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2025/10/29

【二次電池正極材】住友化学、田中化学研究所を完全子会社化

 住友化学および田中化学研究所は、2025年10月28日開催の両社の取締役会決議により、それぞれ、住友化学を株式交換完全親会社、田中化学研究所を株式交換完全子会社とする株式交換を実施することを決定し、本日、両社間で株式交換契約を締結した。
 なお、本株式交換は、住友化学においては、会社法(平成17年法律第86号。その後の改正を含みます。以下同じ)第796条第2項の規定に基づき、株主総会の決議による承認を必要としない簡易株式交換の手続により、また、田中化学研究所においては、2025年12月25日開催予定の田中化学研究所の臨時株主総会の決議による本株式交換契約の承認を得た上で、2026年1月30日を効力発生日として行われる予定。
 また、本株式交換の効力発生日(2026年1月30日(予定))に先立ち、田中化学研究所の普通株式は、2026年1月28日に東京証券取引所スタンダード市場において上場廃止(最終売買日は2026年1月27日)となる予定。
 田中化学研究所は、1957年12月に設立され、ニッケルやコバルト、マンガンの化合物を中心に電池材料、電子材料、触媒材料、表面処理材料、燃料電池材料等の高付加価値の機能性化学材料の研究開発および製造に取り組んできた。その技術的発展の成果は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の高性能小型二次電池や省エネルギー環境対応車の心臓部である中大型二次電池などの正極材料技術へと結実した。二次電池関連業界では、経済安全保障の観点から日系企業に対する需要が高まっている中、田中化学研究所は二次電池用の正極材料分野において確固たる技術力を有しており、2025年3月31日現在、二次電池用の正極材料の製造販売を主な事業内容としている。
 住友化学と田中化学研究所の関係は、2013年3月に、正極材料の事業拡大を見据えて、技術面、事業面などの体制を強化するために、両社の間で資本業務提携契約を締結し、住友化学が第三者割当の方法により田中化学研究所株式125万株を引き受けたことに始まる。その後、2014年12月、住友化学が第三者割当の方法により田中化学研究所株式95万株を引き受けた結果、住友化学が所有する田中化学研究所株式は220万株に増加した。
 さらに、2016年8月に、住友化学が第三者割当の方法により田中化学研究所株式1050万株を引き受けた結果、住友化学が所有する田中化学研究所株式は1270万株に増加し、田中化学研究所は住友化学の子会社となった。これまで住友化学および田中化学研究所は、田中化学研究所の独立性を保ちつつも、両社が協力して顧客の多様なニーズに応える正極材料の開発を進め、連携を強化することで田中化学研究所の収益性改善等の企業価値向上に向けた取り組みを推進し、一定の成果をあげてきた。また、田中化学研究所はEV市場の発展に伴い高度化する正極材料への技術的要請に応えるべく、継続的に技術開発を進めてきている。
 しかし、環境配慮や省エネを背景とした自動車のxEV化とともに市場が急拡大するとみられていた二次電池市場を取り巻く環境は、近年、各国の補助金施策の縮小などの影響から特にBEVの需要拡大のスピードが失速、停滞局面に入っている。さらに、各原材料資材の高騰、労務費やエネルギーコストの上昇等も重なり、田中化学研究所が直面する事業環境は一層厳しさを増している。また、2025年3月に欧州の主要取引先であったスウェーデンの電池製造大手ノースボルト社が破産手続を開始したことなどにも大きく影響を受け、足元の業績は当初計画を下回る非常に厳しい状況となっている。田中化学研究所は、2025年3月期には当期純損失を計上し、2026年3月期においても当期純損失を計上する見込み。
 住友化学は、これまで、田中化学研究所を取り巻く事業環境の変化に対する課題認識を踏まえ、田中化学研究所の特徴を活かした企業価値向上策、田中化学研究所の少数株主への影響、住友化学への財務インパクト、住友化学の株主の利益への影響等の観点から、田中化学研究所との資本関係の見直しも含む抜本的な経営改革案を検討してきた。
 その結果、住友化学は、田中化学研究所が上場会社として独立した事業運営を続けるよりも、住友化学による完全子会社化を通じて、利益相反問題を懸念することなく、技術開発や事業基盤の構築に関する緊密なサポートを行うことが可能な一体的な運営体制に移行し、既に有している正極材に関する優れた技術力を基に顧客からの高度化する要請に応える研究開発の加速および技術の確立、収益性の改善および資金繰りの安定化、そして必要に応じた大胆な構造改革の実現を可能とする形を目指すことが必要と判断するに至り、2025年8月1日に住友化学から田中化学研究所に対して本株式交換の提案を行った。
 田中化学は、親会社である住友化学からの本提案を受けて、本株式交換に係る具体的な検討を開始することとした。また、田中化学研究所は、本株式交換に関する具体的な検討を開始するに際し、田中化学研究所の取締役会において、本株式交換の是非を審議および決議するに先立って、本株式交換では構造的な利益相反の問題が生じ得るため、田中化学研究所の少数株主の保護を目的として、本株式交換における交換比率の公正性の担保、意思決定の過程における恣意性の排除および利益相反回避の観点から、本株式交換の公正性を担保する措置の1つとして、2025年8月5日に、住友化学からの独立性および本株式交換の成否からの独立性を有する委員から構成される特別委員会を設置し、具体的検討に向けた体制を整備した。
 本株式交換により、田中化学研究所の少数株主と住友化学との間の利益相反や独立性確保のための制約を取り除き、より長期的な視点から機動的にグループの全体最適の施策が実施でき、事業環境の変化にも迅速な対応が可能になるというメリットを、両社ともに享受することができると考えている。
 具体的には、本株式交換を通じて、田中化学研究所において、本社機能やバックオフィス機能の業務負担の軽減、上場維持に伴う諸経費の削減等が見込まれる。これらの取り組みにより創出される人材、資金、時間などの余剰資源を、今後田中化学研究所が注力すべき収益性の改善や事業運営体制の構築等に対して、より迅速かつ積極的に投入することで、経営資源の効率的な活用のほか、資金繰りの安定化も可能になると考えられている。また、住友化学の完全子会社となることで、将来、田中化学研究所において大胆な構造改革の実施が必要になった場合でも、住友化学の支援の下、迅速な対応が可能になると考えられている。
 なお、本株式交換を通じて田中化学研究所は上場廃止となるため、一般的に上場企業が享受できる、エクイティファイナンスによる多様な資金調達手段の確保、社会的な信用力や知名度向上に伴う採用活動への好影響、会計監査を通じた財務情報の信頼性の向上などの利点を得られなくなる。しかし、資金需要については親会社による子会社への資金支援など、株式市場における資金調達を代替する手段が存在すること、また、田中化学研究所の知名度は、その業歴の長さなどから既に十分に高く、非上場会社となった場合でも、住友化学の完全子会社としてグループ内の連携をより一層強化することにより、住友化学グループの知名度の恩恵を引き続き享受できることから、人材採用等への悪影響は小さいと考えられること、さらに、住友化学の完全子会社となった後も住友化学連結の会計監査の対象となることから財務面の信頼性も維持可能と考えられることなど、上場廃止に伴う影響は最小限に抑えられるものと考えられている。
 両社は、完全子会社化の方法として本株式交換を選択することが望ましいと判断した。これは、本株式交換の対価として、住友化学の普通株式が田中化学研究所の少数株主に交付されることにより、田中化学研究所の少数株主が住友化学株式を保有し、今後想定されるシナジーの創出による住友化学グループの事業発展や収益拡大、ひいては住友化学の株価上昇といったメリットを享受できる機会を提供できるためである。また、住友化学株式は流動性が高く、市場で取引することで随時現金化することも可能であることから、本スキームが適切であると考えられている。
 以上の点を踏まえた結果、住友化学としては、本株式交換により住友化学が田中化学研究所を完全子会社化することが、住友化学および田中化学研究所双方の企業価値の維持向上に資する最善の策であるとの結論に至った。また、田中化学研究所としても、現在の同社を取り巻く事業環境を踏まえると、住友化学の提案する本株式交換は、田中化学研究所の少数株主の不利益を回避しつつ、ステークホルダーからの信用力を維持することができ、かつ、田中化学研究所の事業継続および企業価値の維持向上の観点から最善の策であるとの結論に至った。
 以上の通り、両社において慎重に検討を重ねた結果、本株式交換によって田中化学研究所が住友化学の完全子会社になることが、両社の企業価値の維持向上に資するものであるとの認識で一致した。その上で、本株式交換に係る割当比率を含む諸条件についての協議を経て合意に至り、2025年10月28日、両社の取締役会において、住友化学が田中化学研究所を完全子会社化することを目的とした本株式交換の実施を決議し、あわせて本株式交換契約を締結した。

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