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2025/6/18

【放熱素材】名古屋大学発U-MAP、「Thermalnite」の量産開始

 U-MAPは同社が開発した高熱伝導性繊維状セラミックス「Thermalnite」の量産体制を確立した。Thermalniteは、既存技術の限界を打ち破る放熱性能を実証しており、名古屋大学発の研究開発スタートアップとして、現代産業が直面する「熱問題」に対する革新的な解決策を提供する。

左:Thermalnite(ファイバー状窒化アルミニウム単結晶)写真、右:Thermalnite SEM像

エレクトロニクス熱問題への挑戦:新素材「Thermalnite」が限界を超える特性を実証

 産業課題の中でも、エレクトロニクスの「発熱」は根深い制約の1つ。エレクトロニクスの高性能化やEVの普及が進む現代において、熱設計は製品の信頼性、寿命、さらにはエネルギー効率に直結する重要な要素となっている。
 これまで、高熱伝導性の電子材料を実現するには「強度」「軽さ」「加工性」といった性能の両立が難しく、トレードオフの中で妥協する必要があった。
 Thermalniteは、わずかな添加量で極めて高い熱伝導性を発揮しながら、複合材料全体の強度まで同時に引き上げるなど、様々な性能の向上を実証した。
・従来の電子材料にThermalniteを10%添加することで、熱伝導率が10倍に向上。軽量・柔軟かつ高熱伝導を両立する。
・従来品に数%添加することで、機械強度を4倍に向上。10W/mKを超える熱伝導率でも、液体やペースト状だけでなく、特定の形状を形成することが可能。
・射出成形などの成形方法を用いた構造設計にも新たな可能性をもたらす。
 Thermalniteは、様々なフィラー材料・樹脂材料との組み合わせが可能。単なる放熱性能向上にとどまらず、多機能の実現やプロセス改善など、「設計の自由度を高める」という新しい視点で、製品開発の可能性を広げる。

左:Thermalniteの添加量における複合樹脂の熱伝導率、右:市販品との引張強度比較

いよいよ量産開始:新素材が実用化を加速

 技術としての効果検証と並行し、新素材における懸念点であった「量産性」と「安定供給」についても段階的に準備を進めてきた。

 現在、大型合成炉を用いたThermalniteの生産プロセスを確立し、プレ量産フェーズへの移行を完了しました。これにより、まずは年間数百kg規模のThermalnite生産を開始し、初期の市場ニーズに対応可能な安定供給体制を確立した。今後はさらなる増産も計画しており、今後の需要拡大に迅速に対応していく。

次世代エレクトロニクスを牽引する新たなソリューションマテリアルへ

 Thermalniteは、EVバッテリー、次世代通信(5G/6G)、パワー半導体、データセンターといった将来性の高い領域において、不可欠な熱対策材料としての役割が期待されている。すでに国内および海外の複数企業で採用検討や応用研究が始まっており、技術連携や評価導入の動きも進行中。

 U-MAPは、Thermalniteの材料単体にとどまらず、以下の周辺技術と実装ノウハウを構築し、企業の課題や目的に応じた柔軟な連携を行っている。

 ・独自のハイブリッドフィラー合成技術

 ・用途に応じたコンパウンドプロセスや材料設計支援

 ・精密な物性評価や実装シミュレーション

 熱課題解決や革新的な製品開発に向けた共同研究や技術提携を通じた企業とのコラボレーションを今後も加速させていく。

Thermalniteの適用が期待される製品(例)

Goal 2030:世界をリードし、持続可能な社会を共創

 U-MAPは、今回の量産開始を足がかりに、「Goal 2030」として掲げるThermalniteのグローバルなキーマテリアル化を目指し、エネルギー効率の最大化を通じて持続可能な社会の実現に貢献していく。

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