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2024/4/9

【元素選択式ガスクロマトグラフ質量分析計】島津製作所、世界で初めて含酸素・窒素成分の検出を可能にした「ELEM-SPOT」発売

 島津製作所は、2024年4月8日に元素選択式ガスクロマトグラフ質量分析計「ELEM-SPOT(エレムスポット)」を発売した。バイオ燃料の品質などに影響する含酸素および含窒素成分だけを、原料に含まれる多数の成分から選択的に検出できる製品は世界初。本製品は、フランスの石油大手、TotalEnergies(トタル社)、フランスのポー大学、スペインのオビエド大学と共同開発した。バイオ燃料の原料中に含まれる、製造効率や品質の悪化原因となる成分について、その存在や含有量、除去処理の効果を簡単に確認できる。
 近年、カーボンニュートラルに向けた新エネルギーの研究が進んでいる。特に、サトウキビ・トウモロコシなどの可食部を利用した「第一世代」ではなく、サトウキビの皮や茎、藻類などの非可食部や廃棄プラスチックなどを利用した「第二世代」のバイオ燃料に関する研究開発が盛ん。これらのバイオ由来原料やリサイクル原料には、化石燃料とは異なる未知の成分が多く含まれている。そのため「酸素や窒素はバイオ燃料の製造効率および品質の低下につながるが、多数の未知成分中から目的成分だけの検出は困難」「効率的な評価・分析手法が確立されていない」という課題があった。

元素選択式ガスクロマトグラフ質量分析計「ELEM-SPOT」

 「ELEM-SPOT」は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)と酸化炉で構成されている。バイオ由来原料やリサイクル原料に含まれる化合物をGCで分離した後、酸化炉で酸化分解し、MSで選択的に酸素や窒素だけを検出。製造工程で使用する触媒に悪影響を及ぼす酸素や窒素を検出し、除去処理を行うことで触媒の品質劣化によるバイオ燃料の品質低下や、触媒交換によるプラント停止・製造効率の低下を防ぐことができる。従来は数時間かかっていた「数百本のピーク(測定した成分を示す波形のグラフ)を1本ずつ吟味して酸素や窒素を見つける」という作業が80%以上短縮でき、業務効率の向上につながる。
 島津製作所とトタル社、ポー大学、オビエド大学は、2021年からクリーンエネルギー分野における包括的な共同研究を進めてきた。本製品は、トタル社ら3者が持つ「バイオ燃料の含酸素成分の特定」に関する革新的な特許技術と、島津製作所の高性能GC-MS技術により実現した。島津製作所は引き続き本製品のユーザビリティ向上に取り組んでいく。
 「ELEM-SPOT」の特長は次の通り。
1. 世界で初めて含酸素および含窒素成分を選択的に検出可能
 バイオ由来原料に含まれる含酸素・含窒素成分は、製造工程で使用される触媒に悪影響を及ぼすため、その検出の需要が高まっている。しかし、バイオ原料の全成分から含酸素・含窒素成分を見分けることは困難であった。本製品は、酸化ガスに同位体酸素を用いて酸化分解した後、専用のデータ解析ツールを使うことで、含酸素化合物を正確に特定する。含酸素・含窒素成分を正しくモニタリングして処理することで、触媒の品質劣化が抑制され、頻繁な触媒交換が不要となる。含酸素および含窒素成分を選択的に検出できる製品は世界初。
2. 高感度な分析で最先端の研究を支援
 バイオ燃料などの新エネルギー関連分野では、微量成分を高感度に検出する手法が求められている。本製品は業界最高レベルの感度で含酸素および含窒素成分の検出が可能。木質バイオマスや藻類、リサイクルプラスチック由来の原料に含まれる、微量の酸素や窒素成分が分析できるようになる。
3. 高い基本性能を継承
 島津製作所の主力GC-MS「GCMS-QP2020 NX」が持つ高い基本性能と優れたユーザビリティを継承。酸化炉を用いて含酸素・含窒素成分を特異的に検出する分析に加え、酸化炉を用いない通常の分析も可能。酸化炉の利用はソフトウェア「LabSolutions GCMS」シリーズから簡便かつ迅速に設定できる。
 価格は3500万円~(税別)、発売後1年間で国内外合わせて15台の販売を目指す。

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