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2024/1/30

【カーボンニュートラル】新潟大学/東京大学/信州大学/コロラド大学ボルダー校、NEDO事業で新反応性物質による炭酸ガス熱分解に成功。太陽集熱による炭酸ガス分解技術でソーラー燃料の低コスト化へ道

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が助成する「炭酸ガス分解用ソーラー集熱反応器の国際共同研究開発」の一環で、新潟大学、東京大学 生産技術研究所、信州大学、コロラド大学ボルダー校は、太陽集熱による炭酸ガス分解に新反応性物質を使用する技術を開発した。
 これは反応性物質として酸素を吸蔵・放出する特性を持つセリア(CeO2)および新たにヘルシナイト(FeAl2O4)を用いて独自技術でフォームデバイス(多数の空隙を有する発泡体)を高温焼成し、太陽光を集光して照射することで酸化還元反応を起こし、炭酸ガスを酸素と一酸化炭素に分離することに成功したもの。
 なお、1600℃以上の高温域を含む広範な条件下においてセリアで熱分解したことや、フォームデバイスによるヘルシナイトで熱分解に成功したことは、いずれも世界初。今回の技術により、高効率な炭酸ガス分解のめどが立ったことから、ソーラー燃料(太陽エネルギーを由来とする燃料)製造の低コスト化への応用が期待される。
熱分解プロセスの概要と反応性フォームデバイスに関する画像








図1 熱分解プロセスの概要(左)と反応性フォームデバイス(右)

背景

 2050年カーボンニュートラル実現に向けて、近年国内外で工場などから排出される炭酸ガスの分離・貯蔵(CCS)が広く行われるなど、炭酸ガスの利用方法についても研究が活発化している。
 現状では、太陽光を使った炭酸ガス利用は太陽光発電に基づく水電解で水素を製造し、この水素を炭酸ガスと反応させてメタン合成をするメタネーションが有望とされているが、まだ実用化には至っていない。電気を使わず、太陽の熱によって安価に炭酸ガスを分解して燃料を製造する方法が求められる中、新潟大学、東京大学、信州大学、コロラド大学ボルダー校(米国コロラド州)は、今回の事業※1で実験とシミュレーションによる要素研究と、社会実装に向けた課題やロードマップの整理に取り組んできた(図1)。

今回の成果
 新潟大学とコロラド大学ボルダー校は、キセノンランプによる集光を用いた室内実験(図2)と、米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が保有する太陽炉を用いた実験(図3)によって、反応性物質としてセリア、ヘルシナイトのフォームデバイスを利用し、炭酸ガスを酸素と一酸化炭素に分離することに成功した。図4は実験結果の一例であり、反応器内の温度と濃度の変化を表す。実験では、まず高温にした反応器内にアルゴン(Ar)を流し込み、反応性物質から酸素を取り除く。その後、反応器内の温度を下げて炭酸ガスを流し込み、酸素を失った反応性物質によって炭酸ガスを還元し、一酸化炭素を発生させる。これらのステップを繰り返すことで炭酸ガスを酸素と一酸化炭素に分離することに成功した。このような集熱反応実験と、ミクロ熱流動解析(東京大学)、マクロ集熱反応器解析(新潟大学)、システム解析(信州大学)を実施し、結果を相互に比較することで実際のプラントシステムの性能を高精度で予測することが可能となった。このシミュレーション技術を用いてプラントの解析を実施し、太陽光から合成燃料までの総合変換効率をセリアについて10%以上(過去の実績値※2の2倍以上)に向上できる見通し。また、ヘルシナイトについてはセリアの2倍以上の反応活性を示すことを実験的に明らかにし、新しい反応物質として将来性が高いことを確認した。
 なお、1600℃以上の高温域を含む広範な条件下でのセリアによる熱分解や、フォームデバイスによるヘルシナイト熱分解に成功したことは、いずれも世界で初めてとなる。本技術により、高温域でセリアが非常に良好な反応性が示され、セリアによる高効率プラントの概念設計を完成することができた。一方で、ヘルシナイトはより低温で高い反応性を有することが明らかになった。セリアの原料であるセリウムがレアアースであるためコストが高くなることに対して、ヘルシナイトは安価な鉄とアルミニウムから製造できるため製造コストを劇的に下げることができると考えられる。高効率な炭酸ガス分解のめどが立ったことから、ソーラー燃料製造の低コスト化への応用が期待される。
室内実験装置の画像







図2 室内実験装置
太陽炉実験の写真






図3 太陽炉実験の様子
実験結果のグラフ画像








図4 実験結果の例

今後の予定

 本事業終了後、新潟大学、東京大学、信州大学は、実証プラントの建設や反応物質、フォームデバイス単独での実用化、集光系および集熱系の実用化など、多方向に展開し、カーボンニュートラルの実現に貢献していく計画。なお、本開発の成果は2024年1月31日~2月2日まで東京ビッグサイトで開催される「ENEX2024」のNEDOブースで展示する。
<注釈>
※1 今回の事業
 事業名:炭酸ガス分解用ソーラー集熱反応器の国際共同研究開発
 事業期間:2020年度~2023年度
 事業概要:クリーンエネルギー分野における革新的技術の国際共同研究開発事業
※2 過去の実績値
 2023年12月以前に報告された太陽光から合成燃料までの総合変換効率(新潟大学調べ)。

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