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2026/2/2
【ペロブスカイト太陽電池】産総研グループ、正孔輸送材料の原料溶液に混ぜ込むだけで性能を向上させる「OA-TFSI」開発。2026年2月6日より東京応化工業が発売

産総研グループ(産業技術総合研究所およびAIST Solutionsの総称)が開発した材料「OA-TFSI」※1*1が製品化される。OA-TFSIは、ペロブスカイト太陽電池(PSC)の正孔輸送材料の原料溶液に添加することで、太陽電池を高効率化かつ高耐久化できる。この材料は東京化成工業が製品化し、2026年2月6日より一般販売される。OA-TFSIが普及することにより、PSCのさらなる社会実装の推進に貢献すると期待される。
開発の社会的背景
PSCは、原料となる溶液を塗布して製造できるため、現在普及している結晶シリコン太陽電池に比べて簡便かつ低コストで生産可能。また、曲げなどのひずみに強いため、軽量でフィルム化でき、設置場所を大幅に拡大できることも大きな利点。そのため、次世代太陽電池としてさらなる普及に期待が高まっている。
PSCの実用化には、高い光電変換効率と優れた耐久性との両立が課題となっている。特に、光を吸収して電荷(正孔と電子)を生成するペロブスカイト層は、食塩(NaCl)などと同様にイオンからなる結晶(イオン結晶)であるために、水分や湿気により劣化するという問題がある。また、この太陽電池はペロブスカイト層を正孔輸送層と電子輸送層で挟み込んだ積層構造になっているため、ペロブスカイト層以外の構成層の開発も重要になる。その中で、正孔輸送層の構成材料である正孔輸送材料は単体ではほとんど機能しないが、添加剤を導入することでペロブスカイト層から正孔を効率良く取り出せるようになり、太陽電池として機能させることができる。しかし、従来の添加剤では、時間がたつと添加剤がペロブスカイト層を劣化させて耐久性が低下するという問題があり、実用化に向けて、劣化を引き起こさない添加剤の開発が求められていた。
研究の経緯と内容
産総研では、PSCの実用化に向けたさまざまな材料の開発を進める中、正孔輸送層にかかわる材料を開発してきた※2。今回開発した「OA-TFSI」は、イオン液体とも呼ばれる材料で、正孔輸送材料溶液に添加することでPSCの高効率化と高耐久化をともに実現する。その効果は、TFSIと呼ばれる陰イオンが正孔輸送材料と反応し、正孔輸送層の機能を高めることで正孔を取り出しやすくするものである。さらに、陽イオンのOAがペロブスカイト材料と反応して、ペロブスカイト層表面が水をはじくようになる(図1)。これらのOA-TFSI添加剤の効果により、PSCの変換効率を向上させ、かつ耐湿性を改善する。このOA-TFSIは東京化成工業が製品化し、2026年2月6日より販売開始する。この製品化を通じて、これまで試薬として購入できなかったOA-TFSIを普及させることで、さらなる社会実装の推進に貢献すると期待される。
なお、この研究開発は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業「グリーンイノベーション基金事業/次世代型太陽電池の開発/次世代型太陽電池基盤技術開発事業/次世代型ペロブスカイト太陽電池の実用化に資する共通基盤技術開発」(2021~2025年度)による支援を受けている。

今後の予定
今後は、OA-TFSIの機能のより詳細な解明とさらなる改良により、PSCの実用化を目指す。将来的には、この材料の特徴を活用した、未踏の用途探索にも取り組む。
研究者情報
産総研 再生可能エネルギー研究センター 西村 直之 主任研究員
※1 N. Nishimura, H. Tachibana, R. Katoh, H. Kanda, T. N. Murakami, ACS Appl. Mater. Int. 2023, 15, 44859–44866.
※2 N. Nishimura, Chem. Commun. 2025, 61, 9816.
関連特許
*1 「イオン性化合物、イオン性化合物を含む正孔輸送材、正孔輸送材を含むペロブスカイト太陽電池、イオン性化合物の製造方法、正孔輸送材の製造方法、及びペロブスカイト太陽電池の製造方法」
公開番号:WO 2024/162280A1
公開日:2024年8月8日
(東京化成工業株式会社は、株式会社AIST Solutionsを通じて、本特許のライセンスを得て製品化)
用語解説
OA-TFSI
n-オクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。室温で液体であるイオン液体。陽イオンは第一級有機アンモニウムであり、現在主流となっており市販されているイオン液体の陽イオンと異なることが特徴の1つ。
ペロブスカイト
この名称は、鉱物のチタン酸カルシウム(CaTiO3)に基づく、一般式ABX3で記述される結晶構造の一般名称に由来する。ペロブスカイト太陽電池の光吸収層には、Aサイトには有機アンモニウム、Bサイトに鉛カチオン、Xサイトにハロゲンアニオン(ヨウ素アニオンなど)からなるイオン結晶が用いられる。
ペロブスカイト太陽電池
ペロブスカイト材料を光吸収層とする太陽電池であり、概要図のような積層構造からなる。ペロブスカイト光吸収層で吸収された光エネルギーによって正の電荷である正孔と負の電荷である電子を生成し、それぞれを正孔輸送層と電子輸送層への移動を介して外部電極に回収することで、電気エネルギーに変換する。
正孔輸送層、電子輸送層
それぞれ正孔と電子の回収に優れる材料から構成される層。特に、正孔輸送層には主に有機半導体が用いられるが、素の状態では正孔の回収能力が不足する。そのため、添加剤の導入により正孔回収特性を高めることが太陽電池を機能させるために重要である。
イオン液体
イオンのみからなる液体。食塩(NaCl)などと同じイオン性化合物でありながら、室温などの低温で液体である材料の総称。特に、室温で液体であるイオン液体は、室温イオン液体と呼ばれる。
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