コンバーテック2021年12月号プレサービス
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中中500中中 ……………………………………………(2)表1 ディスプレイの比較(筆者作成)ディスプレイTFT-LCDBLU/LCDメカニズムコントラスト比(暗室)5000:1応答時間(On/Off)ms動作温度(℃)消費電力視野角解像度(ppi)寿命価格−40〜100ー30〜85高中>800長低OLEDMicro LED自発光∞μs自発光∞nsー100〜120低広>2000長高は、1フレームの間、同じ位置に表示され、フレーム単位でコマ送りのように移動する様子を表している。 一方、人間の目は、実際の物が動いているかのように白い部分を追いかけるので、視点は赤線で示したように左から右へとスムーズに移動する。図の右は、左の図に対して横軸を網膜上の水平位置に置き換えて表示したものである。このように、ホールド型ディスプレイデバイスに表示された動画では、目が動画を追従しても、網膜上では左右に揺れているため、この左右の揺れが動画ぼやけとして見えるのである。MPRT〜 τ2+(0.8Tf)2 …………………………………(1) ここで、τはLC/OLEDのOn/Off応答時間でTfはフレーム時間である。前述の3つのディスプレイのMPRTを比較するために、フレームレートが120Hzを例として取り上げた結果が報告されている3)。論文によると、LC応答時間が2ms未満である限り、TFT-LCDのMPRTはOLEDおよびMicro LEDディスプレイのMPRTとほぼ同じである。MPRTがどれくらいの速さで十分であるかは、理想的には1ms(CRTのような)だが、2msは最低限許容される。T=60×n×mで表される。したがって、TFTには選択時間T内に、液晶容量CLCおよび蓄積容量CSを所定の電位に充電する能力が求められる。式から、高解像度化、ハイフレームレート化に伴ってTFTの選択時間Tが短縮される。 一方、TFTによる画素充電に必要な時定数τ(s)は、液晶容量CLC(F)、蓄積容量CS(F)、TFTのON抵抗RTFT(Ω)を用いて、 τ=RTFT×(CLC+CS) …………………………………(3)で表され、大面積化、すなわち画素容量(CLC+CS)の増加1108コンバーテック 2021. 122.5 動画応答時間(MPRT) 表1に実用化されているTFT-LCD,OLEDおよびMicro LEDの比較を示す。最近話題のMicro LEDはOLEDと同様に自発光ディスプレイで、コントラスト比が大きく、応答時間は短く、しかも動作温度範囲が広いのが特徴である。この表に示したコントラスト比は暗室での測定値で実使用の場合は周囲光下での値(Ambient Contrast Ratio:ACR)である。ACRの詳細は2022年1月号に掲載予定。 表からTFT-LCDの応答時間(ms)はOLED(μs)やMicro LEDディスプレイ(ns)よりもはるかに遅いが、TFT-LCDがより深刻な動画ぼやけを被るとは言えない。TFT-LCDとOLEDは、前述のようにどちらもホールドタイプなので画像のぼやけは発生する。TFT-LCDまたはOLEDの応答時間だけでは、真の動画ぼやけを表すことはできない。MPRTは、網膜上で知覚される明るさの反応を説明することができる。 これは、動く物体の視覚は、表示材料の応答時間(静止画像のOn/Off)だけでなく、TFT駆動の場合フレームレートにも依存する。広く受け入れられているMPRTは、Pengらによって提案された簡略化された方程式によって計算することができる。ピクセル応答時間(τ)とフレームレート(f=1/Tf)によって定義されている2)。3.表示容量とTFT特性 薄膜トランジスタが電子デバイスとして初めて実用化されたのは、a-Si TFTとLCDの特徴を上手く活かしたa-Si TFT-LCDである。当初は、3型の小型ディスプレイからは始まった商品化は、現在では100型を超えるものが商品化されている。ディスプレイの大面積化と相まって、高精細化への需要が高まっている。TFT-LCDの応答特性を改善するために、フレームレートが従来の倍速(120Hz)駆動のデバイスが商品化され、ビデオゲーム対応のディスプレイではさらに高速な4倍速(240Hz)や6倍速(360Hz)が実用化されている。 小型ディスプレイから大型ディスプレイに至るまで、基本的なデバイス構造およびプロセスを順守できるデバイスは、数あるフラットディスプレイ中a-Si TFT-LCDのみである。 しかし、さらなる高精細化および高フレームレート対応には、現状のa-Si TFTは限界まできている。高精細化の動向として、デジタルシネマ4K×2K(4096×2160)やスーパーハイビジョン(8K×4K)には、a-Si TFTのスイッチング特性では対応できない。TFTのスイッチング速度は、移動度に逆比例するため、高精細化、ハイフレーム駆動を実現するにはa-Si TFTの移動度の1桁以上の移動度を有するTFTが求められる4)。 FPD駆動方式で述べたように線順次駆動の場合、TFTの選択時間T(s)は、走査線数n,60Hzを基準としたフレーム周波数比mとすると

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