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2024/12/18

【バナジウム事業】出光興産、豪州のVecco社へ過半出資、クリティカルミネラル事業へ本格進出。再エネの利便性を高めるバナジウム・フロー電池のサプライチェーン構築を主導

　出光興産は、再生可能エネルギー導入拡大に必要な鉱物を含むクリティカルミネラル事業への参入と知見獲得を目指し、2022年からVecco社に出資を行ってきた。今回、同事業の長期的な成長と今後の収益拡大を見込み、同社への過半出資を決定した。これにより、出光興産の同社に対する出資総額は7500万豪ドルとなる。
　最新のIEA世界エネルギー見通し（IEA World Energy Outlook 2024）では、各国の脱炭素目標に沿って、世界の電力需要は過去10年の成長率に比べ、2035年までに6倍の速さで増加すると報告されている。再生可能エネルギーによる発電が約半分を担うと予測されており、脱炭素化と安定した電力システム実現の両立のため、送電網や電力貯蔵システムへの投資が不可欠とされている。 また、COP28で掲げられた1.5℃目標実現のためには、再生可能エネルギーによる発電容量を2030年までに3倍にする必要があり、1500GWの電力貯蔵容量を確保することが不可欠であるとされている。日本においても、次期エネルギー基本計画の策定議論の中で、再生可能エネルギーの主力電源化と、気象等による出力変動対応のための蓄電システムの必要性について議論がなされている。
　今後、導入拡大が必要になる蓄電システムの中でも、バナジウムを原料とするバナジウム・フロー電池（VFB）は、エネルギーをバナジウム電解液に蓄える仕組みの蓄電池であり、電池容量の拡大（大型化）が容易、劣化しにくく長寿命、発火リスクがないといった電力系統用の蓄電池に適した特性を有している。出力を天候に左右されやすい太陽光をはじめとした再生可能エネルギー電源と組み合わせることで、利便性を高めることが期待されている｡
　Vecco社は、豪州クイーンズランド州でバナジウム鉱山とVFB用電解液プラントに関するプロジェクト（プロジェクト名：Debella Project）を進めている。同プロジェクトでは、バナジウムを含む鉱石の採掘・五酸化バナジウムの精製・VFB用のバナジウム電解液の製造を行う地産地消型かつ競争力のあるサプライチェーン構築を目指している。その一環として、同社は豪州初となる商業規模のバナジウム電解液製造施設（生産能力：約35MWh／年）の稼働を2023年6月に開始した。 今後は、自社鉱山からの五酸化バナジウム精製に向け、2025年前半から豪州内バナジウム鉱山開発に対する詳細FS（Feasibility Study：事業化調査）を開始し、2026年からの採掘施設の建設、および2027年からの操業開始を目指す。将来的には、豪州内で精製した五酸化バナジウムを、豪州だけでなく米国等の電解液工場へ輸送し電解液製造を行うなど、海外への展開も構想している。

　鉱物資源に恵まれる豪州には、バナジウムやリチウムといった多くのクリティカルミネラルが賦存している。出光興産は、約45年にわたり豪州で石炭鉱山の操業に携わってきた。これまで培ってきた人財や、開発・生産・輸送・貯蔵・出荷に関する知見、豪州政府・現地ステークホルダー・顧客との関係性などの事業基盤を生かしながら、Vecco社とともにプロジェクトを着実に進める。プロジェクトを通し、豪州を起点としたクリティカルミネラル事業へ本格進出し、米国等も含めた事業展開と再生可能エネルギー導入拡大への貢献を目指す。

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