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2025/7/7
【感光性ポリイミド材料】東レ、膜厚200μmで微細パターン可能な「STF-2000」開発。耐熱性・耐薬品性を維持しつつ、PFASフリー・NMPフリーを実現

「STF-2000」
東レは、ネガ型感光性材料における高感度化技術の極限追求と硬化応力を制御する独自の感光設計技術により、膜厚200μm、線幅30μmの超厚膜・ハイアスペクト微細加工を実現した感光性ポリイミド材料「STF-2000」の開発に成功した。
この材料は、ポリイミド構造に由来する高い耐熱性、耐薬品性、機械強度、絶縁性、X線耐性の特徴を保持しつつ、最大アスペクト比7のハイアスペクト・微細加工性を実現し、NMP*1フリー・PFAS*2フリーのサステナブル製品仕様であることから、電子部品やMEMS*3デバイスなどの各種用途の高性能化と環境対応に貢献する。標準形態は、液状タイプだが、厚膜シートタイプの開発も進めている。2025年度量産に向け、顧客評価を開始しており、幅広い要望に応えていく。

エレクトロニクス製品は、高性能化の開発が進み続けており、電子部品の小型化・高密度化を目指した微細加工のニーズや、多様な形状を設計できる構造材料のニーズなどが増している。中でも特に、現行の耐熱性、耐薬品性、機械強度、絶縁性、X線耐性の特性を維持しつつ、厚膜でも微細加工ができる感光性材料が求められている。これまで、電子部品やMEMSデバイスの微細加工には、フォトリソグラフィー法*4が広く使われているが、これに用いる感光性材料の厚膜加工では、主に4つの課題があった。
(1)硬化物の変形やクラック
厚み100μm以上になると硬化反応で生じる収縮応力の影響が極めて大きくなり、硬化物の変形やクラックが発生しやすくなる。
(2)UV硬化不良
感光成分が膜表層で露光光を吸収するため、厚みが増すほどパターン加工性が低下する。
(3)現像不良
ハイアスペクトになると、微細パターン深部の現像除去に時間を要するため、ビアパータンでは残膜が、ピラー・ストライプ・格子パターンではヨレが生じやすくなる。
(4)異物・層間剥離
これまでフォトリソグラフィー法を用いる厚膜加工方法には、従来の薄膜シート材料を積層して露光する手法があるが、何層も積層するため異物混入や層間剥離が生じやすく生産性に課題がある。
今回開発した「STF-2000」は、これらの課題を克服した厚膜加工が可能な材料。
また、近年では、PFASと呼ばれるフッ素系化学物質群は、撥水性、耐油性、耐熱性が高く、極めて分解されにくいため環境や人体への影響が懸念されており、地球環境や社会問題に配慮した持続可能なサステナブル製品の開発が強く求められている。そこで東レは「STF-2000」ではPFASフリー組成を実現、さらに、有機溶媒を使わないアルカリ現像タイプとすることで、環境負荷を抑えながら持続可能な社会の実現を目指すサステナブル材料となっている。
同材料を適用して厚膜形成することで、電子部品の絶縁性向上が期待できる。さらに、高解像度なハイアスペクト配線形成が可能なため、構造材料用途ではフォトリソグラフィー法を用いた微細な構造設計ができ、新規MEMSデバイスへの展開も期待できる。また、同材料は、1回の塗布・露光・現像で厚膜パターンを形成できるため、製造プロセスを大幅に簡略化でき、生産性向上やプロセスコストの低減が期待できる。
さらに、従来のポリイミド材料が適用されてきた膜厚10~30μmの領域においても、同材料は適用することができ、L/S=4μm以下の高解像パターニングが可能。
東レは、コア技術である「有機合成化学」「高分子化学」「バイオテクノロジー」「ナノテクノロジー」を駆使し、社会を本質的に変える力のある革新的な素材の研究・技術開発を推進することで、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでいく。
<開発した技術の詳細>
厚膜・ハイアスペクト加工
今回開発した感光性ポリイミド材料は、一般的な露光機のh線露光プロセスを用いて、各種形状のパターンを形成することができる。


注)2025年6月時点 東レ調べ
*1 NMP
N-methyl-2-pyrrolidone(エヌ‐メチル‐2‐ピロリドン)の略で、高い溶解性を持つため化学工業や電子工業、製薬業など、様々な産業で溶媒として使われている。特に、ポリアミドやポリウレタンなどの高性能樹脂の製造、塗料や接着剤の製造、リチウムイオン電池の電極材料の製造などに使われているが、生体へ吸収すると中枢神経系、骨髄、肝臓、精巣、腎臓、副腎などに悪影響を及ぼす可能性があるため、REACH規則附属書XVIIのエントリー#711)に制限物質として指定されており、取り扱いには注意が必要。
*2 PFAS
Per-and Polyfluoroalkyl Substances(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)の略で、耐熱性・安定性に優れているため、さまざまな製品に使用されているが、一部のPFASは環境や人体への影響が懸念されており、水質規制や製造規制の対象となっている。
*3 MEMS
Micro Electro Mechanical Systems(微小電気機械システム)の略で、微細な機械部品やセンサ、アクチュエータなどを半導体素子の微細加工技術で集積化する技術。
*4 フォトリソグラフィー法
基板に感光性材料を塗布し、光を照射して回路パターンを形成する技術で、半導体や液晶ディスプレイなどの製造で広く用いられている。
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