材料材料②条件出しに手間がかかる RTR生産の場合、製造に先立って、条件出しを行う項目が多く、その際に消費する材料も多くなりがちである。量産開始に当たって、いかに条件出しを簡単に済ませるかが、実用上の■になる。下手をすると、実際の生産にかける時間や材料よりも、条件出しの手間や材料の方が多くなってしまう事態にもなりかねない。③設計変更に手間がかかる 現代の民生用エレクトロニクス業界では、市場の動きが激しく、短期間での設計変更が多くなっている。また、量産となる製品でも、単一の設計で済むことは少なく、市場の要求により、いくつものバージョンを用意しなければならない。設計変更には、フォトマスクや金型などの治工具の変更を伴うが、RTRシステムの場合はその費用が大きくなりがちである。④複雑な構造に対応できない 現在、RTR生産が実用的なレベルで使えるようになっているフレキシブル基板は、片面構成回路と、両面構成回路材料材料製品図7 フレキシブル・エレクトロニクス生産のプロセスフロー。 実際には魚の骨のように複雑になる どこにでも、常識に立てつく変人はいるもので、あるフレキシブル基板メーカーでは、両面スルーホール構造の回路をRTRプロセスで量産することを目指した。両面スルーホール構造をRTR生産するのに問題となるのは、ドリリング(穴あけ)という、もっともRTR化しにくい工程が、始めの方に位置していることである。それゆえに、多くのメーカーは、両面スルーホール構造をRTRで生産することを試みさえしなかった。 ところが、ある大手フレキシブル基板メーカーは、片面回路のRTR生産に関してかなりの実績があったために、両面回路を何とかRTRで処理できないものかと苦慮していた。苦肉の策として思い至ったのが、前工程をカットシートで処理し、その後の工程でカットシートを粘着テープで繋ぎ合わせて長いロール状にし、RTRのフォトリソグラフィ/エッチングラインに投入したのである。 残念ながら、この試みは無惨な結果に終わってしまった。とにかく、手で貼り合わせて作ったロールであるから、均一にはならず、搬送途中で傷がついたり、シワが入ったりしてしまうのである。そのような不均一な材料をRTRで処理すること自体が間違っていたと言わざるを得ない。フィージビリティスタディでもやってみれば容易に分かることであるが、RTRシステムを構築するに当たっては、できるだけ具体的にモデルを作ってみることが大切である。フレキシブル・エレクトロニクスとRTR生産コラム 少々強引なRTR生産てはめれば出来上がるような代物ではない。RTRシステムによる生産(RTR生産)とは、むしろゴールともいうべきもので、メーカーとしては、そのゴールに■り着くべく、多くの工夫を積み重ねていくものなのである。これまでに、多くのエンジニアが、完全なRTRシステムの構築を試み、最初の設計では挫折を経験しているという現実をみるべきである。実際に稼働しているRTRラインの多くは、3ステップ以下のタンデムラインで、前工程だけの適用に限られている。3.RTR生産の長所と短所(課題) RTR生産の最大の特徴は、何といっても自動運転による省力化で、最終的には大幅なコストダウンが期待されることである。一方で、実際の生産には次のような短所(課題)がある。RTRシステムを構築するに当たっては、これらの問題をどのように取り扱うか、対応策を用意しておかなければならない。①多品種少量生産に対応しにくい RTR生産の強みが挙げられるのは、少ない品種で、生産量が大きくなる場合である。言い換えれば、多品種少量生産には向いていないことになる。近年、民生用エレクトロニクス製品は、多品種少量生産の方向に向かっており、RTR生産にとっては不得意なケースが多くなっていることになる。この問題を克服するためには、多品種少量生産に対応できるRTRシステムの構築が必要になる。特に、RTRラインでの品種の切り替えは、時間が長くなりがちなので、いかに品種切り替えを短時間でこなせるかが、多品種少量生産向けRTRシステムを成功させる■になってくる。コンバーテック 2021. 12113
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