アーカイブ情報

2025/1/6

【太陽電池モジュール】LONGi、N型BC技術搭載の「Hi-MO X10」を日本市場に投入

 LONGi(ロンジ/LONGi Green Energy Technology Co., Ltd. 本部:中国・西安市)およびその日本法人のLONGi Solar Technologyは、N型BC(バックコンタクト)技術「HPBC 2.0」などを採用した新製品「Hi-MO X10」(ハイモ・エックス・テン)を日本市場に投入する。この分散型太陽光発電市場向けの太陽電池モジュール(太陽光発電パネル)は、2025年1月より順次出荷を開始する。

 「Hi-MO X10」は、2024年9月に日本市場で発表したユーティリティ市場向け製品「Hi-MO 9」につづき、N型BC技術「HPBC 2.0」、TaiRay(タイレイ)ウェハ、0BB(ゼロ・バスバー)、高性能封止剤を採用している。TOPCon製品を超える高効率・高出力を実現し、長期信頼性やリニア出力保証値、安全性に加え、高温時や低照度条件下での優れた実発電量、そしてシンプルで美しい外観が特長。

Hi-MO X10で採用している技術


■ N型BC(バックコンタクト)セル技術「HPBC 2.0」
 セルの表(おもて)面に配線(フィンガーやバスバー)がないため、太陽光の取り込みを最大化し、効率と出力が大幅に向上している。また、シンプルで美しい外観も実現している。

 配線がセルの裏面で一直線に配置されているため、TOPConを含む従来型セルのようにセルの表側と裏側の間で配線が折れ曲がることがない。これにより、配線の断線リスクが約19%削減され、また、セル端部への応力が従来セルの約50MPaから約26MPaへと約48%低減することでマイクロクラックのリスクが大幅に軽減し、長期的な信頼性の向上につながっている。
 N型BCセルの構造的な特長を活かしたソフトブレークダウン設計によるセル単位でのバイパスダイオード的な機能により、部分的な影が発生しても出力の大幅な損失を抑制する。また、局所的な過熱によるリスクを低減する。
 少数キャリアの寿命を延ばし、キャリアの再結合を低減するパッシベーション技術においては、LONGi独自開発のバイポーラ複合パッシベーション技術により、量産セルの開放電圧を745mV以上に引き上げ、業界主流のTOPCon製品を約15mV上回る。さらに、電流損失を大幅に削減し、セル変換効率を向上させている。 

■ TaiRay(タイレイ)ウェハ
 サイズ拡大を除き、ウェハ業界では10年ぶりの製造技術革新によるTaiRayウェハを採用している。
抵抗値のばらつきが小さいことで、モジュール内でのセルの特性のばらつきを抑え、電流ミスマッチの減少に貢献している。
・ゲッタリング(不純物捕捉)性能の向上により、酸素含有量やその他の不純物を削減し、単結晶シリコンの成長における欠陥が減少することで、セル変換効率がさらに向上し、出力劣化も抑制する。
・従来のウェハよりも機械的強度が16%向上しており、また、業界で標準的なウェハよりも10μm厚く、長期信頼性の向上に貢献している。

■ 0BB(ゼロ・バスバー)
・セルの表面に配線がないことのほかに、裏面ではバスバー配線を取り除き、リボン配線をフィンガーに直接接続する0BB(ゼロ・バスバー)技術を採用していいる。
・0BBにより、送電距離が短縮され、セル効率の潜在能力が引き出され、モジュール出力を約5W向上させている(モジュールサイズ:2382×1134mmの場合)。
・バスバーがないことによって、裏面の受光面積が拡大し、裏面発電効率は70%に達している。
・バスバーがないことで銀ペーストの使用量を削減し、資源保全への貢献と、銀価格高騰のリスクにも対処している。

■ 高性能封止剤
・二層構造POE、および、高耐水性シーラントの採用により、湿気や熱に対する優れた耐性を実現し、長期信頼性の更なる向上に貢献している。

主なメリット

■ 高出力・高効率
 業界標準化モジュールサイズ(2382mm×1134mm)製品の場合において、データシート掲載の最高スペックの型式(LR7-72HVH-670M)は、モジュール変換効率24.8%、公称最大出力670Wとなり、現在業界の主流であるTOPConモジュールを20W上回る(※1)。
 2025年に出荷するメイン出力同士の比較でも、TOPCon製品を15〜25W上回る見込み(※2)。

※1:他社TOPCon製品のデータシートに掲載されている最高スペックの型式の公称最大出力:650W、当社調べ(2024年12月28日時点でWEBサイト上にデータシートが公開されているものより)。
※2:LONGiはLR7-72HVH-645M(645W)。他社TOPCon製品は620~630W、当社予測。

■ 長期信頼性のさらなる向上と、優れたリニア出力保証値
 BC技術における裏面での一直線の配線、TaiRayウェハにおける不純物の削減と機械的強度の向上、そして高性能封止剤により、製品の耐久性が全体的に向上している。
 これらがもたらす優れた長期信頼性は、リニア出力保証にも反映されている。片面発電タイプを含み保証期間は30年間で、1年目が-1.0%(保証値99%)、2年目以降が-0.35%/年となっている(TOPCon製品は-0.40%/年、同社調べ)。
 例えばHi-MO X10が645W、TOPCon製品が625Wと、出力差が20Wの場合、リニア出力保証値をベースにした30年目の出力は単純計算でそれぞれ561.1Wと534.4Wとなり、出力差は26.8Wに広がる。

■ 高温時の発電性能:優れた温度特性
 シリコン太陽電池は高温環境下で発電性能が低下する特性があるが、HPBC 2.0セルを採用したHi-MO X10は、最大出力温度係数が-0.26%/℃と優れている。この特性により、高温時の出力低下を抑え、安定した発電性能を実現する。TOPCon製品(主に-0.29%/℃、同社調べ)と比較して、温度係数の差は0.03%/℃なので、例えば太陽電池の温度が75℃の場合、単純計算ではHi-MO X10の出力がTOPCon製品よりも更に1.5%高くなる。

■ 曇天・朝夕の発電性能:優れた低照度特性IAM(入射角変更因子)性能
 Hi-MO X10は曇天時や朝夕のような低照度環境における発電性能が優れている。また、朝夕や設置した屋根面の角度の影響により、太陽光の太陽電池への入射角度が垂直でない場合の特性も優れている。

■ 部分的な影への対応:発電性能と安全性
 屋根上設置の太陽光発電システムでは、落ち葉、汚れ、積雪、屋根上の障害物や周辺建物などによる部分的な影がリスクとなる。発電出力の大幅な低下に加え、局所的な過熱が発生し、モジュールの材料が損傷して故障の原因となる場合がある。さらに、最悪の場合には火災の危険性が高まる可能性もある。
 Hi-MO X10は、セル単位でのバイパスダイオード的な機能により、部分的な影による出力の大幅な損失を70%以上抑制する。また、局所的な過熱を28%低減することで故障や火災のリスクを軽減し、安全性の向上が期待でる。

■ 優れた生涯発電量
 上記の出力・効率、長期信頼性(リニア出力保証値)、温度特性による総合的なメリットは、長期間になるほど大きくなる。例えばHi-MO X10が645W、TOPCon製品が625Wの場合、出力差は3.2%だが、30年目の年間推定発電量(JIS C8907:2005による)の差は5%以上にもなる(地域により異なる)。
 更に、優れた低照度特性などによる曇天・朝夕の発電性能、部分的な影による出力の大幅損失を抑制する性能や故障リスクの軽減が、生涯発電量の向上に貢献することが期待できる。

■ LCOE(均等化発電原価)の低減
 高い出力と生涯発電量を持つモジュールは、同じ出力(kW)や発電量(kWh)を達成する際に、架台・ケーブルなどの設備費、工事費、土地代、O&M費用の削減に貢献する。全体の費用に占めるモジュール費用の割合が下がる中、Hi-MO X10のように出力や生涯発電量の高いモジュールを選ぶことが、LCOE低減のためにますます重要になっている。

■ シンプルで美しい外観
 TOPConを含む従来の太陽電池は、表(おもて)に配線(フィンガーやバスバー)が露出しており、これが視覚的に目立つ場合がある。一方、Hi-MO X10などBC技術の製品は配線がセルの裏に配置されているため、表面がシンプルで美しい見た目になる。住宅の屋根、商業施設や公共施設の屋根、カーポートなど、美しい外観やデザイン性を重視する建物に適している。

製品ラインナップと出荷開始時期
 54セルクラスサイズはブラックフレームを採用しており、72セルクラスサイズには両面発電(ダブルガラス)モデルや防汚タイプもラインナップしている。これにより、屋根上設置から地上設置の大型発電所まで対応可能な製品を提供する。
 72セルクラスサイズ(2382mm×1134mm、業界標準化サイズ)は1月(防汚タイプのみ3月)、54セルクラスサイズ(1800mm×1134mm)は4月に、それぞれ出荷を開始する予定(予告なく変更する場合がある)。

カテゴリー
コンバーティングニュース

PAGE TOP