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2025/5/31
【半導体】STマイクロエレクトロニクス、圧電MEMS技術の発展に向けシンガポールの「Lab-in-Fab」型研究開発における協力拡大

多種多様な電子機器に半導体を提供する世界的半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(以下ST)は、A*STAR(シンガポール科学技術研究庁)のInstitute of Microelectronics(IME)およびULVAC社と協力し、シンガポールにおける「Lab-in-Fab」(LiF)型研究開発を拡大することを発表した。この新たな段階では、シンガポールのA*STAR物質材料工学研究所(A*STAR IMRE)およびシンガポール国立大学(NUS)とのプロジェクトを実施する。
この取り組みでは、環境に優しい鉛フリー圧電材料の開発推進と、コスト効率に優れた小型のセンサおよびアクチュエータを実現していく。高等教育機関やスタートアップ企業、中小企業、多国籍企業が、この包括的な製造ラインを活用して、圧電MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)の製品化までの期間を短縮する。製造が見込まれる製品には、3Dマッピングおよびイメージング向け圧電MEMSの超音波トランスデューサ(PMUT)や、パーソナル電子機器向け小型スピーカ、スマートフォンのカメラ・モジュール向け自動焦点デバイスなどがある。
STのアナログ・パワー&ディスクリート・MEMS&センサグループ グループ・バイスプレジデント 兼 中央研究開発担当ジェネラル・マネージャであるAnton Hofmeister氏は、「Lab-in-Fab 2.0において、A*STAR IMEとULVAC社との協力を進展させ、A*STAR IMREとNUSとの新規プロジェクトを開始できることを大変喜ばしく思います。この取り組みは、圧電MEMS技術のイノベーションを促進し、次世代製品の市場投入を支援します」とコメントしている。
A*STARの副最高責任者(イノベーションおよびエンタープライズ担当)であるYeo Yee Chia教授は、「私たちは、材料、ツール、プロセス・モジュール、技術開発、設計、製造における主要イノベータ間の連携を強化・拡大することで、研究開発の成果を応用する方法を変革しようとしています。これにより、環境に優しい鉛フリー材料を使用した高電力効率の次世代圧電MEMS製品の商品化が加速し、世界の半導体バリューチェーンにおけるシンガポールの地位を強化することができます」とコメントしている。
ULVAC社の執行役員 兼 装置事業本部 電子機器事業部長の岩井治憲氏は「この画期的な取り組みに参加し、圧電MEMS業界向け製造技術ソリューションの当社の技術力で貢献できることを光栄に思います」とコメントしている。
2020年に設立されたLab-in-Fab型研究開発では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)薄膜を形成する物理気相成長(PVD)法を発展させ、鉛含有量を従来のバルク圧電技術と比べて大幅に削減した。この初期の成功が、今回の拡張につながっている。
圧電MEMSは、シンガポールの研究開発における重点領域の1つ。その他の重点領域には、異種集積技術に基づく先進的なパッケージング技術、ワイドバンドギャップ半導体(SiC、GaNなど)、ミリ波RF(無線周波数)技術、先進フォトニクス(フラット・オプティクスとフォトニクスの異種集積技術など)がある。これらの重点領域は、イノベーション主導の経済および社会に向けたシンガポールの発展に貢献する技術として、シンガポールの「研究・イノベーション・企業2025計画」(RIE 2025)で指定されている。
Lab-in-Fabはシンガポールの半導体エコシステムにおいて重要な役割を果たしており、センサおよびアクチュエータ製品企業やメーカー、そのサプライヤとの共同研究を促進している。Lab-in-Fabの先進材料やデバイス・プラットフォームをベースとしたマルチ・プロジェクト・ウェハ(1枚のウェハに複数の企業のチップを集積するプロジェクト)・サービスを提供することで、シンガポールの高等教育機関と国際的な高等教育機関をサポートしている。また、圧電MEMS分野における国内およびグローバル人材の育成を目的として、インターンシップや博士課程での研究機会を提供している。
MEMSのグローバル・リーダーであるSTは、20年以上にわたりMEMS市場で中心的な役割を果たしてきた。IDM(設計・製造を担う半導体メーカー)のビジネス・モデルを活用し、設計と製造を統合する能力によって顧客をサポートしている。
STはシンガポールの半導体業界にいち早く投資した企業の1社。Lab-in-Fab型研究開発はSTのアンモキョ工場の重要アセットとして、既存の量産活動を補完するとともに、シンガポールの半導体製造エコシステムの発展に貢献している。
主要ステークホルダーのコメントは次の通り。
David Horsley教授(ノースイースタン大学 電気・コンピュータ工学 教授)
「Lab-in-Fabが応力の制御やエッチングなどの一般的な課題を解決してくれるため、研究者は無駄な労力を費やすことなく自分の作業に集中できます」
Fang Weileun教授(国立清華大学 特任教授)
「Lab-in-Fabにより、研究者グループやスタートアップが独自の製品を開発し、量産体制への移行を大幅に簡略化できます」
Lu Yipeng教授(北京大学 集積回路学部 准教授)
「Lab-in-Fabの取り組みは、圧電MEMS技術の発展において大きな変革を起こしました。公共部門と民間部門が協力したことで、単独では不可能だった飛躍的な進歩を達成できました。この革新的なエコシステムに参加できたことを誇りに思います」
田中秀治教授(東北大学 ロボティクス専攻 教授)
「開発の自由度が大きく、所要時間を大幅に短縮できます」
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