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2025/10/3
【地熱プロジェクト】三菱重工グループの伊ターボデン社、米国ユタ州で有機ランキンサイクル設備を連続受注
三菱重工グループでイタリアに本拠を置くターボデン社(Turboden S.p.A、本社:イタリア ロンバルディア州)は、ファーボ・エナジー社(Fervo Energy、本社:米国テキサス州ヒューストン)※が米国ユタ州で進めている革新的な地熱システムプロジェクト「ケープステーション」のフェーズIIにおいて、有機ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle:ORC)設備を3基受注した。
同プロジェクトは、ファーボ・エナジー社が持つ革新的な地熱システムにより、従来、地理的な制約があり、経済的に成立しなかった場所での地熱エネルギーの利用可能性を飛躍的に高めるもの。ベースロードとしての電力供給に加え、需給バランスに応じた蓄熱システムとして、再生可能エネルギーの補完用途も期待されている。このプロジェクトに、ターボデン社の強みである、中低温の熱源で効率的な発電が可能なORC技術が採用された。
今回の受注は、同プロジェクトのフェーズIでターボデン社が受注・建設しているORCユニット3基 (発電容量は1基当たり40 MW、合計120 MW) が評価され、フェーズIIとしてORCユニット3基(発電容量は1基当たり60 MW、合計180 MW)を追加受注したもの。フェーズIIの追加により、ターボデン社は合計300 MWのORC発電容量をケープステーションに導入することになり、この種の地熱設備としては世界最大級となる。
フェーズIの商業運転は2026年を予定しており、大規模で革新的な地熱システムの実現として大きな節目となる。フェーズIIでは、ターボデン社独自のタービン・発電機・制御システムなどのORC設備を2028年までに納入・稼働開始予定であり、これにより、24時間年中無休のカーボンフリーエネルギーをグリッドに提供するという両社の長期的なビジョンを強化する。

ターボデン社は、本プロジェクトの遂行および北米での事業拡大に伴い、Turboden America LLCを設立し、2024年10月より本格的な操業を開始している。
ターボデン社のCEOであるPaolo Bertuzzi氏は、「ファーボ・エナジー社との協力関係を深め、ケープステーションの次の章に貢献できることを光栄に思います。今回の新たな受注は、当社のORC技術の信頼性と拡張性をさらに証明するものであり、次世代地熱分野におけるファーボ・エナジー社とのパートナーシップの強みを示しています。Turboden America LLCが本格的に稼働したことで、当社は大規模プロジェクトをサポートし、米国のパートナーとのより緊密な協力を促進するのに適した立場にあります」と述べている。
ファーボ・エナジー社のCEO兼共同創業者であるTim Latimer氏は、「フェーズIIは、地熱の可能性を最大限に引き出すという我々のミッションにおいて、さらなる飛躍を意味します。ターボデン社の実績ある専門知識と革新的なシステムは、クリーンで継続的な電力供給の約束を実現するための鍵です」と述べている。
「フェーズIIの受注は、私たちのチーム間に築かれた信頼と技術的な相乗効果の証です。私たちは、地熱イノベーションの限界を押し上げる高効率で実用可能な規模のORCシステムによって、ファーボ・エナジー社の大胆なビジョンを支援できることを誇りに思います」とターボデン社の次世代地熱プロジェクトのディレクターであるJoseph Bonafin氏は述べている。
三菱重工業は、広範囲かつ高効率な発電・エネルギーシステムの提供を追求するグローバル企業として、ターボデン社と緊密に連携し、世界規模でのエナジートランジションを推進していく。
■ターボデン社について
ターボデン社は、1980年にイタリアのミラノ工科大学の教授らが主体となって設立された。有機ランキンサイクル(ORC)タービンなどを開発・製造する企業で、2013年から三菱重工グループに加わっている。その製品は、ORCプラントから、大型ヒートポンプやガスエキスパンダーまで多岐にわたる。1980年以来、ターボデン社はエナジートランジションにおけるパイオニア的存在。50カ国以上に460以上のプラントを有するORC技術の世界的リーダーとしての地位を確立したターボデン社は、プロセスの脱炭素化のための最適化ソリューションを提供する、信頼できるテクノロジーパートナーの1つ。
■ファーボ・エナジー社について
ファーボ・エナジー社は、革新的な地熱システムの開発を通じて、安定的にクリーンエネルギーを提供する。地球科学におけるイノベーションを活用し、世界の持続可能なエナジートランジションを加速することを使命としている。地熱エネルギーは将来の電力網において重要な役割を担うものであり、同社が手掛ける掘削技術および地下分析技術は、地熱エネルギーのコスト競争力を高めるために必要不可欠。
■有機ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle:ORC)技術について
ORC技術は従来の蒸気タービンとしくみが似ているが、大きな違いは高分子有機媒体を蒸発させて利用する点にある。これにより、タービンの回転速度を低く設定することが可能となり、翼などの部品の浸食もない。また、ORCユニットは工場出荷時にスキッド上で組み立てられるため、輸送が容易。ORCシステムでは、中・高温の熱媒油により、蒸発器内の有機作動媒体を加熱・蒸発させる。その蒸気によりタービンが回転し、クリーンで安定した発電が行われる。ORCシステムのアプリケーションとしては、地熱、廃熱回収、バイオマス、太陽熱などがある。
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