ウェアラブルセンシング82コンバーテック 2021. 12100回洗えるhamon AGマスク(グレー)蒲生瑞木氏京都本社(けいはんなプラザ内)福島工場んだ高機能衛生マスク「hamon AGマスク」シリーズを発売している。※2 e-テキスタイル:センサーやマイクロチップを衣料品に組み込み、情報を集積・伝搬する機能を持たせ、着用者の状況を遠隔管理し、必要に応じて制御をする機能を有した繊維素材IT技術×導電性繊維の加工技術 2014年に3代目社長に三寺 歩氏が就任して以降は、AGpossの優れた導電性を活かした“電極や回路への応用”にフォーカスした戦略で次の事業展開を図っていく。「当時は、AGpossを大手繊維メーカーに販売することで、経営状況は少しずつ持ち直していましたが、時代の流れとともに抗菌剤をはじめとする各種機能素材が登場し、再び難しい時期に差し掛かっていました。それまで国内の大手電機メーカーや外資系のIT企業で働いていた現社長が会社を引き継ぐことになったのを機に、主力製品の研究開発に乗り出しました。長年培ってきた伝統ある繊維加工技術に、三寺が学んできたIT技術を掛け合わせ、着るだけで体の状態が分かるWSDを目指し、AGpossをe-テキスタイル※2として応用する戦略に舵を切り、2016年に自社初のIoTシステム『hamon』を発表しました」と蒲生氏は説明。 本格的にAGpossとhamonを用いたWSDの製造販売を進めるに当たり、同社はベンチャー型ウェアラブルIoT企業として2015年に社名をミツフジに変更。現在、本社を構える京都に研究開発を行うラボ、東京に支社、ウェア製造拠点となる自社工場を福島県川俣町に設置している。同町は絹の町として知られており、繊維産業の継続と震災・産業復興を目的として2018年に竣工した。従業員数は35名。洗濯200回をクリア AGposs(フィラメント)の抵抗値はデニール(d:糸の太さ)によって異なるが、標準の70dの場合、表面抵抗値は約250Ω/m。「通常、洗濯中の揉みや曝露で銀の耐久性は低くなりますが、AGpossは銀めっき層の厚みが0.1〜0.2μmと非常に薄膜でありながら、高い摩擦・洗濯耐久性を兼ね備えています。自社試験では洗濯を200回繰り返しても銀は剥離せず、電極・回路としての働きが損なわれないため、心拍波形の乱れが起きないことを確認しています。さらに銀めっき前のナイロンと同等の引張強度・伸度があり、伸縮性にも優れています。」(蒲生氏)。 今後の課題には、導電性能の維持と向上を挙げており、「純銀を使っている以上、大量の水分に曝されることで銀は酸化状態になり、変色や性能劣化が発生します。そのため表面に何かをコーティングする必要がありますが、フィルムを表面に貼り合わせた場合だと、電気抵抗値は上がり、服が硬くなったり熱で溶けたりする懸念があるほか、人体に対して皮膚アレルギーを起こす可能性もあります。安全性や一定の抵抗値を保ちながら、AGposs特有の糸の風合いが残るウェアになるように研究開発を進めています」(三寺氏)。 電極部分と体の擦れによって発生するノイズに関しては、三寺氏によると、糸だけの解決は難しく、電極を心臓部分からズレないように編立を工夫したり、着衣する人にとってジャストフィットするサイズを提供したりと、ソフト面を含めたトータルケアが必要だという。ミツフジでは、従来のS・M・Lのサイズ展開だけではなく、個々の顧客に合わせてサイズをカスタマイズできる取り組みも実施している。ホールガーメントで快適な着心地をプラス hamonは、電極となるAGpossを使ったデバイス端末、着脱式トランスミッター、情報を受け取るアプリ、アプリのデータを解析するアルゴリズム、クラウド上にデータを
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