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2024/6/3

【バイオエコノミー】NEDOとGEI、関東圏バイオファウンドリ拠点でバイオ生産のスケールアップ検討期間を従来の約6分の1へ短縮

NEDOGreen Earth Institute(GEI)は、「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」で、千葉県茂原市に完成させた「関東圏バイオファウンドリ拠点」の機能検証を進めている。本拠点が保有する実験計画法のノウハウやスケールダウンモデルとCFD解析などを用いた生産システムにより、従来は3年程度かかると考えられていた案件について、スケールアップ検討期間を約6分の1の半年程度で完了させることに成功した。
 今後は、幅広い分野で、微生物を活用した物質生産システムによるバイオエコノミー拡大を目指し、実証実績のある大腸菌や酵母に加え、糸状菌などの他の微生物種をはじめ、さまざまな生産物質での実証経験を増やしていく。
 なお、2025年度の実証スケジュールを計画するため、6月1日~30日までの期間で本拠点での実証案件募集を行っている。
背景
 バイオによるものづくりは、化学プロセスと比較して省エネルギーでの物質生産が可能であるとともに、原料を化石資源に依存しないバイオマスからの物質生産も可能であり、炭素循環型社会実現、持続的経済成長に資するものづくりへの変革が期待できる。しかし、バイオによるものづくりの実用化には、スケールアップ段階での時間やコストに加え、人材の確保に課題がある。
 このような背景の下、NEDOは本事業※1の中で微生物を活用した物質生産のスケールアップ検討や試作を行えるバイオファウンドリ拠点の整備に取り組んでいる。その一環として、GEIが千葉県茂原市に最大3000Lの発酵槽を備える本拠点を完成※2させた。
スケールアップ実証の概要
(1)概要
 本拠点は、0.25Lから最大3000Lの発酵槽を用いたスケールアップ検討を行える。段階的なスケールアップにかかる時間とコストを大幅に削減するため、実験計画法のノウハウや発酵槽内の状況をシミュレーションするCFD解析※3などを用い、スケールダウンモデルでの生産システムや新規の前処理方法、簡易的かつ適時に実施可能なコストやCO2排出量を算出するシステムの技術開発に取り組んでおり、実証事例として採用する案件にはこれらの技術を適用してスケールアップを行う。
 2023年6月に新規設備を本格稼働し、本事業終了の2026年度まで実施計画に沿って微生物機能を活用した物質生産実証に取り組んでおり、2023年度は4件の事例でスケールアップ検討を行った。アミノ酸、ペプチド、油脂、酵素など異なる化学品を生産対象としているだけでなく、原料も複数事例を扱い、生産実証の実績を着実に積み上げている。扱った実証の中には、本拠点が保有するスケールダウンモデルとCFD解析などを用いた生産システムによって、従来、3年程度かかると考えられていた検討期間を約6分の1となる半年程度で完了させ、さらなる開発ステップへと進めることに成功した事例がある。

スケールダウンモデルとCFD解析を用いた生産システムの概念図

(2)実証実績のある微生物・生産対象物質・原料分類例
 微生物:大腸菌、酵母
 生産対象物質:アミノ酸、ペプチド、油脂、酵素
 原料分類:糖類、アミノ酸、グルコース、木質系バイオマス
今後の予定
 NEDOとGEIは、2021年度~23年度で本拠点に前処理、培養、分析、精製設備を導入した。バイオマス残渣などで発酵用の原料をつくる「前処理」から「精製」「サンプル作成」まで一連の生産工程から目的に応じたメニューを提供できる拠点へと、今後も機能を拡張していく予定。
 今後は、幅広い分野で、微生物を活用した物質生産システムによるバイオエコノミー拡大に貢献することを目指し、実証実績のある大腸菌や酵母に加え、糸状菌などの他の微生物種を扱うことや、さまざまな生産物質での実証経験を増やしていく。
 なお、2025年度の実証スケジュールを計画するため、バイオ生産実証の実施希望者を対象に、6月1日~30日までの期間で、本拠点での実証案件を公募ページにて募集する。
※1 本事業
 事業名:カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発/生産プロセスのバイオファウンドリ基盤技術開発
 事業期間:2020年度~2026年度(「生産プロセスのバイオファウンドリ基盤技術開発」は2021年度~2026年度)
 事業概要:カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発  
※2 千葉県茂原市に最大3000Lの発酵槽を備える本拠点を完成
 (参考)NEDOリリース(2023年6月2日公開)「NEDOバイオファウンドリ拠点が完成、本格始動
※3 CFD解析:Computational Fluid Dynamics(数値流体力学)解析
 流体に関する運動方程式をコンピューターで解く数値流体力学により、空気の流れや温度の分布状況の可視化を行う数値解析、シミュレーション手法

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