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2024/12/17

【コンデンサ用フィルム】東レ、150℃耐熱を有する高耐電圧タイプを創出。SiC半導体搭載インバータの小型化・軽量化に貢献

 東レは、このたび、150℃で動作可能な高耐熱性を有する高耐電圧コンデンサ用フィルムを創出した。同フィルムは、小型・高信頼性の耐熱コンデンサの実用化を加速させ、炭化ケイ素(SiC)パワー半導体*1搭載インバータの冷却機構簡略化による小型化・軽量化に貢献する。今後、同フィルムのサンプルワークと量産化に向けた検討を進めていく。
 脱炭素社会実現のため、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)などの電動モビリティの普及が推進されている。電動モビリティはいずれもモーターで駆動するが、その制御回路(インバータ)の動作を安定化する主要部品がフィルムコンデンサ。車載用フィルムコンデンサには、薄膜化による小型化、電力負荷を低減するための低損失、耐電圧に代表される高い信頼性などの優れた特性からポリプロピレン(PP)フィルムコンデンサが使用されており、東レは車載コンデンサ用PPフィルムで世界トップシェア。
 近年、車載インバータではエネルギーロスが小さく高温駆動が可能なSiCパワー半導体の採用が始まっており、小型化・軽量化に向けて、半導体の冷却機構の簡素化が検討されている。この動きの中で、周辺部品も150℃耐熱設計としてインバータ機構全体を超小型化・軽量化する検討が進められている。例えば、将来拡大が期待される空飛ぶクルマでは冷却を水冷から空冷とすることで大幅に軽量化することが期待される。
 しかし、現状のPPフィルムコンデンサでは、耐熱性向上には限界があり、150℃の耐熱性確保は困難。また、一般的な耐熱性フィルムには、信頼性を確保するためのセルフヒール性*2が不十分という課題があった。
 東レは、独自のポリマー設計技術と二軸延伸技術により、高温での高い耐電圧を有するフィルム基材層を設計し、さらに本基材層に独自設計の高セルフヒール層を薄膜積層することで、信頼性を高めた。これらにより150℃耐熱を有する高耐電圧コンデンサ用フィルムを実現した。同フィルムを用いたコンデンサ性能の実証に向けて、名古屋大学未来材料・システム研究所の山本真義教授と共同で、車載インバータの実駆動環境でのコンデンサ評価系を新たに構築し、150℃での動作を確認している。
 このフィルムを用いた150℃耐熱フィルムコンデンサは、信頼性を有しながら耐熱温度を高められることから、SiC半導体搭載インバータの小型化・軽量化を可能とし、これによりEV、船舶、空飛ぶクルマなどの電動モビリティや産業機械の低電費化を実現し、脱炭素社会実現や物流効率化といった社会課題の解決に貢献する。
 このフィルム開発はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成を受けて、実用化に向けた研究開発を進めている。なお、同フィルムは2025年1月29日~1月31日に東京ビッグサイトで開催される、ナノテクノロジーに関する世界最大級の国際総合展示会、nano tech 2025に出展予定。
*1 SiCパワー半導体
 現行のシリコン(Si)半導体と比べ、エネルギーロスが小さく、高周波駆動が可能、かつ高耐熱で高温動作が可能という特徴を有す。
*2 セルフヒール性
 フィルムコンデンサに過電圧が印加され、絶縁破壊が発生した際に、静電容量が減少しながらもショート破壊しないで絶縁性が回復する特性で、フィルムコンデンサに固有の特性。

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