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2024/8/6
【ペロブスカイト太陽電池】積水化学工業、国内初、営農型太陽光発電の共同実証実験開始
積水化学工業、TERRAの2社は、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)に設置するための国内で初めての共同実証実験を、千葉県匝瑳市にて2024年8月2日より開始した。
本実証の背景
世界全体で気候変動が問題視され、2050年の脱炭素社会実現に向けてエネルギーの脱炭素化が求められるなか、フィルム型ペロブスカイト太陽電池は軽量で柔軟という特長により、従来のシリコン系太陽電池では設置が難しかった場所への設置が可能となり、再生可能エネルギー(以下「再エネ」)の導入量を拡大できる有力な選択肢として期待されている。
積水化学は、独自技術である「封止、成膜、材料、プロセス技術」を活かし、フィルム型ペロブスカイト太陽電池開発の肝といわれる屋外耐久性において10年相当を確認し、30cm幅のロール・ツー・ロール製造プロセスを構築した。さらに、同製造プロセスによる発電効率15.0%のフィルム型ペロブスカイト太陽電池の製造に成功しており、さらなる耐久性や発電効率の向上、1m幅の製造技術の確立に向けて開発を加速させている。
TERRAは、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)に特化して自社発電事業・EPC・コンサルティング・部品開発を行う会社。グループ会社の市民エネルギーちばとも連動し、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の最先端企業として、Patagonia日本支社やサザビーリーグ、Jリーグとも協力、SDGsと2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを積極的に進めている。千葉県匝瑳市が採択された「脱炭素先行地域」(環境省)にも参画すると同時に、沖縄から北海道まで日本全国で様々な案件のプロデュースを手掛けている。とりわけ環境問題を総合的に捉え、農業経営の改善を大前提に考えたシステム提案に定評があり、「ソーラービール SORA ALE」などの6次化※1事業にも取り組んでいる。
TERRAは、市民エネルギーちばが持つ、ペロブスカイト太陽電池を前提とした、断面がレンズ状のモジュールに関する特許についての占有権を有している。これまで蓄積してきた超細型の構造設計や係留方法などのノウハウを活かし、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を曲面レンズ型に配置することで、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)に導入できると考え、本実証に取り組むことになった。
今般、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の設置を行うことにより、レンズ型モジュールにおける曲面での発電効率や農作物の成長環境等、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)ならではの有用なデータ取得、検証を進めていく。
※1:6次化
「6次産業化」とは、農林漁業者(1次産業従事者)が「地域資源」を有効に活用し、主体的に加工(2次産業)、流通・販売 (3次産業)に取り組む(経営を多角化する)こと。
具体的な取り組み例としては、加工品の製造・販売、消費者への直接販売、観光農園や農家レストランの経営などがあげられる
本実証の内容
1)実施場所
千葉県匝瑳市飯塚
2)実証実験内容
・営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)へのフィルム型ペロブスカイト太陽電池の設置方法の確立
・レンズ型モジュールにおける曲面での発電効率の測定、予測値と実測値の比較
・営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)設備下で栽培する農作物への影響調査
従来の営農型太陽光発電システムでは、太陽電池および架台の重量を支持する風荷重や重心バランスなど、施工性等に課題があった。これに対し、ペロブスカイト太陽電池の軽量性を活かした架台構成や施工性の検証を目的とした実証を開始する。
今後の展開
2社は、本実証により営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)への再エネ導入手法を確立し、日本全国、水田を含めさまざまな圃場へ展開、さらに農業分野における適用範囲を広げ、遊休農地、耕作放棄地へのペロブスカイト太陽電池の適用なども共同開発することにより、脱炭素社会の実現に貢献していく。
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