ところで、産業用カメラの重要なスペックで、グローバルシャッター(GS)とローリングシャッター(RS)がある。RSとは、イメージセンサのピクセルの上の行から順番に露光を行い、電荷に変換された電子を上の行から順番に読み出すシャッター方式を言う。すなわち、1枚の画像の上部と下部では撮影タイミングが異なっている。1枚の画像の上部と下部で撮影タイミングが異なると、動いている撮影対象物は像が歪んでしまう。 GSのカメラの場合、イメージセンサの露光と読み出しはすべてのピクセルが同じタイミングで行う。すなわち、1枚の画像の上部も下部の撮影のタイミングは同じなので、動いている撮影対象物を瞬間的に捉えてもRSのように歪んでしまうことはない。 一般的な裏面照射型CMOSセンサでは、高解像と幅広いダイナミックレンジを実現するとGSを搭載できず、GSを搭載すると解像度とダイナミックレンジが低下するというトレードオフが課題になっている。 有機CMOSセンサは、8Kレベルの高解像を備えつつ、ダイナミックレンジを一般的なCMOSセンサの4倍とし、GSも有機薄図1 イメージセンサの構造比較(展示ブースで許可を得て筆者撮影)116コンバーテック 2021. 12Ukai Display Device Institute(UDDI)鵜飼 育弘問い合わせ■ yasuhiro.ukai@spice.ocn.ne.jp1.はじめに 第4回 4K・8K映像技術展(2021年10月27〜29日、於:幕張メッセ)において、パナソニック㈱は、開発中の有機CMOSセンサを展示するとともに、同センサを用いて試作した8Kカメラで撮影した映像をリアルタイムで見せるデモンストレーションを披露した。この技術は、半導体技術の国際学会「ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)2016」で発表されたもので、その後の技術進展を伺うことができた。2.有機CMOSイメージセンサ 図1に裏面照射型(BSI:Back Side Illumination)イメージセンサと有機イメージセンサの構造および特徴比較を示す。裏面照射型CMOSセンサは、撮像対象がある光の入射方向からみて、マイクロレンズ、カラーフィルタ、受光部以外の部分に光が入らないようにする金属シールド(遮光膜)、受光部となるシリコンフォトダイオード(Si PD)、半導体回路となる金属配線の順番に構成されている。 裏面照射型CMOSセンサが登場する以前の表面照射型CMOSセンサは、Si PDよりも金属配線が上層にあった。受光部であるSi PDが金属配線による影響なしに光を効率よく取り込めることから、裏面照射型CMOSセンサの需要は拡大している。デジタルカメラやスマートフォンのカメラでは既に裏面照射型CMOSセンサが主流であり、現在は監視カメラなどの産業用途、自動車の運転支援システムなど車載用途にも採用されている。第4回 4K・8K映像技術展報告(1)8K有機CMOSセンサExhibitionReport
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