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2024/3/8
【半導体】田中貴金属工業、「AuRoFUSEプリフォーム」を用いた半導体高密度実装向け接合技術確立
田中貴金属グループの中核企業として産業用貴金属事業を展開する田中貴金属工業は、金・金接合用低温焼成ペースト AuRoFUSE(TM)(オーロフューズ)を活用した高密度実装向け金(Au)粒子接合技術を確立した。
AuRoFUSE(TM)は、サブミクロンサイズのAu粒子と溶剤のみで構成され、低電気抵抗かつ高熱伝導率に加え、低温で金属接合を実現する接合材料。 本技術では、AuRoFUSE(TM)プリフォーム(乾燥体)を用いることで、20μmサイズで4μm間隙の狭ピッチ実装を実現した。また、AuRoFUSE(TM)プリフォームは、200℃、20MPa、10秒の熱圧着後で、圧縮方向に約10%の収縮率を示しながら水平方向への変形は少なく、実用化に十分耐えうる接合強度※1をもつAuバンプ※2として用いることができる。さらに、化学安定性に優れるAuを主成分としているため、実装後の高信頼性も持ち合わせている。
本技術は、半導体における配線の微細化・多種チップの集積(高密度化)を可能とする技術であり、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザー)といったオプティカルデバイス(光デバイス)をはじめ、パソコン・スマートフォンなどのデジタルデバイスでの活用や車載部品など、高度な技術革新が求められる先進技術への貢献が期待できる。
今後、本技術の市場認知拡大を目的として積極的なサンプル提供を実施していく。
なお、本技術は2024年3月13日~15日に東京理科大学で開催される「第38回エレクトロニクス実装学会春季講演大会」にて学会発表が行われる。
AuRoFUSE(TM)プリフォーム作製方法
(1)接合対象の基板へ下地層として、Au/Pt/Tiによるメタライズ処理を行う
(2)フォトレジストを、メタライズ処理後の接合対象の基板に塗布する
(3)プリフォーム形状に合わせたフォトマスクを接合対象の基板にかざし、露光・現像しレジスト枠を作製する
(4)作製したレジスト枠にAuRoFUSE(TM)を流し込む
(5)室温にて真空乾燥させ、乾燥後にスキージ※3を用いて余剰のAu粒子をかき取る
(6)加熱による仮焼結の後、レジスト枠の剥離除去を行う
AuRoFUSE(TM)プリフォームによる高密度実装の実現
半導体デバイスを実装する上での接合方法は、はんだ材料やめっきを使用する方法など、目的に合わせ様々な方法が採用されている。はんだ材料を用いる方法は、低コストでスピーディーにバンプを作製できるが、バンプピッチが微細になるにつれ、はんだ材料が熔融時に横広がりしてしまうため、電極間の接触によるショートの懸念がある。また、高密度実装を実現する技術開発において主流となっている、無電解めっき※4で銅(Cu)やAuめっきバンプを作製する方法は、狭ピッチを実現できるが、接合時に比較的高い圧力が必要であるためチップの破損につながる懸念がある。
田中貴金属工業では、半導体における高密度実装を実現するべく、多孔質による凹凸追従性、低温かつ低加圧で接合可能という特徴をもつAuRoFUSE(TM)を活用した研究開発を行ってきた。当初は、主流な使用方法であるディスペンス※5やピン転写※6、スクリーン印刷法※7による実現を目指したが、ペーストの流動性により、高密度実装には不向きであった。今回確立された本技術では、接合前にペーストを乾燥させて流動性を失くすことで、横広がりを抑えることができ、高密度実装を可能にした(図1)。また、多孔質構造であることから変形が容易で電極間に高低差がある場合や、基板の反り、厚みの差がある場合でも接合を可能とする(図2)。
AuRoFUSE(TM)について
AuRoFUSE(TM)は、サブミクロンサイズの粒径に制御したAu粒子に有機溶剤を混ぜたペースト状の接合材料。一般的に微細な粒子は融点以下の温度で熱されると、粒子同士が結合する“焼結”という特性を持っている。AuRoFUSE(TM)は、200℃まで加熱されれば溶剤が蒸発し、荷重を掛けなくてもAu粒子が焼結接合し、約30MPaという十分な接合強度を得られる。
※1 接合強度: シェア強度(横方向に荷重を与える試験における強度)を指す
※2 バンプ: 突起状の電極
※3 スキージ: ゴムやポリウレタン樹脂製で、余剰な材料をかき取る道具
※4 無電解めっき: 電気を流さずに化学反応で施されるめっきを指す。Cu、Au、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)など、特定の金属・貴金属でめっきが可能
※5 ディスペンス: 一定量の液体を噴射するディスペンス装置(液体定量吐出装置)を用い、ペーストを塗布する方法
※6 ピン転写: 多数のピンを用いてスタンプのようにペーストを塗布する方法
※7 スクリーン印刷法: 任意の印刷パターンをスクリーンマスクに形成した後、ペーストを塗布し、スキージで掻き取ることで任意のパターンの部分にペーストを転写する方法
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