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2024/10/1
【企業戦略】BASF、ポートフォリオの運用、資本配分、パフォーマンスカルチャーにおける新たな方向性を設定
BASFはこのほど、企業戦略発表にて、新たな方向性を打ち出した。BASF取締役会会長のDr. マーカス・カミートは、ルートヴィッヒスハーフェンで開催されたキャピタル・マーケット・デイにて、次のように述べている。
「私たちは、お客様のグリーントランスフォーメーションを可能にする、選ばれる化学会社になることを強く望んでいます。BASFの中核をなす化学品事業(コア事業)の強力かつ広範なポートフォリオは、世界中のさまざまな産業におけるお客様にとって最も重要な存在となっています。その他の4つのスタンドアローン事業は、それぞれが異なる産業を対象にしており、統合されたバリューチェーンとの結びつきは比較的弱いです。今後、私たちはこれらの事業の価値をさらに引き出します」
BASFは、顧客に優れた製品を提供することで、利益ある成長をし、株主のために価値を創造したいと考えている。「BASFはこれまで以上にキャッシュに焦点を当てます。資本支出を抑え、コスト削減プログラムを継続することで、資本規律を強化していきます」と、BASFの最高財務責任者(CFO)の Dr. ディルク・エルバーマンは述べている。中期的には、BASFは、配当と自社株買いの組み合わせにより、株主への全体的な分配を過去数年の水準に維持することに尽力する。このようにして、BASFは2025年~28年にかけて、少なくとも120億ユーロを株主に分配することを目指す。具体的には、1株当たり少なくとも2.25ユーロ(2023年は3.40ユーロ)、約20億ユーロの配当を毎年支払う予定。これは2025年に支払われる2024事業年度の配当にも適用される。4年間の配当総額は約80億ユーロで、これを補う自社株買いは遅くとも2027年以降を目標に実施され、その額は約40億ユーロとなる見込み。
最新の配当方針は、BASFの以下の新しい財務目標に基づいている。
・特別項目控除前EBITDAは、景気が中庸ないし回復局面にある2028年に100億ユーロから120億ユーロになる見込み
・2025年~28年までの累計フリーキャッシュフローは120億ユーロ以上となる見込み
・2028年の投下資本利益率(ROCE)目標は約10%
BASFは「Focus」「Accelerate」「Transform」「Win」の4つの戦略的手段に沿った新たな「Winning Ways(成功への道のり)」戦略を発表した。
事業の明確な役割に沿った厳格なポートフォリオ管理
戦略的手段の「Focus」によって、BASFはポートフォリオの管理に対する取り組み方を再定義している。BASFは現在、コア事業(ケミカル、マテリアル、インダストリアル・ソリューション、ニュートリション&ケア)と、特定の産業に貢献するスタンドアローン事業(Environmental Catalyst and Metal Solutions、バッテリーマテリアルズ、コーティングス、アグロソリューション)を区別している。この中でBASFは、2025年1月1日からEnvironmental Catalyst and Metal Solutionsおよびバッテリーマテリアルズがサーフェステクノロジー事業セグメント内の別の事業本部として報告されることを発表した。
BASFのコア事業は、競合他社に対して大きな優位性を確立している。BASFのバリューチェーンへの統合と主要拠点におけるフェアブント(統合生産)を基盤とし、資源の効率的利用、卓越したオペレーション、コスト効率を通じて価値を生み出している。BASFは基幹化学品を成長産業へ供給し、世界中で3万6000以上の顧客を有している。2023年において、BASFのコア事業は過去5年間に発売された革新的な製品により約60億ユーロの売上を計上した。これらの事業の約75%において、BASFはトップ3のマーケットリーダーである。Dr. マーカス・カミートは次のように述べている。「私たちは、非戦略的または低リターンの事業を精査するための厳格なアプローチを継続する一方で、有機的成長と、一定の規律のもとで価値をもたらす買収を継続することにより、コア事業におけるマーケットリーダーとしての地位を活かしていきます」。
BASFのスタンドアローン事業は、それぞれ特定の産業を対象とし、専業の他社と競合している。この状況を受け、BASFは各事業が展開している市場固有の要件に対応するために、より戦略的かつ運営上の柔軟性を提供する。Dr. マーカス・カミートは「BASFは、スタンドアローン事業への投資を継続しますが、BASFとその株主にとって付加価値が見込まれる場合には、積極的にポートフォリオにおける別の選択肢も検討します」と述べている。
BASFのコーティングス事業は市場でのリーディングポジションを保持し、強力な収益とキャッシュ貢献をもたらしており、プレミアム価値を追求できる状態にある。このような背景から、BASFは価値創造のための戦略的選択肢を検討し、ブラジルの建築用塗料事業の売却プロセスを準備する予定。
BASFのアグロソリューション事業は、農業市場でリーディングポジションを保持し、強力なイノベーションパイプラインを有している。BASFは、2027年までにこの事業の法人およびERPシステムの分離を完了させる予定。次の段階として、BASFは将来あり得るIPOに向けて準備を整えることを目標としている。中期的には、半数を超えない株式の上場も選択肢として考えられる。
BASFのバッテリーマテリアルズ事業は、高い市場リスクと技術リスクを特徴とする急成長環境で事業を展開している。最近の市場動向を考慮し、BASFは既存の生産能力を満たし、バリューチェーンに沿ったコラボレーションの機会を模索することに重点を置くことで、今後のリスクを減らす方針を取っていく。
BASFのEnvironmental Catalyst and Metal Solutions (ECMS)事業は、低成長が見込まれている産業で事業を展開しながらも、市場で有利な位置にある。2023年以降この事業はカーブアウトされたが、キャッシュへの強力な貢献を続けている。
各事業部門への権限移譲と結果責任の向上
戦略的手段「Accelerate」は、価値創出のスピードアップと組織の簡素化を目標としている。BASFは、より合理化され差別化されたグループ運営を通じて、各事業部門の権限を強化する。BASFは、事業の成功に対して各事業本部が持つ責任をさらに強化する。これに伴い、インセンティブと各部門の業績との関係をより緊密にした、さらに改良されたパフォーマンス管理システムを導入する。加えて、役割の明確化、よりフラットな階層の確立そして官僚的な仕組みの削減により、よりシンプルでリーンな組織を目指す。また、個人の主体性を高めるため、管掌範囲を調整する。
BASFはまた、生産性の向上とイノベーションの加速を目指して、人工知能(AI)の可能性を活用する。全世界でAIを活用することにより、BASFは中期的な収益の確固たる改善を達成したいと考えている。
持続可能な製品ポートフォリオに向けた、価値に基づく変革の推進
「Transform」では、グリーントランスフォーメーション(GX)を推進する。「BASFの主要な顧客産業は、グリーントランスフォーメーションの目標を達成する上で非常に大きな課題に直面しています。私たちは、この道のりにおいてお客様をサポートする化学製品を提供します」とDr. マーカス・カミートは述べている。BASFは、増加する顧客の需要に応じて、グリーントランスフォーメーションに段階的に取り組んでいる。第一段階として、BASFは再生可能電力の利用を増やし、新技術を試験的に導入し、持続可能な製品を発売した。BASFはすでに、広範なポートフォリオ全体で、製品カーボンフットプリント(PCF)を削減した、あるいは実質ゼロの製品をすでに何千種類も提供している。
第二段階として、BASFは再生可能な原料の確保を進め、顧客のニーズに応じて持続可能な特性を持つ製品の生産量を増やしている。これを受けて、BASFは再生可能エネルギーに取り組むため、再生可能原料の専門部門を設立する。BASFの段階的な変革の推進は、支出にも反映されており、2025年から2028年までの変革に関連する支出は年平均で6億ユーロになる見込み。
BASFは、気候保護目標に全面的に取り組んでいる。2050年までに、生産(スコープ1)、エネルギー購入(スコープ2)、原材料購入(スコープ3.1)の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指している。2030年までに、BASFはスコープ1とスコープ2の排出量を2018年比で25%削減することを目標としている。さらに、BASFは2030年までに特定のスコープ3.1を2022年比で15%削減することを目標としている。
長期的な成功を確保するためのルートヴィッヒスハーフェン拠点の構造調整の継続
ルートヴィッヒスハーフェン拠点の目標は、欧州をリードする持続可能な化学拠点となり、BASFの成功への強力な柱となることである。BASF SEの取締役兼サイトディレクターであるDr. カティア・シャルプヴィンケルは、次のように説明している。「ルートヴィッヒスハーフェンにおける生産資産構造について、現在および将来の化学品市場と顧客需要に基づき、徹底的な分析を行いました。大半の資産はそれぞれの市場において競争力を有していますが、私たちの調査結果によると、競争力の欠如や設備が十分に稼働していないことから、一部の工場や生産ラインでは十分な収益を上げることができなくなっています」。
この分析から導き出された最初の資産調整策はすでに実行されている。例えば、2024年8月末に発表されたアジピン酸、シクロドデカノン(CDon)、シクロペンタノン(CPon)の工場の閉鎖などである。Dr. カティア・シャルプヴィンケルは「さらなる資産調整策は現在評価中であり、必要に応じて段階的に実施される予定です」と述べている。
さらにBASFは、ルートヴィッヒスハーフェンにおける非製造部門の構造を調整し、包括的な一連の対策を通じてコストを大幅に削減する。すでに発表されているように、BASFは2026年末までに年間約21億ユーロ(ランレート)のコスト削減を目標としている。「ルートヴィッヒスハーフェンの工場は、より合理化され、より強固になります。欧州市場においてさらに競争力のある地位を持つこととなり、中長期的な事業運営を成功させることができるでしょう」とDr. カティア・シャルプヴィンケルは述べている。
BASFの分析によると、すべての主要なバリューチェーンはそれぞれの市場で競争力を有し、BASFはグリーントランスフォーメーションに伴う変化により利益を得ることができる。この拠点の統合されたフェアブントシステムは、顧客のGXを可能にするソリューションを提供するユニークな利点を備えている。これは、固有のエネルギー効率と資源効率、原料の柔軟性を提供する複数のエントリーポイント、そして既存の資産で再生可能なリサイクル原料を柔軟かつ計測可能な方法で使用する能力によるものである。
パフォーマンス向上のためのカルチャー・シフトを促進
戦略的手段の「Win」によって、BASFは会社全体における結果責任、スピード、パフォーマンス志向を向上する。「BASFには化学業界で最高のチームがいます。しかし、社員がより主体性を持ち、より迅速な決断を下し、業績を向上させるためには変化が必要です。BASFのウィニングカルチャーは、戦略を成功させるための重要な要素になるでしょう」とDr. マーカス・カミートは述べている。
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