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2024/6/13

【メタネーション】大阪ガス、金属支持型SOECによるラボスケール試験開始。世界最高峰のエネルギー変換効率(約85~90%)に挑戦

 大阪ガスは、従来のメタネーション(約55~60%)を大幅に上回る、約85~90%という世界最高レベルのエネルギー変換効率*1を実現できる可能性を秘めた、SOEC*2メタネーションのラボスケール試験装置の試験を開始した。
*1 投入した電力エネルギー量に対し得られる燃料のエネルギー量の割合
*2 Solid Oxide Electrolysis Cell の略、固体酸化物を用いた電気分解素子。水蒸気やCO2を高温で電気分解するもの

 SOECメタネーションは、SOEC電解装置において再生可能エネルギー(以下「再エネ」)等を用いて水(H2O)と二酸化炭素(CO2)を電気分解し、生成した水素(H2)と(CO)一酸化炭素からメタン合成反応装置において触媒反応を用いてe-methane(以下「e-メタン」)を合成する革新技術。
 従来別々で行っていた電気分解とメタン合成を一気通貫のプロセスで行うことができ、原料として外部水素の調達が不要。また、メタン合成反応の排熱を有効利用することにより、世界最高レベルのエネルギー変換効率(85~90%)を実現できる可能性があり、製造コストの大部分を占める再エネ電力の削減が期待できる。

 従来のSOECは、高価な特殊セラミックス(特殊な焼き物)で構成されているが、大阪ガスの新型SOECは、琺瑯(ホーロー)食器のように、丈夫な金属を基板とし、表面を薄いセラミックス層で覆った金属支持型を使用している。
 金属支持型のSOECは、大阪ガスが独自で取り組んでいる技術であり、メタン合成との組み合わせは世界初の取り組みになる。新型SOECの実用化により、高コストな特殊セラミックス材料の使用量を従来比1割程度に削減できるなど、低コスト化が期待されている。また、新型SOECは従来型に比べ、耐衝撃性と形状の自由度が高く、スケールアップの実現も容易と考えられる。

 SOECメタネーションのラボスケール試験は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業*3/CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」の「SOECメタネーション技術革新事業」のもと進めている。
 今回製作したラボスケール試験装置のe-メタン製造能力は0.1Nm3/hで、一般家庭2戸相当のガスを製造することができる。今後、本装置を用いてSOECメタネーション装置を構成するSOEC電解装置やメタン合成反応装置の性能確認を行うとともに、プロセス全体の運転データの取得を行い、目標とするエネルギー変換効率を達成するための検証を進める。
*3 2050年カーボンニュートラルを実現するべく、エネルギー・産業部門の構造転換や、大胆な投資によるイノベーションの大幅な加速を目指して造成された約2兆8,000億円規模の基金事業。政府の「グリーン成長戦略」で実行計画を策定している重点分野において、政策効果が大きく、社会実装までを見据えて長期間の継続支援が必要な領域に重点化して支援されるもの

 更にその後、グリーンイノベーション基金事業のもと、2025年度~2027年度にベンチスケール試験(e-メタン製造規模10Nm3/h級、一般家庭約200戸相当)、2028年度~2030年度にパイロットスケール試験(同400Nm3/h級、同約1万戸相当)を進め、2030年度に世界最高レベルのエネルギー変換効率(約85~90%)を実現するe-メタン製造技術の確立を目指す。将来的には、2031年度以降の実証フェーズを経て、2030年代後半から2040年頃の実用化を目指す。

 

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