.mitsufuji.co.jp/)は、独自開発した、銀めっき導電性繊維「AGposs」とウェアラブルIoTシステム「hamon」を組み合わせた着衣型WSDを製造販売している。今年5月からはhamonで培ったセンシングとアルゴリズム技術を内蔵したリストバンド型の「hamon band」※1を発売しており、WSD市場での存在を高めている。同社のAGposs責任者である三■■■寺秀幸氏と広報課長の蒲■■■生瑞木氏に、祖業である伝統織物業からWSD事業に展開した背景や、AGposs・hamonの概要、そして国内市場の展望に( 小林千咲希)ついて話を聞いた。 コンバーテック 2021. 12三寺秀幸氏AGposs(フィラメント)のSEM写真および現物通りの繊維業のままだと、国内では立ち行かなくなると考え、当時から帯電防止用途で使用されていた銅繊維に着目し、導電性ネットやテープ等の機能性繊維の販売を開始しました。90年代に、ある製品の開発をきっかけに銀めっき繊維に出合い、一般的な化学繊維から導電性繊維へ事業の軸足を一気に移しました。改良を重ねて完成したのが現在のAGpossです」。 AGposs(フィラメント)は、安定的に銀が定着しやすいナイロンを芯材とし、その表面に無電解めっきで純銀をコーティングしている。フィラメント以外にも、電極テープ、ミシン糸、綿とPETを混紡した紡績糸、フィラメントをカットしたステープル、0.3〜3mmのカット原料に銀めっきを施したカットファイバー等、多岐にわたる商品群をラインアップしている。 AGpossが持つ、導電性による電磁波シールドや静電気抑制の他、保温・清涼、抗菌・防臭といった特長を活かし、心臓ペースメーカー防護服(1999年)や宇宙飛行士の下着素材(2008年)に採用される等、幅広い応用製品への展開がスタートし、2020年にはAGpossを生地に織り込ミツフジ㈱西陣織からスタート、銀めっきとの出合い 1956年に西陣織の帯工場として京都で創業し、繊維製造や織物加工などを中心に手掛けてきた同社。着物産業衰退の影響を受け、79年に前身となる三ツ冨士繊維工業㈱を設立後、「AGposs」の開発に着手したのは、繊維業界における産業の空洞化という向かい風がきっかけだと三寺氏は振り返る。「1980年代初頭、大手アパレルメーカーの繊維部材の製造を担ってきましたが、国内の繊維工場の多くが次々と中国へ進出する一方、当社には海外に工場を建設できる程の資金がありませんでした。そこで今までウェアラブルセンシング導電性銀繊維とIoTシステムでウェアラブル織物産業からセンシング技術開発へ

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