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2024/5/23

【強相関電子材料】住友化学と東京工業大学、次世代環境技術創出を推進。産学連携プロジェクト開始初年で2件の革新的成果

 住友化学と東京工業大学は、2023年4月に共同で「住友化学次世代環境デバイス協働研究拠点」を設立し、次世代量子デバイスの重要材料の1つとして期待される強相関電子の実用化促進に向けた研究を進めてきた。このたび、強相関電子系の1つである「マルチフェロイック材料※1」において、2件の革新的成果を得ることに成功した。
※1 強誘電性、強磁性、強弾性などの「強的(ferroic)」な性質を複数併せ持つ物質。電場を加えることよって物質の磁化が誘起される(電気磁気効果)など、従来材料とは異なる新奇な応答反応を示す
1.今まで技術的に難しかった、マルチフェロイック材料の「微細化」に目途
  →超低消費電力で駆動する次世代メモリの実用化へ
2.マルチフェロイック材料における、高効率な「光触媒」としての機能を発見
  →環境負荷低減につながる太陽光を用いた水質浄化システムの実現へ
 本成果は、次世代環境技術に大きく寄与するものであり、今後、住友化学は本技術分野におけるトップランナー企業として、更なる研究成果の拡大および早期の社会実装を目指す。
 電子同士が強く相互作用しあう物質群は「強相関電子材料」と呼ばれ、超低消費電力で駆動可能な次世代メモリ、光や熱といった身近な環境エネルギーを高効率で電気エネルギーに変換する環境発電デバイスや水質浄化システムなどへの応用が期待される。住友化学は、強相関電子材料を、省エネルギーと創エネルギーの双方に資する次世代の基幹技術と考え、2023年4月より東京大学、東京工業大学、理化学研究所と、クロスアポイントメント※2を活用しながら共同研究を推進してきた。
※2 研究者などの人材が、大学や公的研究機関、企業のうち2つ以上の組織・機関に雇用されつつ、それぞれの所属先における役割に応じて研究・開発および教育に従事すること

 住友化学は今後さらに産学拠点間での「強相関電子材料」の研究開発を活発化させ、サスティナブルな社会へのソリューションとなり得る革新的な新規技術基盤の確立および社会実装を推進していく。
<各成果の概要>
◎成果1
研究チーム:東 正樹教授のチームおよび、神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)との合同チーム
内容:情報通信技術が爆発的に普及する現代社会において、記憶・演算素子によるエネルギー消費が増大しており、実用メモリに要求される要素として低消費電力化が課題であった。マルチフェロイック材料は、強磁性と強誘電性を有することで、超低消費電力で駆動可能な磁気メモリへの応用が期待されるが、酸化物からなるマルチフェロイック材料は微細化が非常に困難であることが知られていた。
 今回の研究では酸性溶液中で電流を加えることで作製したアルミナの細孔構造を利用することで、マルチフェロイック酸化物であるコバルト酸鉄酸ビスマスをナノサイズのドット形状に成形・集積させることに成功した。さらにナノドット1つひとつが単一の分極情報を持つことが確認され、高密度に集積した次世代低消費電力磁気メモリの実現に向けた大きな前進となった。

◎成果2
研究チーム:Tso-Fu Mark Chang(チャン・ツォーフー・マーク)准教授と住友化学 経営企画室 岡本 敏 研究企画統括(兼住友化学次世代環境デバイス協働研究拠点 特任教授)のチーム
内容:近年、SDGsへの関心が高まる中、デニムなど、衣料の染色過程で生じる多量の有機系排水の、クリーンかつ高効率な浄化技術が求められている。その解決策として光触媒技術が注目されるが、従来の光触媒には酸化チタンが使われており、可視光(太陽光)による有機物の分解反応が十分に進行しないことや、効率的な触媒の回収が難しく、実用化に課題があった。
 今回の研究では、マルチフェロイック材料であるビスマスフェライトに金(Au)ナノ粒子を担持することで高効率の可視光光触媒として機能することを見いだし、有機染料の可視光による高効率分解、および磁石での触媒回収に成功した。本技術を用いることで、グリーンエネルギーである太陽光を用いたリサイクル可能な水質浄化システムの実現が期待される。

<論文情報>
 https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acsami.4c01232
 掲載誌:ACS Applied Materials and Interfaces
 タイトル:Single or Vortex Ferroelectric and Ferromagnetic Domain Nanodot Array of Magnetoelectric BiFe0.9Co0.1O3
 著者:Keita Ozawa, Yasuhito Nagase, Marin Katsumata, Kei Shigematsu, and Masaki Azuma

 https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsanm.4c01702
 掲載誌:ACS Applied Nano Materials
 タイトル:Tunable Photocatalytic Properties of Au-Decorated BiFeO3 Nanostructures for Dye Photodegradation
 著者:Jhen-Yang Wu, Chun-Yi Chen, Junan Wang, Xinyu Jin, Wending Hou, Hsuan-Hung Kuo, Wan Ting Chiu, Tomoyuki Kurioka, Masato Sone, Satoshi Okamoto, Yung-Jung Hsu, and Tso-Fu Mark Chang
<関連リリース>
 2023年3月28日付リリース「次世代量子デバイス実現に向けて産学連携で「強相関電子材料」の研究開始」

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