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2025/3/28
【リグニン変性フェノール樹脂】住友ベークライト、非可食バイオマス由来「固形ノボラック型」の量産・商業化に成功
住友ベークライトは、非可食バイオマス由来原料であるリグニンを活用した「固形ノボラック型」リグニン変性フェノール樹脂の商業販売を開始した。フェノール樹脂は「液状レゾール型」と「固形ノボラック型」に大別され、「固形ノボラック型」は自動車分野を中心に利用されている。「固形ノボラック型」リグニン変性フェノール樹脂の商業化は世界初であり、今後はバイオマス率の向上や更なる用途展開を進め、GHG(温室効果ガス)削減や資源循環に貢献して持続可能な社会の実現を目指す。
※同製品はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)に委託された事業の研究成果の1つ。

開発の背景
近年、プラスチックの環境負荷への関心が高まっており、あらゆる産業において資源循環やGHG排出削減に対する具体的な取り組みが求められている。プラスチックが機能面で代替できない場合はリサイクルが有効だが、最終的に焼失・摩耗する用途や長期間使用が想定される用途では、リサイクルが難しいとされている。そのような場合は化石資源由来原料を、再生可能なバイオマス由来原料に転換することが有効と考えられる。
固形ノボラック型リグニン変性フェノール樹脂について
フェノール樹脂は高い耐熱性を有するため、プラスチックのなかでも過酷な条件に使用され、使用時や使用後に摩耗や焼失してしまう用途が多くある。このような用途ではリサイクルが困難であるためバイオマス活用が有効である。同社では、環境負荷低減を図るためにリサイクル技術とともにバイオマス利用についても研究開発を進めてきた。2010年以前からフェノール樹脂への適用に有望なバイオマスとして、リグニン成分の利用に関する基礎研究に着手し、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業への参画などを通して、種々のリグニンを活用した樹脂合成/材料化技術の開発に取り組んできた。

製品の特徴
アルカリ触媒下で得られる「液状レゾール型」リグニン変性フェノール樹脂については、多くのリグニンがアルカリに可溶であることから研究例が多く、木質材料用接着剤では社会実装が進みつつある。
同社グループでも昨年、合板や単板積層材の製造に用いられるフェノール樹脂接着剤において、バイオマス由来原料の「リグニン」に置き換えた「スミタック® PL-700シリーズ」を商業化した。※1
一方、酸触媒下で得られる「固形ノボラック型」リグニン変性フェノール樹脂は、多くのリグニンが溶融溶解しづらいために適用しづらく、社会実装も進んでいない。それに対して同社は2019年にトンスケールの量産を実証してサンプル提供や試験販売を進めるなど各種用途への適用を目指してきた。※2

商業化例:PR-L-0002の鋳造用RCSバインダー樹脂への適用
・RCSバインダー樹脂は砂の再生時に焼却されるが、同製品は既存品と同様に砂再生を阻害しない。
・今回商業販売に至った高強度用RCSバインダー樹脂はバイオマス率15%であり、既存品と比較して化石資源使用量を15%削減可能。また、CFPは11%削減可能。
・ 今後は他用途同様に、高強度用バインダー樹脂でも30%を超えるバイオマス率を目指す。

今後の計画
固形ノボラック型フェノール樹脂は、同社の得意とする自動車部品(成形材料、摩擦材、タイヤなど)をはじめ、幅広い用途に使用されている。同製品の商業化を機に、多様なリグニンの社会実装促進、フェノール樹脂のサステナブル化を目指して、自動車部品や各種バインダーなどへ更なる適用拡大を目指す。
同社は環境・社会価値の創出を目指し、今後も環境に優しい技術・製品を開発して社会に貢献していく。
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構)の委託事業の詳細はHP参照。
˙ グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発(2010~2012年度)
˙ 非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発(2013~2019年度)
樹脂製造時のCFP試算
量産スケール時 | リグニン変性フェノール樹脂 | Cont. 化石資源由来フェノール樹脂 |
---|---|---|
樹脂構成 | リグニン/フェノール | フェノール |
バイオマス率1)(%) | 15 | 0 |
CFP(製造時排出量)(kg-CO2eq/kg) | 3.06 | 3.02 |
CFP(バイオマス吸収量)2)(kg-CO2eq/kg) | 0.36 | 0 |
CFP(合計)(kg-CO2eq/kg) | 2.70 | 3.02 |
CFP削減率 control対比(%) | -10.7 | 0 |
CFP削減量 control対比(kg-CO2eq/kg) | 0.32 | 0 |
樹脂製造時のCFP試算条件
- データベース: IDEA v2.3
※主原料、リグニンはサプライヤー聴取値を使用 - 影響領域: 100年指数(IPCC, 2013)
- 特性化モデル・対象項目: 気候変動
- システム境界: 原料採掘~樹脂出荷
- 生産工場: 住友ベークライト株式会社 静岡工場
- データ収集期間: 2022年4月~2023年3月
1) | バイオマス率は「樹脂製品中に含まれるバイオマス由来原料の比率」から算出している |
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2) | バイオマス吸収量は「大気中のCO2をバイオマス炭素として固定した」 と仮定して算出している |
3) | 上記値は代表値であり保証値ではない |
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