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2024/4/5

【ハイエントロピー合金】ユニチカ、世界最高レベルの高表面積を有する合成技術の開発に成功

 ユニチカは、世界最高レベルの非常に高い比表面積を有するハイエントロピー合金を合成する技術を開発した。この技術は、様々な組成のハイエントロピー合金に応用できるため、次世代エネルギーとして期待される水素利用を促進する高性能な水素生成電極や燃料電池用電極触媒などの創出が期待される。

開発の背景
 ハイエントロピー合金とは5種類以上の元素が同程度含まれる主成分を持たない多元系合金。近年、ハイエントロピー合金は、新しい金属材料として注目されており、これまでの研究によって、(ⅰ)不規則な固溶体相の安定化(ⅱ)不均一に歪んだ結晶格子(ⅲ)遅い原子拡散(ⅳ)カクテル効果の特徴を持つと考えられている[1]。中でも(ⅳ)カクテル効果は、単純混合則では説明できない物性発現をもたらし、従来の二元系や三元系の合金には見られない特性が数多く報告されている。また、ハイエントロピー合金の中には、触媒として、活性と耐久性を飛躍的に向上させるものも発見されており、次世代エネルギーの利用を促進する材料として期待されている。

高表面積ハイエントロピー合金の特長
 ユニチカが開発した合成技術により、1gでテニスコートの約260m²を超える面積のハイエントロピー合金の粉末が得られているす(BET吸着法にて測定した比表面積の例:CrFeCoNiCu=262m²/g、CrFeCoNiZrLa=314m²/g)。これは、これまでの多孔型の高表面積ハイエントロピー合金と比較して飛躍的に表面積を拡大させた世界に類を見ないものである。表面積の拡大は、不均一触媒等の材料界面で効果が発現する用途において、その触媒効果を格段に向上させることが期待できる。例えば、同社の合成技術で作製した高表面積ハイエントロピー合金の触媒は、従来型ハイエントロピー合金[2]と比較しても約9倍の反応速度の向上が得られている。
 本技術は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、白金(Pt)、金(Au)などの様々な金属を組み合わせた高表面積ハイエントロピー合金の合成に適用でき、特許出願済み。これらは、水素生成、水素添加、アンモニア生成などの反応触媒や燃料電池の電極触媒において、触媒効率や高温強度、耐酸強度の向上、白金等の貴金属の使用量抑制が期待できる。

今後の予定
 同社が開発した高表面積ハイエントロピー合金の合成技術は、様々な組成、用途に応用が可能。今後、貴金属も含めた各種触媒等の用途に最適な組成検討や各効果の実証を進めながら、実用化に向けた研究開発を進める。

※触媒性を評価するためのモデル実験として、p-ニトロフェノールの還元反応を実施した。
[1] K. Li, W. Chen, Mater. Today Energy 2021, 20, 100638.
[2] H. Peng, Y. Xie, Z. Xie, Y. Wu, W. Zhu, S. Liang, L. Wang, J. Mater. Chem. A 2020, 8, 18318-18326

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