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2024/5/17

【LIB正極材料】3DC、日本有数の実績を持つ横国大・藪内教授と共同研究開始。「1回の充電で従来よりも長時間使える」電池の実現を目指す

 電池の進化を加速させる革新的カーボン新素材「グラフェンメソスポンジ®(GMS)」の開発・製造販売を行う3DCは、2024年4月、リチウムイオン電池(LIB)向け正極材料について日本有数の実績を持つ横浜国立大学・藪内直明教授と共同研究を開始した。今回の共同研究を通して、1回の充電で従来よりも長時間使える高容量なLIBの開発に向けて検討を進め、電池の進化と脱炭素社会の実現に貢献する。

共同研究を開始した背景
 持続可能な社会の実現に向けて、脱炭素領域に多くの注目が集まっている。脱炭素を実現するための手段の1つに「社会の電動化」があり、電動化の鍵として期待されているのがLIB。LIBは、他の二次電池よりも小型かつ長寿命にできることから、EVの普及や再生可能エネルギーの導入拡大において重要な役割を果たすと考えられている。
 LIBの性能の中でも特に重要なのが、1回の充電で貯められる電気の量(容量)。LIBは1991年に商用化されて以来、その容量を決定づける活物質(正極材料など)を中心に進化してきた。
 脱炭素社会の実現には、現状よりもさらに高容量の電池が必要。しかし、LIBには「容量を向上させようとすると寿命や入出力特性といった別の特性が低下する」というジレンマが存在するため、研究は一筋縄ではいかなかった。このトレードオフ解消に貢献できると考えられているのが、3DCが開発する次世代炭素材料「グラフェンメソスポンジ®(GMS)」。
 LIBでは、電極の導電性を上げるため、活物質の近くに「導電助剤」と呼ばれる材料を分散させる必要がある。3DCは、GMSを導電助剤としてアレンジした「導電助剤用GMS」を開発・販売している。今回は、導電助剤用GMSを使用してLIBのさらなる高容量化を実現するため、LIB向けの高電圧正極材料について豊富な研究経験を有する横浜国立大学・藪内直明教授と共同研究を開始することとなった。
共同研究先:横浜国立大学 藪内直明 教授について
 2006年に、大阪市立大学大学院工学研究科 応用化学専攻 後期博士課程を修了。博士(工学)。博士取得後は、米国マサチューセッツ工科大学 機械工学科で博士研究員として研究に取り組む。2010年には東京理科大学 総合研究機構の助教に就任、2012年から同講師。2014年に東京電機大学 工学部 環境化学科 准教授に就任。2018年4月より現職。2023年4月より、横浜国立大学 先端科学高等研究院 先進化学エネルギー研究センター 先進蓄電池電池ラボ ラボ長 (https://acerc.ynu.ac.jp/) を併任、また、2023年6月に英国王立化学会のフェローに選出。
 LIBの高機能化や、次世代電池であるナトリウム電池の開発などに取り組む。LIB向けの高電圧正極材料の開発に関しては、日本における第一人者。大手メーカーとの共同研究経験も豊富。GX実現を目指す国家プロジェクト「革新的GX技術創出事業(GteX)」の「高エネルギー密度を有する高温作動長寿命リチウム系電池の開発」において、正極材料開発のグループリーダーを務める。
研究室HP:http://www.yabuuchi-lab.ynu.ac.jp/

共同研究の内容
 LIBの高容量化を目指して、以下の2つの視点から共同研究を実施する予定。
(1)高電圧LIBの実現
 LIBは、充電電圧が高いほど容量が大きくなる。しかし、従来の導電助剤は電圧が高いと劣化しやすいため、電圧が高くても耐えられる導電助剤が求められていた。
 今回は、藪内教授が開発した最先端の高電圧向け正極材料と、3DCの導電助剤用GMSを組み合わせることで、従来よりも高い電圧まで充電できる高容量なLIBの実現を目指す。導電助剤用GMSは「劣化に強い」「弾性変形することで電極の構造変化を吸収できる」という特徴があるため、高電圧LIBの実現に貢献できると期待している。
(2)LIB電極の高密度化を実現
 電子デバイスの小型化やEVの軽量化に伴い、小型でもより多くのエネルギーを蓄積できるLIBが求められている。このような高エネルギー密度のLIBを実現するには、電極に正極材料をできるだけ多く充填する必要があるが、電極を高密度化すると電池の性能が落ちてしまう点が課題であった。
 今回は、藪内教授が開発した最先端の正極材料と、3DCの導電助剤用GMSを組み合わせることで、上記問題の解決を目指す。

共同研究によって3DCが目指すこと
 藪内教授が開発する最先端のLIB向け正極材料と、3DCの導電助剤用GMSを組み合わせることで、LIBの性能を向上し、脱炭素社会の実現に貢献する。

3DC 黒田拓馬代表取締役CEOのコメント
 電池研究において、世界の最先端を走っている薮内研究室と共同研究を始められることにとても興奮しています。薮内先生の電池・活物質の研究開発力と弊社の炭素材料技術を組み合わせることで、LIBの進化をより一層推し進めていきます!

「GMS」および「導電助剤用GMS」とは

GMSの構造

 GMSは、炭素1原子分の厚みでスポンジのような三次元構造を備えた、まさに「三次元型のグラフェン」素材。最も注目すべきはその柔軟性で、ゴムのように弾性変形することで電池の充放電に伴う激しい構造変化にも容易に対応できる。このような「弾性変形する炭素材料」を開発しているのは、世界でも3DCだけ。また、GMSは柔軟性以外にも、その材質や構造に由来する多孔性、導電性、耐食性を併せ持つ。このように複数の優れた性質を有する革新的な材料であることから、GMSは、LIBにおける「容量を向上させようとすると別の特性が低下する」トレードオフ問題を解消し得る炭素材料として、全世界から注目されている。

GMSの4つの特徴:柔軟性、化学的耐久性、導電性、カスタマイズ性

 3DCはこのGMSをLIBの導電助剤向けにアレンジし、「導電助剤用GMS」を開発した。3DCが提供する導電助剤用GMSは、良好な導電パスを効率的に形成する独自構造を採用。これにより、カーボンブラックやカーボンナノチューブといった従来の導電助剤よりも少ない添加量で、高電圧・ハイレートの正極や、高エネルギー密度が期待されるシリコン系負極の性能向上に貢献できる。

左:導電助剤用GMS、右:導電助剤用GMSを電極に添加した様子

■3DCについて
 3DCは、脱炭素社会で必須となるLIBや次世代電池、キャパシタ、燃料電池といった蓄電・発電デバイスの電極に使用するカーボン新素材「グラフェンメソスポンジ(GMS)」を開発する東北大学発のベンチャー企業。
 3DCは現在、2026年以降の本格的な市場参入に向け、国内外の電池・電池材料・キャパシタ・自動車メーカーなどと協力してGMSの導入実証を進めている。LIB向けを始めとして、競合製品よりも優位な評価結果を出せており、電池メーカーなどから積極的な引き合いが寄せられている。
 2024年1月にはプレシリーズA 1stクローズとして2.5億円の資金調達を実施し、累計調達額は6.8億円に到達。また、2024年2月にはLIBの寿命・性能の向上に寄与する「導電助剤用GMS」の出荷を開始し、現在はその量産化に向けて精力的に準備を進めているところ。

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