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2024/11/30

【半導体】Patentix、世界初 ルチル型GeO2結晶によるショットキーバリアダイオード動作を確認

 Patentixは、ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)単結晶薄膜上に、ショットキーバリアダイオードを形成し、その動作を確認することに成功した。これはr-GeO2で実現された世界初の半導体デバイスであり、r-GeO2パワー半導体デバイスの実現に向けた重要な一歩と言える。
 現在、家電製品や電気自動車のモーターには、パワー半導体を用いた様々な電力変換回路で変換された電力が用いられている。電力を変換する際に発生する熱は電気エネルギーの損失となる。発電所から我々が使うまでには何度も電力変換が行われているため、その損失を低減することは脱炭素社会の実現において重要な課題となっている。
 従来パワー半導体に広く使われていたシリコン(Si:バンドギャップ1.12eV)は物理的な限界に達しており、バンドギャップが3.3eVと広いシリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を用いたパワー半導体デバイスへの置き換えが進んでいる。近年、急速に普及しているSiCはSiに比べて約40%の省エネ効果があるとされているが、バンドギャップが4.6eVとさらに広いr-GeO2を用いることで、SiCを上回る省エネ効果を得られると期待されている。また、r-GeO2と同程度のバンドギャップを持つ半導体として、酸化ガリウム(Ga2O3)の研究が広く行われているが、r-GeO2は酸化ガリウムでは困難とされる不純物ドーピングによるP型の発現が理論的に予測されており、より幅広いデバイス応用が期待される。
 Patentixでは、r-GeO2にドナー型不純物を導入することで、1×1018~1×1020[cm-3]という高濃度のN型ドーピング(N+ドーピング)を達成していたが、r-GeO2を用いた半導体デバイスを実現するには、ドナー不純物濃度が1×1017[cm-3]以下のN-層の実現が不可欠であり、r-GeO2を用いた半導体デバイスの動作実証も未達成の状態であった。
 今回、PatentixはN+層のr-GeO2結晶膜上に1×1017[cm-3]程度のドナー不純物を導入したN-層のr-GeO2結晶を成膜することに成功し、物質・材料研究機構(NIMS)との共同研究を通じて世界で始めてショットキーバリアダイオード(SBD)の動作を確認した。まずPatentixにおいて、絶縁性TiO2基板上にN+のr-GeO2単結晶膜を成膜し、続いてN-のr-GeO2単結晶膜をN+層の上に成膜。続いてNIMSによって、N-層をドライエッチングしてN+層を露出させ、電極を成膜・形成することで疑似縦型構造のSBDを形成し(図1)、その電流電圧特性(I-V特性)を評価した。

図1 今回試作したr-GeO2単結晶膜を用いた疑似縦型のSBDの構造模式図

 評価の結果、試作したr-GeO2 SBDがダイオード動作することが確認された(図2)。ON/OFF比は7桁を示しており、良好な整流特性が得られている。また、容量電圧測定(C-V測定)によってN-層のドナー不純物濃度を解析したところ、約1×1017[cm-3]を示すことが確かめられた(図2右)。

図2 r-GeO2 SBDのI-V特性(左)とN-層の不純物濃度の測定結果(右)

 今回の成果はr-GeO2を用いた半導体デバイスの世界初の実証であり、r-GeO2という新しい材料で脱炭素社会の実現に貢献するという同社の目標における重要な一歩である。
 今回の成果に基づいて、r-GeO2の半導体デバイスの開発をさらに加速していく。今回試作したデバイスは疑似縦型構造であったが、次に縦型構造のSBDの実現を目指す。また、結晶膜の高品質化や半導体デバイスの応用を広げる上で必須となるP型の実現にも引き続き取り組んでいく。

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