コンバーテック2021年12月号プレサービス
81/136

図1 データ駆動型ステージゲートのイメージCopyright ©TECH CONSIGLIE Inc. All rights reserved.事業性収益性実現性売上要因顧客価値製品・サービス提供方法顧客との関係性課金方法参入タイミング競争優位性売上予測コスト要因売上実現トリガーキーリソースパートナー知財規制・標準規格コスト予測売上原価販売費・販管費データ項目対象市場・顧客テーマ選定ビジネスモデル企画ゲートプロト開発顧客検証初期販売ゲートゲート小規模生産ゲート現性」のカテゴリーに分け、それぞれ「売上要因」「売上予測」と「コスト要因」「コスト予測」に分解し、開発テーマのステージを移行する際に審査の対象とするデータ項目を設定するところから始める。テーマ選定後の事業化までのステージは、大まかに「ビジネスモデル企画」「プロト開発・顧客検証」「初期販売」「小規模生産」の4段階程度に設定することが多いだろう。もちろん、自社が取り組む研究開発の特性に応じて、ゲートの数や順番、間隔などを適宜アレンジする必要がある。次いで各ステージで、全データ項目のうちどこまでをカバーするか、どのレベルまでのデータ解像度を求めるのか、どのようなソースからデータを取得するのか、審査基準をどう設定するかなどを検討し、運用ルールをデザインする。 ただし運用ルールによっては、チャレンジングなテーマを推進しにくくなる弊害が生じることもあるため、注意が必要だ。読者の中にも、ステージゲートで厳格に締めすぎて、事業化の成果が減少してしまったという話を聞いたことがある方も多いのではないだろうか。データは高精度・高鮮度である必要があるが、審査基準等の運用ルールは無理のない設計にしておかないと、元も子もなくなってしまう。 データ駆動型研究開発活動でも、前回ご紹介した「データ駆動型アイデア創発活動」と同様に、会議体の設計が重要だ。ステージにもよるが、全社戦略との整合性や収益性の評価を行う本社のほか、事業戦略との整合性や製品企画の検討と顧客価値の評価を行う事業部、そしてリソース評価や試作を行う研究所などの複数部門からオンラインで参加し、各関係者が同じデータを見ながら、的確にGo/Stop判断に参画できる仕組みが欠かせない。ステージゲート会議の設計も、どのような立場の人を審査員として据えるか、定性的に判断せざるを得ない部分をどう評価するか等の論点を十分に関係者間で協議し、効果的に会議を運営することが求められる。筆者のようなコンサルタントによるファシリテートが活きる分野である(図2)。 最後に、データ駆動型研究開発活動の一部を成すマテリアルズ・インフォマティクス(Materials Informatics:MI)についても触れておきたい。MIは、素材開発サイクルにおける設計工程を「データの収集→整理→分析」に分解し、このプロセスをデジタル化することで、サイクルの回数を最小限に抑え、開発を迅速化する手法である。MIについて解説した書籍やシステム開発事業者のHPでは様々な論説があり、明確な定義が定まらないきらいもあるが、一般には機械学習やシミュレーションを用いた分析のみを意味するようだ。テックコンシリエが目指すMIは、データ駆動型研究開発の文化を根付かせ、自ら持続的成長ができるようになることを目的とし、データ収集から整理までを担うデータベース構築までを含む。また、さらなる競争力を生むた104コンバーテック 2021. 12データに基づく収益性・実現性の見える化と迅速で精度の高い判断の仕組みを構築判断基準の設定による

元のページ  ../index.html#81

このブックを見る